名古屋に新しいチャンネルだ！ の 第2回です
他の名古屋の民放テレビ局とは「違う」テレビ愛知
「テレビ愛知」とは、どんな放送局なのか。まずそれについて一通りご紹介しましょう。
1983(S58)年9月1日、名古屋の５番目の民放テレビ局として開局した「テレビ愛知」。テレビ東京をキー局とする、TXN系列の基幹局であり、エリアが狭いにもかかわらず、TXN系列局の中で高視聴率を誇るテレビ局です。（※2003年当時）
テレビ東京をキー局とするTXN系列の特徴
TXN系列とは、テレビ東京をキー局とする系列なのですが、他の４系列とは異質なものです。他の４つ、日本テレビ系列(NNN/NNS)、TBS系列(JNN)、フジテレビ系列(FNN/FNS)、テレビ朝日系列(ANN)は、それぞれ30局近くの系列局を持ち、全国にネットされており、複数の系列に加入しているクロスネット局を含めると、それぞれ47都道府県中41～45県をカバーしています。
それに対し、テレビ東京系列(TXN)は、全国6局体制で13都道府県しかカバーしていません。「全然映らないじゃん！」と思われるかもしれませんが、ところがところが、そうでも無いのです。6局でも、大都市に置局されているため、全国の66.4％の世帯をカバーしているのです。逆に考えると、他の系列は、残り33.6％世帯のためだけに20局以上の系列局を維持しているということになります。
そんなテレビ東京系列は、自ら「高効率都市型ネットワーク」と名乗っています。何が高効率なのかと言うと、広告媒体としての効率です。30局近くの広告料を払って、他の系列でCMを流すのに比べ、テレビ東京系列は、6局分の広告料で全国7割弱の家庭にCMを流せるわけですから、効率がいいというわけです。
テレビ愛知はエリアが愛知県だけのテレビ局
テレビ愛知は、他の名古屋のテレビ局と、決定的な違いがあります。それは、他の４局、中部日本放送(CBCテレビ/TBS系列)、東海テレビ放送(フジテレビ系列)、名古屋テレビ放送(テレビ朝日系列)、中京テレビ放送(日本テレビ系列)が、愛知・岐阜・三重の３県をカバーする広域のテレビ局なのに対し、テレビ愛知は愛知県のみをカバーする県域のテレビ局なのです。
▲名古屋市中区大須テレビ愛知本社。すべてはここから…。
岐阜・三重と映るチャンネルの数を揃えた
テレビ愛知が開局する以前に、岐阜県域の岐阜放送、三重県域の三重テレビ放送が開局しており、その時点で、NHK総合・教育テレビを含めると、愛知県で見られるチャンネルは「6」なのに対し、岐阜県・三重県はそれぞれ東京都と同じ「7」という状態でした。この情報格差を是正し、愛知県のチャンネル数を、東京都と同じ「7」するために開局したのが「テレビ愛知」なのです。
もしもテレビ愛知が岐阜・三重もカバーしてしまうと、岐阜県・三重県のチャンネル数が「8」となってしまうため、テレビ愛知は愛知県限定としたということになっています。
これは、テレビ大阪にも言えることで、他の大阪のテレビ局が２府４県をカバーしているのに対し、テレビ大阪は大阪府のみしかカバーしていません。
東京はかつてそうではなかった
この、情報格差が発生してしまうため、エリアを限定したという理由についてですが、納得できない部分もあります。それは、テレビ東京はそうではないという点です。
テレビ東京は東京都だけではなく、周辺含め７都県を当初からカバーしており、周辺県に、県域のテレビ神奈川やテレビ埼玉といったテレビ局がテレビ東京よりも後から開局したため、当時、東京都で見られるチャンネル数は「7」だったのに対し、周辺県では「8」という逆転現象が発生してしまっていたのです。
それを考えると、テレビ愛知・テレビ大阪が県(府)域になってしまったのは、情報格差の問題だけではないのではないか？と考えてしまいます。それについては後述します。
視聴率ハンデのあるテレビ愛知
テレビ愛知は、ネットゾーンは同じ番組を流しているテレビ東京系列のなかで、視聴率がトップクラスであり、系列トップになることがよくあります。
ところが、名古屋での視聴率調査は、愛知・岐阜・三重3県を対象としており、調査対象の全ての家庭で、テレビ愛知が見られるとは限らないのです。
つまり、たとえテレビ愛知が見られる家庭が全て、100％テレビ愛知を見ていたとしても、映らない家庭があるため、視聴率が100％とならないのです。そんな統計的ハンデを背負いながらも、なぜ高視聴率となるのでしょうか。
電波は岐阜や三重の「一部」にも届く
テレビ愛知は、エリア限定と言っても、とても恵まれているのです。愛知県しか放送することができないテレビ局とはいえ、電波というのは厳密に愛知県のみをカバーすることはできません。漏れてしまうのです。
実際、岐阜県や三重県の人口集中部では、ブースター（電波増幅器）を使用したり、ケーブルテレビに加入することで、ほとんどの家庭でテレビ愛知を見ることが可能なのです。
テレビ愛知の発表によると、カバー世帯数は350万8千世帯。これは愛知・岐阜・三重の総世帯数の90.8％をカバーしていることになるのです。
東海3県を「高効率カバー」するテレビ愛知
テレビ愛知には、テレビ東京系列全体と同じ利点があるのです。と言うのは、他の名古屋のテレビ局は、愛知・岐阜・三重全てをカバーするために、51～54局の中継局を建設しています。これに対し、テレビ愛知は愛知県内に14の中継局しか建設していません。
しかしそれで３県の90.8％世帯をカバーしているのです。先ほどと同じような言い方をすると、他の名古屋のテレビ局は、愛知・岐阜・三重の9.2％の世帯をカバーするためだけに40局近くの中継局を建設し、維持しているのです。
▲中京テレビの東山タワー、上から２段目の白いアンテナがテレビ愛知。
テレビ愛知は少ない設備投資で、他局に劣らない広告媒体としての機能を持っているわけですから、効率の良いテレビ局というわけです。
テレビ愛知を後押ししたものとは…
そういったことで、統計的にもそれほど他局と変らない状況となったテレビ愛知なのですが、なぜ同じ系列のなかで、高視聴率なのでしょうか。大きく二つの理由が考えられます。キーワードは「中日」です。
ひとつ目はテレビ欄の位置です。テレビ愛知は日本経済新聞社を中心として設立されましたが、地元で圧倒的な力を持つ、中日新聞も経営に携わっています。そのため、愛知県で宅配世帯約80％のシェアを誇る中日新聞で、テレビ欄の配列も優遇されています。
テレビ東京系列は後発のため、右端に追いやられることが多いなか、中日新聞の愛知県版では、左から５番目の中央に配列されているため、目に止まりやすいということが考えられます。
ドラゴンズ中継に食い込むことができたテレビ愛知
そしてもうひとつは、プロ野球・中日戦の中継です。愛知県では、プロ野球・中日ドラゴンズが抜群に人気があります。
そこでテレビ愛知は、それまでは名古屋テレビが深夜に録画放送を行っていた、ビジターの中日戦の中継権を獲得し、遠征中継を始めました。すると1989(H元)年には「ヤクルト×中日」が30.2％を記録するなど高視聴率となり、全体の視聴率を押し上げているのです。
テレビ愛知に教えられたこと
名古屋では、中日に巻かれろ
そんなわけで、テレビ愛知・テレビ東京に思い入れが大きいあまり、さまざまな資料や、データが集まりました。自分なりにまとめてみたいと思いまして、この連載をスタートしました。 次回からは、テレビ愛知が開局するまでの、テレビ東京を取り巻く流れについて書いていきたいと思います。
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