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空想世界は非現実ではない-三鷹の森ジブリ美術館

記事公開日:2007年6月24日 更新日:

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 トッピーネットでは、物語の舞台やゆかりの場所へあちこち出かけてレポートしていますが、今回は関東へと足を伸ばしてみました。まず訪れたのは、東京都三鷹市にある「三鷹の森ジブリ美術館」です。

 「天空の城ラピュタ」や「となりのトトロ」、最近では「ハウルの動く城」や「ゲド戦記」といったアニメーションを製作しているスタジオジブリの世界をイメージした美術館です。この美術館は完全予約制となっていて、予めローソンでチケットを購入する必要があります。毎月10日に翌月1ヶ月分のチケットが発売になりますが、それほど入手が困難というわけではありません。

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 美術館といっても、あのジブリのことですから、夢の世界を体感できるような展示に仕上がっているかと思いきや、それだけではありませんでした。その夢を作るための現実もしっかりと直視させてくれる空間でした。

 JR中央線の三鷹駅南口から、美術館行きのコミュニティバスが10分間隔で運行されています。美術館行きとはいえコミュニティバスということで、普通のバスだろうと思っていたらそうではなく、バスにはたくさんの昆虫などが描かれていて、かわいらしいデザインとなっています。でもこれはあくまでも公共のバスです。しかしそれで驚いてはいけません。

 井の頭恩腸公園西園の一角にある三鷹の森ジブリ美術館は通称名であり、正式には三鷹市立アニメーション美術館という公共施設なのです。2001(H13)年10月1日、市の美術館条例の施行とともに開館しています。

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 三鷹の森ジブリ美術館という看板のある門から入ると、受付には大きなトトロが座っています。でももちろんこれは本当の受付ではありません。右手の白い建物が本当の受付です。建物は地上2階地下1階ですが、地下部分も目視できる状態になっていて、半分埋もれたような格好になっています。

 しかも屋上にも庭園が設けられているので、まるで森と一体になっているかのようです。屋上にはどこかで見たことのあるキャラクターの姿も。

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 建物は白、緑、黄、オレンジと色鮮やかな外壁となっているのですが、これらの色は彩色したものではなく、その色の土をあちこちに探しに行って見つけてきたものなのだそうです。だから全てが自然な色で、開館当時と比べると色もかなり落ち着いたのだとか。こんな鮮やかな色が自然のもので出されているとは驚きです。

 エントランスの壁のあちこちにはジブリのキャラクターがいっぱい。その受付では35mmフィルムを使用した入場券が手渡されます。これは実際に映画に使えるフィルムでできていて、ジブリ作品の一場面が映っています。館内にある映像展示室の入場券も兼ねています。

 美術館といっても順路は無いので、好きなように見て回ることができます。また、かつては全て写真撮影可能だったのですが、事情により現在は建物内撮影禁止となっています。何かあったのでしょうね...。

 まずは映像展示室「土星座」で短編アニメーションを見ることにします。この時は「めいとこねこバス」が上映されていました。この展示は1回しか見ることができませんが、入場制限をちゃんとしているので、座ってゆっくりと見ることができます。こねこバスはかわいすぎ。足の数が少ないのがラブリー。

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 中央は吹き抜けとなっていて、そこからあちこちの部屋を見て回るスタイルです。ほそーい螺旋階段や、変なトンネルなどもあって迷路のよう。子どもだったらそれだけでワクワクできそうです。

 主な展示内容は、子どもが実際に乗って楽しめる大きなネコバスや、図書閲覧室、その時々の企画展示、アニメーションや映画の原理、アニメーションがどのようにして作られているのか製作風景を再現してあったり、イラストが展示されたりしています。

 製作現場といっても、アトリエの再現や絵コンテ、設定画といったものの展示だけではなく、アニメーション製作の現実、苦悩や重労働もしっかりと理解できるようになっていたのが意外でした。

 分業のために追い立てられるスタッフの様子や、連日のオーバーワークでもアニメーターがなぜ頑張れるのか、絵の具からコンピューター彩色になったことは本当に良いことなのかなど、夢の世界を作り出すための現実があるということをしっかりと感じ取ることができました。

 訪れたときの企画展示はトルストイ作の「3びきのくま」についてだったのですが、物語の舞台を再現しているだけではなく、なぜその作品を子どもたちが面白いと感じるかの分析や、子どもと空想世界のかかわりと感情移入についてなど、とても勉強になる解説がされていて、展示を見ながら色々な思いを頭の中に巡らすことができました。

 ネコバスのなかで遊ぶ子どもたちの姿は本当に楽しそうでした。この美術館、子どもは純粋に楽しむことができるのはもちろんですが、少年少女や大人にとっては、空想世界を作り出す楽しみや面白さ、そして難しさも感じ取ることができる内容となっています。ただの美術展示施設ではなく、いい意味で期待を裏切られました。

 一通り展示を見ましたので、外に出ることにします。半地下の中庭には手押しポンプの井戸があり、薪置き場となっているのですが、井戸は本物で水が出ますし、この薪も実際にストーブの燃料として使われるものです。そのパティオから階段であがるとカフェ「麦わらぼうし」があります。

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 このカフェには喫茶室とテイクアウト用のテラスがあり、喫茶室ではビーフストロガノフやボルシチ、そしてケーキなどが味わえるのですが、やはりすごい行列となっていましたので、私たちは外でテイクアウトすることにしました。この日はものすごく蒸し暑かったのですが、木陰に入るとスーッと落ち着きます。

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 いただいたのはサルサドッグ。見た目よりもさっぱりとした味で暑いなかでもおいしくいただけました。ひやしレモンは結構喉にくる本格的な味で、さらに麦茶があったのも嬉しかったです。テラスではラムネやビールも販売されていて、ラムネも買いました。

 ラムネはいろんな色のビー球が入っているビンが用意されていて、好きな色を選ぶことができ、またビンを持ち帰ることもできます。日本人はそうでもありませんでしたが、外国人観光客は珍しがって持ち帰る方が見受けられました。では、腹ごしらえもすみましたので、最後に屋上庭園を見に行きます。

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 屋上へは外にある螺旋階段を上ります。上りきるとそこには天空の城ラピュタに登場するロボット兵が。実物大...なのでしょうか。その大きさは5メートル。迫力に圧倒されます。ロボット兵に草が生えているあたりがすごい。

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 屋上庭園はそれで終わりではありません。さらにふかふかの地面を歩いて、木々を掻き分けて先に進むとそこにはラピュタ語の文字が刻まれた石が。ラピュタ好きな相方はもうおおはしゃぎです。ただ気をつけてください、この石、触れると大変なことになります。大変なこととは呪いとかそういう類のものではなく、ずっと日光にさらされているので...ものすごく熱いのです。やけどします。

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 もちろん美術館内にはおみやげ屋さんがあります。「マンマユート」。紅の豚に登場する空賊の名前となっています。街で見かけるジブリショップとは全然品揃えが違い、初めて見るものばかり。なかには数万円分のおみやげを買う外国人の姿も。気合入ってますね。

 美術館というのでもっとこう感情的な空想世界を全面に押し出したものかと思いきや、もちろんそういう部分もしっかりと作られていて、異世界に迷い込んだような楽しさもありますし、子どもたちはそういう部分をしっかりと味わうことができると思います。

 しかし、それだけにとどまらず、アニメーションそのものの現実をしっかりと受け止めることもできました。空想世界と現実世界は決して別のところに存在するわけではなく、空想を作り出すのは人間という現実的な存在であり、空想と現実は繋がっているということをしっかりと認識できました。

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 三鷹市は市のキャラクターも宮崎駿さんデザインの「Poki」です。この美術館自体が市の公共施設ということですから、アニメーションで町おこしを図ったというところなのでしょうね。ぜひとも、わが地元愛知県でも、清須市に頑張っていただきたいですね。あの世界的な漫画家が住んでいるのですから。清洲城をこんな感じでドラゴンボール美術館にしてしまったらどうですかね?

関連情報

三鷹の森ジブリ美術館

三鷹の森ジブリ美術館(東京・三鷹市)MAP

三鷹の森ジブリ美術館

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