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新しく関東からやってくるサンドラッグと消える中部のサンドラッグ

記事公開日:2006年11月9日 更新日:

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 コンビニエンスストア最大手のセブンイレブンでさえ、名古屋に進出したのはわずか4年前のこと。名古屋のコンビニ業界は、それまで地元資本のチェーン店が牛耳っていました。ローソンは、その地元資本チェーンのひとつを買収して名古屋への進出を果たしたくらいです。

 このように名古屋の流通小売業はこれまで、名古屋以外からの進出を阻み続け、地元資本の会社が大きな顔をしていました。今回取り上げるドラッグストア業界も例外ではありません。全国ネットの番組のテレビCMで「マツモトキヨシ~」というサウンドロゴを聞くことはできても、マツモトキヨシは名古屋に一昨年前まで存在しませんでした。岐阜、三重の両県に進出したのが2003(H15)年、愛知県に進出したのが2004(H16)年3月のことです。

名古屋はドラッグストアもローカル企業が多い

 名古屋でドラッグストアと言えば、スギ薬局、スギヤマ薬品、ヘルスバンク、白沢ドラッグ、B&Dドラッグストア、カルナドラッグストア、クスリの清水、ドラッグユタカ、そしてサンドラッグ...。名古屋っ子であれば、これらの名前はどれも聞き覚えがあるのではないでしょうか。今回はそのなかで「サンドラッグ」を取り上げます。

 サンドラッグといえば、スーパー「バロー」のグループで、深緑色の看板に太陽のマークを掲げた店舗を思い浮かべる方が名古屋では大半だと思います。しかし最近名古屋周辺には、真っ赤な壁に白い文字で「サンドラッグ」と書かれたドラッグストアが急激に増えつつあります。全く同じ名前です。

 先発であるはずのバローのサンドラッグは怒るのかと思いきや正反対で、こちらは次々と「V+drug」に店名を変更しつつあります。一体何が起きているのでしょうか。

サンドラッグといえばバローだったよね

 バローグループの「サン・DRUG store」は、1984(S59)年2月に設立された会社で、当初は恵那店、南土岐店、長森店の3店舗体制でした。サンドラッグは店舗名で、会社名は「中部薬品株式会社」です。現在も会社名は変わっていません。名古屋へ進出したのは1990(H2)年のことです。

 バローが愛知県下に進出を加速するのと同じように、1992(H4)年からサンドラッグは毎年ものすごい勢いで店舗を増やしていきました。バローの出店戦略は広域化かつ高密度化。サンドラッグは現在、岐阜、愛知、三重と北陸に104店舗体制になっています。高密度化であったが故に、出店地域ではバローといえばサンドラッグ、サンドラッグといえばバローというイメージが出来上がっていました。

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全国区ドラッグストアも続々東海に

 一方、全国展開を狙うドラッグストアも指をくわえて名古屋の市場を見逃していたわけではありません。マツモトキヨシは自ら名古屋へ進出するのと同時に、江南市に本社を置くヘルスバンクと2005(H17)年1月に資本業務提携を発表、そしてこの中部薬品と2005(H17)年3月に業務提携を果たし、名古屋地区への間接的な影響力の増大にも動き始めました。

 特にヘルスバンクは資本提携したことにより、マツモトキヨシグループという看板まで掲げています。そんなマツキヨと同じように、名古屋のドラッグストア市場を狙っていた関東の会社があったのです。

クスリの清水を足がかりにあのサンドラッグが…

 話は少し戻って、豊明市に本社を置く「クスリの清水」というドラッグストアが名古屋にはありました。最盛期の1999(H11)年には70店舗を誇り、名古屋で大きな存在感を示していました。しかしその後、薬剤師不在による業務停止処分などで業績は悪化し、2004(H16)年1月に民事再生法の適用を申請しました。そのクスリの清水の再生に手を差し伸べる格好で、一気に名古屋へと進出を図ったのが、赤い看板のサンドラッグです。

 東京都府中市に本社を置くサンドラッグは、1965(S40)年に設立されたドラッグストア業界の老舗で、2002(H14)年には東証一部上場を果たしています。サンドラッグはフランチャイズ展開にも積極的で、全国各地のドラッグストアチェーンと契約を結んで、各地に「サンドラッグ」ブランドを浸透させています。

 そのサンドラッグが民事再生手続き中のクスリの清水を支援することを決定。「クスリの清水」の看板をサンドラッグに変え、さらにそれと同時に2004(H16)年11月には愛知県に直営の1号店もオープン。名古屋への進出を一気に加速したのです。

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 この時点で、「関東のサンドラッグと中部のサンドラッグ」という、これまであった垣根は崩れてしまったのです。

2つのサンドラッグが同じ地域に

 片や関東、中部、関西、九州に直営店を260店舗出店し、さらにはフランチャイズ展開で北海道から九州まで合計360店舗以上のネットワークを持ち、東証一部に上場までしているサンドラッグと、会社名ではなく店舗ブランドだけがサンドラッグという104店舗の中部薬品。

 100強の店舗数とはいえ、名古屋では圧倒的に中部薬品のサンドラッグのほうが有名なのですが、関東のサンドラッグが名古屋に本格進出を果たしてしまった以上、同名で戦うのはもう無理だと判断したのでしょう。中部薬品は今年7月から半年間かけて全ての店舗名を「V+drug」とすることにしました。V+drugとは「VALOR DRUG STORE」の略です。

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バローのほうがVドラッグに

 バローは、かつて1995(H7)年に吸収合併したフジヤホームセンターと、独自展開していたイズムホームセンターを6月に全て「ホームセンターバロー」に統一したばかりで、サンドラッグの名称変更は時期的にちょうど今が良かったのでしょう。むしろこのV-drugのほうが、バローとの統一イメージが出来上がって結果的には良かったのではないでしょうか。

 これまでバローにはサンドラッグ、サンWILLドラッグ、フジヤホームセンター、ホームセンターイズム、スポーツクラブアクトス、ペットフォレスト、といった別名称のブランドがいくつも存在したのですが、これによりホームセンターとドラッグストアはバローと同じイメージに統一されることになります。

 そのうちアクトスは「V-sports」、ペットショップは「V-pet」になったりして...。それは冗談ですけれども、ここ最近バローはCI戦略にかなり力を入れていることがわかります。近年の出店攻勢といい、まさしく中部のイオンと言っても良いのではないでしょうか。これは褒め言葉のつもりなのですが、この言葉はたぶん、バローの方には嫌味に聞こえてしまうと思いますが...。アクトスがかつて「東濃スポーツクラブ」という名前だったということをご存知の方も、今はもうあまりいらっしゃらないでしょうね。

 しかし当然のことですが、中部薬品は「関東から本物のサンドラッグが来たから、サンドラッグという名前をやめることにしました。」とは言いません。サンドラッグがV+drugになる理由は「創業24周年を迎えて」だそうです。24年とはこれまた中途半端ですね。これがまだ25周年だったら四半世紀ということで様になったでしょうに...。

でも、24年間使用してきて、しかも浸透していたブランド名を一気に変更するというのは大英断です。まさしくそこには「バロー」があったのでしょう。バローとは英語の古語で「勇気ある者」です。

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 ちなみに、バローは純粋な名古屋の会社ではなく、岐阜県多治見市に本社を置く会社なのですが、この中部薬品をはじめ、中部フーズ、中部物流、中部興産とやたらと「中部」という名前を使っています。これはまさに、中部を手中に収めたいという思いの表れでしょう。サンドラッグという名前は失いますが、それ以上のブランド力をV+drugで構築できるかどうかがこれから見ものです。

 冒頭名前を出したいくつかの名古屋のドラッグストア。前述のとおりクスリの清水は民事再生法適用、カーマが運営していたカルナドラッグストアはいつの間にか姿を消し、白沢ドラッグは東洋薬局などと持ち株会社ジップホールディングスを設立と、業界地図は大きく動いています。今後さらに、名古屋のドラッグストア業界は競争が激しくなることでしょう。V+drugの「V」がバローのVだけではなく、victoryのVとなれるか、注目です。

関連情報

VDRUGの中部薬品
サンドラッグ

中部薬品 本社(岐阜・多治見市)

35.359485, 137.096379

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