ソフトもハードも模索を続けるラジオ・瀬戸発で東尾張をカバーする地域FM局-RADIO SAN-Q

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尾張東部の2市1町をカバーするコミュニティFM局

前回、豊田市のコミュニティFM局・エフエムとよた(RADIO-LOVEAT/ラジオラブィート)の取材レポートを書きましたが、かつてそのRADIO-LOVEATに企画書を持ち込みパーソナリティを務めていた友人と、もうひとつ近隣のコミュニティFM局にも立ち寄りました。豊田市のお隣瀬戸市にあります、尾張東部放送(RADIO SAN-Q/れでぃおさんきう)です。

こちらはRADIO-LOVEATとは対照的に今年(2006年)の3月に開局したばかりです。私のサイトを隅々までお読みいただいていらっしゃる方は、私が瀬戸市在住であることにお気づきだと思うのですが、なぜ今まで放送好きな私がこの地元のFM局を取り上げなかったのか、その理由も含めて今回はレポートいたします。

尾張瀬戸駅の駅ビルパルティ瀬戸に開局

名鉄瀬戸線の終点、尾張瀬戸駅には立派な駅ビル「パルティせと」が建設されました。これは、2005(H17)年に開かれた愛・地球博の開催に向けて整備されたもので、当初はホテルも併設の高層ビルという計画だったのですが、名鉄がホテル計画を撤廃し、現在の6階建てのものとなりました。瀬戸市の中心市街地の活性化を目指し設立されたTMO、瀬戸まちづくり株式会社による運営です。その1階にRADIO SAN-Qのサテライトスタジオがあります。

瀬戸市では、万博開催と同時に、NPO法人が運営もNPOのコミュニティFM局の設立を目指していたのですが、結局万博には間に合わず、それ以降コミュニティFMの話が途絶えていました。「そういえば瀬戸のコミュニティFMってどうなったのだろう…」と思っていたところ、今年1月東海総合通信局からニュースリリースが発表になりました。1月末のことです。

最初は市役所とはあまり連携していなかった?

その発表は、放送局名は「尾張東部FM」、瀬戸市、尾張旭市、長久手町を放送対象区域とし2月下旬の開局予定、というものでした。私は当時、それなりにいろいろな方面に問い合わせをかけてみました。ところが市役所の方でさえ「そんな話は知らないなぁ」と言い、一体どこの運営なのか全くわからない状況が続きました。しかも2月下旬になっても開局の兆しを見せませんでした。そしてようやく、尾張東部FMのホームページと思われるものを発見したのですが、「準備中」という文字だけで、どこにある放送局なのか、連絡先はどこなのか、一切わからない状態でした。

試験電波が発射されるようになり、3月に入って再び市役所に問い合わせても「そういう話は聞くけど、市役所としてはいつ開局とかよくわからない」の一点張り。すると東海総合通信局は3月14日、いきなり免許交付の発表をします。翌3月15日、いきなり放送局は開局していたのです。しかし放送は始まってもホームページは工事中のまま。放送局の開局時によくある、チラシやステッカーといった類のものは配布されませんでした。万博のイベントFMでさえ、開局前に我が家にはステッカーが配られました。

私はそんなエリアに住んでいるのです。私の取材力不足なのかもしれませんが、瀬戸市民である私があちこちに話を聞いても実態が見えず、ある日いきなり開局して、いきなり始まった放送局。地域の放送局という印象を持つことはできませんでした。しかし見えてこなかったのは実態だけではなく、実際に放送が始まってみると、放送自体も聞こえてこなかったのです。

電波が届か…ない…

多くのコミュニティFM局は、1つの自治体をカバーするのみなのですが、この放送局は瀬戸市と尾張旭市と長久手町という2市1町の広範囲を放送対象区域にしています。ところが、にもかかわらず我が家でポケットラジオで聞こえないのです。電波が届かないのです。東海総合通信局の資料を見ると、電波が発射されているのは我が家から約1.5キロ先。それ程近くであるにもかかわらず、放送が聞こえないのです。豊田や刈谷、名古屋、多治見のコミュニティFMが聞こえるのに、1.5キロ先にある地元のコミュニティFMが聞こえないのです。

実態がよくわからないわ、聞こえないわでのスタートだったのです。

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電波がパワーアップ・広報活動も精力的に

それから5ヶ月が経過し、友人から「瀬戸のコミュニティFMが放送を1日休むらしいね」という話を聞きました。8月のことでした。するとその翌日から電波が劇的に聞こえるようになり、我が家でもポケットラジオで聞こえるようになりました。それまで5素子、3素子の2面送信だったものを、垂直のグランドプレーン送信に切り替えたのです。電波の指向性を示すERPも100wから21wに免許内容が変更になりました。つまり、それまで北東方向の山間部に電波を強く出していたものを、満遍なく出すように変わったのです。

その電波が増強された頃に公民館だよりだったか、広報だったかにRADIO SAN-Qのチラシが入りました。見ると「スタジオへ見学に来て下さい」「CDを寄付してください」「ボランティアスタッフを募集しています」とあり、私のなかにあった、どこかで全てが決まっているというそれまでのイメージは払拭されました。そしてやはり聞こえるようになったということが当たり前ですが大きく、家で仕事をしながらたまに聞くようになり、そして驚きました。このRADIO SAN-Qは、今までのこの地方のコミュニティFMでは考えられない、大手局に真っ向から対決する番組構成になっていたのです。

この地方のコミュニティFM局は、前回取材した豊田市のRADIO-LOVEATのように、どちらかというとAM局っぽい編成をしているところの方が多いのです。ワイド番組と箱物番組が適度に配され、それ以外の時間は東京の番組供給会社から番組を受けるというスタイルです。しかしこのRADIO SAN-Qは違っていました。東京からの番組は一切無し、24時間自前の放送で、さらに箱物番組はほとんど無く、ほぼ全てがワイド番組なのです。しかも番組には「ゾーン」名しかついておらず、それぞれの番組に個性をあえて持たせない、かつて名古屋の県域FM局がやっていたゾーン編成なのです。

番組というよりもゾーン編成

朝7時から正午、午後1時から4時、午後4時半から8時のそれぞれを一人のDJが担当し、トークではなく音楽が中心です。それだけの長時間を一人でトークというのは現実的に厳しいでしょう…。毎正時にヘッドラインニュースが入り、あとは広報を読み上げる時間や、料理、ファッション、映画のコーナーがところどころ入るという編成です。

ほとんどが音楽ですし、DJもプロの方を起用しているので、聞いていてもコミュニティFMらしさというものをほとんど感じません。一言で言うと、有線放送の音楽チャンネルの合間に時々地元の情報が入るという感じでしょうか。話し手の方は時には2つのゾーンを連続して担当されるなどかなりの長時間を担当されており、聞いているこちらが気の毒になってしまうことも…。話し手の方がプロであるということ、そして選曲のセンスが良いということ、加えて全国ニュースも随時挿入されるので、仕事をしながら点けておくには最適です。

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スタジオを見学させていただきました

さて、そのスタジオに見学に行ってきました。場所は最高のところにあります。瀬戸市の主要駅である尾張瀬戸駅を出て、徒歩1分です。放送内容も県域局に倣っていることから想像はできたのですが、やはりスタジオはしっかりとミキシングルームと仕切られた、いわゆる金魚鉢タイプでした。液晶モニターがいくつも並び、CMや音楽は全て自動送出となっていました。午後8時から午前7時までの音楽ゾーンも、全てここで送出をインプットして流しているとのことです。

スタジオは瀬戸川沿いの大通りに面していて、ソファーや椅子は赤色で統一されていてまるでカフェのよう。いかにも放送局のスタジオ、という感じではないので、これならゲストで入った一般の方も、それほど緊張せず気楽に話せるのではないかという雰囲気でした。スタッフの方にお話を伺うと、やはり当初は電波の飛びが悪かったのが悔やまれるとのこと。確かに、コミュニティFMというのは開局効果のあるときにいかに知ってもらうかが重要ですから、その時期にエリアが狭かったというのは大きな打撃だったことでしょう。

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イベント会場からの放送も充実

最近では、尾張旭市の祭り会場にブース出展をして、さらにそこから生中継をしたり、瀬戸市で行われる年に1度のビッグイベント「せともの祭り」では、会期中2日間に渡って全編で特番を編成するなど、ゾーン編成だからこそできる、型にはまらない柔軟な構成になっています。それでもやはり曲が多いので、AMのトークが好きな人にはちょっと物足りないかもしれません。

やはり地域密着にこれからも力を入れていくとのこと。見学させていただいた際にパーソナリティの方が仰っていた「コミュニティFMに正解は無いので、これからも様々なことを模索していきます」という言葉が印象的でした。確かに、「これをやったらうまくいく」という王道はコミュニティFMには無いと思います。

名古屋のほうばかりを向いている尾張旭市や長久手町の人に、瀬戸のFMを聞いてもらうというのは、結構難しいことではないかと思います。だからこそ都会的なセンスを取り入れ、ゾーン編成にしたと思うのですが、それによってRADIO SAN-Qは、いつラジオをつけても同じ印象を受けます。それがゾーン編成の魅力でもあるのですが、逆に欠点でもあると思います。

ゾーン編成というものが果たしてコミュニティFMで成功するのか、そして純民間の放送局というものが瀬戸市で今後どういう展開を見せるのか、これからが楽しみです。

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私は、フュージョン系の曲が多用されている今のRADIO SAN-Qは好きなのですが、でもやっぱり根はAM人間なので、街角レポートだけでななく、もう少し地元の方の「喋り」が聞きたいなという思いもあります。現在の自治体情報だけでなく、地元のニュース解説もあるといいですね。瀬戸市役所の入札談合問題とか、独自取材は難しくとも、地元新聞社の記者とかを呼んで解説とかして欲しいなぁ。それが純民間の魅力だと思いますので。

追記

※その後、地元新聞社の記者が、ローカルな事件の真相に迫るコーナーが設けられ聞き応え充分になり、さらに報道部が設けられ充実されました。

ラジオサンキュー(RADIO SANQ)

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コメント

  1. 大府市のテレ東オタ より:

    今日は、仕事をずる休みして、あるいみ瀬戸の観光に、来ています。
    ラジオ持参してないので、判りませんが、聞いた話しでは、SAN,Qの機械が、故障中とか?
    スタジオには。人が居ません。今から、お昼を、食べて、帰ります。今夜も、テレビ愛知探検を、します。

  2. トッピー@管理人 より:

    >大府市のテレ東オタさま こんばんは
    3月1日のことですか…。
    その日、私はSANQエリアにいなかったので放送は聞けていません。
    なので、故障とかそういう話はちょっとわかりかねますね…。

  3. アイ・フロッグ より:

    Radio SAN-Q開局当時のブログ、拝見いたしました。
    2014年2月現在、同局の編成は当初の100%自社番組ではなく、ましてやゾーン編成でもなく、所々にミュージックバードが混じるといったものになってしまっていますが、それでも地域に密着する姿勢は保ち続けていると思います。
    ところで現在、私はSAN-Qをネットラジオ、それもPCを使わないで聴くことがあります。というのも、私はパイオニアのネットワークオーディオプレイヤー「D-50」を持っており、その「D-50」にはインターネットラジオチューナーが内蔵されているのですが購入時、そのチューナーにプリセットされていた世界各国のネットラジオ局の中にたまたまSAN-Qがありました (本当の話で、地元関係では他にMID-FMも入ってました)。
    車で走っていても、瀬戸・尾張旭・長久手といったエリアから少し外れただけで入りが悪くなるSAN-Qですが、これならエリア内で84.5MHzで聴くのに近い感覚で、しかも極端な話、世界中何処でも楽しめる訳ですから時代は進んでいるといえるでしょう。
    ところで、SAN-QとMID-FMのネットラジオはどちらも24時間のサイマル配信ですが、SAN-Qが全番組を配信するのに対し (ミュージックバードからのネットは同社の許諾の下) 、MID-FMはあくまでも自社制作番組のみで、それ以外の時間はBGMを流すといった違いがあります。

  4. トッピー@管理人 より:

    >アイ・フロッグさま コメントありがとうございます。
    この、取材をさせていただいた当時とは、
    かなり編成が変わっておりますが、
    サイマルラジオも導入されて、いつでもどこでも、
    瀬戸近辺の情報が手に入れられるのは嬉しいことです。
    ミュージックバードの番組については、
    サイマル再送信がOKになっているようですが、
    OKじゃなかった時代からやってる局は、
    MIDのように、今でも配信を止めるところがあるみたいですね。

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