★名古屋のローカル鉄道「城北線」で貸切イベント
★電車を見るための列車?
★街なかの高架を走る城北線だからこそ!
城北線という鉄道路線をご存知でしょうか。名古屋市内を走る路線なのですが、名古屋っ子でも、乗ったことがない、それどころか、存在を知らないという人が数多くいることと思います。
何を隠そう、私もこれまで乗ったことがありませんでした。既に開業から20年以上が経過しているにもかかわらず、利用者がなかなか増えない、東海交通事業の城北線。そんな城北線で、ちょっと変わった貸切イベントが開催されました。
その名も「とれいんWatchingとれいん」。列車を見るために運行される貸切列車です。果たしてそれはどんなものか…と思ったら、想像以上の大サービスでした。しかもサービスは城北線だけでなく…。
城北線の成り立ち
城北線の詳しい成り立ちにつきましては、また改めて特集を組んで記事にしようと思いますので、ここではさらっと。
かつて国鉄には、瀬戸市から高蔵寺、勝川を経由して、小田井、稲沢へと至るという「国鉄瀬戸線」の計画がありました。しかし財政難から国鉄時代に実現することはできず、そのうち、瀬戸市と高蔵寺の間は第三セクターの「愛知環状鉄道」として開業。そして、高蔵寺と勝川の間は、JR中央線と並行のため計画断念。残る、勝川から枇杷島へとつながった部分が現在の「城北線」ということになります。
現在も線路など施設自体はJR東海の保有となっていますが、運行は子会社の「東海交通事業」によってなされており、1両の非電化車両が、高架をのんびり走っていきます。しかし、周囲の風景は大型ショッピングセンターに、立体交差する高速道路、ひっきりなしに走る他社路線と見事にアーバン。そんな空間の空高くに、まるで地方のローカル鉄道のような列車が走っているのです。
城北線活性化イベントとして開催
そんな状態ですから利用者がもともと少ない上に、乗客数も減少傾向。それを何とかしようと企画されたのが今回のイベントです。城北線の最大の利点は、他社路線と立体交差しているということと、高さ20メートルという高い位置を走っているということ。つまり、城北線からは名鉄や地下鉄、JRといった、他の鉄道会社の車両を見下ろすことができるわけです。
しかし、普段は城北線から他社の車両を撮影することはできません。なぜなら、当然のことながら、こちらも走っているからです。そこで今回は、城北線の車両をベストポジションで停めてしまって、そこから名鉄や地下鉄の写真を撮ってもらおうという趣向なのです。
これまで、初日の出を見るための臨時列車の運行はありましたが、他社の列車を見るための列車というのは今回が初めて。その企画の奇抜さもあってか、この日は中京テレビの取材クルーも同乗することとなりました。
10時40分、鉄道ファン20人を乗せた貸切列車は勝川駅を出発です。
駅を通過して名鉄の上で停車
勝川駅を出発すると「味美、比良は通過して、小田井に一旦停車し、つづいて名鉄の上空に停車します」というアナウンス。そもそも、城北線には快速などありませんから、駅を通過すること自体にもワクワクです。
勝川駅から11分で、名鉄の上空に到着です。なんとここで25分の停車。じっくりと名鉄と地下鉄の写真を撮ることができます。
名鉄犬山線はこの南側でカーブしており、撮影にバッチリの構図。次々と様々な名鉄の車両が行きかいます。この位置からの写真は普段絶対に撮れませんから、本当に貴重です。
すると、近所のガソリンスタンドなどお店の人が、こちらを指差して不思議な顔をしている様子がわかりました。そりゃそうですよね。駅でも無いところに列車が停車して、その窓からたくさんの人がカメラを構えているのですから…。傍から見たら一体何事?と思いますよね。
名鉄犬山線に比べて、地下鉄鶴舞線は本数が少ないうえに、相互乗り入れもしていますから、しっかり集中していないとうまく写真に収めることができません。しかし、真上から見る地下鉄というのもすごいですね。車両の天井を見ることなんて、めったにできないことですから。
周囲からは「まるでNゲージのようだ」という声が。確かに!あまりにもあり得ない構図、しかもこちらも高架上にいますから、本物の鉄道がNゲージのように見えてしまうという、妙な感覚に陥りました。
ポケモン列車キター!
さすがに、25分停車していると言っても、タイミングよく来るとは限らないよな…と思っていたのが、名鉄が運行しているポケモントレイン。すると、向こうからやってくるではありませんか!ポケモン列車「聖剣士号」です。
おや?すると、なんとなくスピードがゆっくりな気が。そのおかげで、しっかりと写真に収めることができました。また、他にも警笛を鳴らしてくれた運転士さんも。
まさか、城北線のこの撮影イベントのために?と思いましたが、まあ、カーブですからスピードも落とすでしょうし、そもそも、この位置から名鉄が走っているのを見たことなんてのは無いわけですから、それが「ゆっくり」なのか「速い」のかは、感覚的にしか判断できるものではありません。カーブですから警笛も鳴らすでしょうね。
でも、まるで、それらの事象がこちらに合わせてくれているかのようで、嬉しかったですね~。
枇杷島駅でトイレ休憩したらすぐに折り返し!
25分の撮影停車を挟んで、11時23分に枇杷島駅に到着です。ここでは7分のトイレ休憩のみですぐに折り返しです。
つづいては、枇杷島駅を出てすぐ、東海道本線を見下ろせる位置で停車です。今度はここで18分間の撮影タイムです。名鉄ほどの高低差はありませんが、新幹線を見下ろして撮影するというのも新鮮。また、JRは在来線のほかにも、貨物車両が見られるのも面白いですね。そしてやっぱり、貨物を見ても「まるでNゲージのよう」です。
車庫に入っていただきます
東海道本線の撮影タイムが終了すると、列車は全ての駅を通過して勝川へ。そして勝川駅では中京テレビの取材クルーは下車したものの、乗客を降車扱いすることなく、こんなアナウンスが、「この車両はこのまま車庫に入ります。そのままご乗車していただき皆様にも車庫に入っていただきます。」
「ご乗車になれません」はよく聞くフレーズですけど、「皆様にも車庫に入っていただきます」は初めてです。
ここでお昼ご飯です。勝川駅と尾張星の宮駅にちなんだ縁起物の「勝つ星サンド」という名の味噌カツサンドです。車庫のなかで食べるお昼ご飯はまた格別でした。またここでは、参加記念品も配られました。ナンバーの入った尾張星の宮と勝川の往復切符「城北線開運勝星きっぷ」です。これが硬券なのがまた良かったです。
さあ、ここから後半戦です。
撮り逃し厳禁小牧線と城北線名古屋行き?
午後の部は12時42分に勝川駅を出発。今度は名鉄小牧線上空で14分停車です。しかし、小牧線は運行本数が極端に少ないため、14分停車しても1回しか下を通っていかないため、これまでと違って撮り逃し厳禁の一発勝負です。
そして小田井駅に停車しての、城北線自身の撮影タイム。他の運行車両との兼ね合いで都合6分ではありましたが、方向幕を「名古屋」行きにしてくれました。あるんですね!いつの日か夢の名古屋乗り入れの日はやってくるのでしょうか…。
最後の撮影ポイントは再び上小田井
いよいよ最後の撮影ポイントです。枇杷島駅の先ほどとは逆のホームへと入り、5分の停車で折り返しです。今度は、下り線から名鉄を撮影です。先ほどの南側とは逆、北側の上小田井駅側を望みます。上小田井駅のホームも見えます。乗り換えでたまに利用していますけれども、客観的に上小田井駅のホームを上から見るのはもちろん初めてです。
いつも乗っている犬山線の準急に、ギリギリのタイミングでしたが、もうひとつのポケモントレイン「ケルディオ号」も見ることができました!
すると…ビルの屋上からこちらに手を降る人たちの姿が。見ると、なんとそれは、先ほどまで一緒に乗車していた、中京テレビの取材クルーでした。なるほど、高架の上に列車を停めて、窓からカメラを出している鉄道ファンの様子を、あちらから撮ろうというわけですね!すごい手配力。さすがです。
最後の最後は城北線をとことん撮影
午後1:59分、城北線2往復を経て、とれいんWatchingとれいん号は勝川駅に到着です。最後の最後はもちろん、城北線の撮影タイムです。現在は使わなくなった「勝川⇔尾張星の宮」、さらに「小田井」、夢の「名古屋」と方向幕全てを撮影させていただけました。
名鉄犬山線に小牧線、地下鉄鶴舞線にJR東海道本線、そして城北線と、この日だけでどれだけの車両を撮ったことか。私はどの車両がどうというところまではわかりませんが、普段利用している車両を客観的に上空から見られるというのは、とても斬新でした。
そして、鉄道車両はもちろん良かったですが、名古屋北部の景色も満喫することができ、新たな名古屋の風景を発見することもできました。
今回のイベントは初回ということで、広く告知はせず口コミのみでの募集だったようですが、今後はさらに2回、3回と、同様の企画での運行を開催していきたいというお話でしたので、興味のある方はぜひ、城北線に注目してみてください。
また、既に定員に達してしまいましたが、21日には城北線のなかでコーヒーとサンドイッチが味わえる「カフェトレイン」の運行もあります。
本数も少なく乗り換えも不便、利点はただ「高い」だけと言われてきた城北線ですが、今回の、列車の高架から列車を見るというイベントは、その利点を最大限生かし、城北線にしかできないものです。逆に、本数が少ないからこそ、本線上に25分も停車していられるわけですしね。この企画が、新たな城北線の目玉となるといいですね。
「空から鉄道を見てみよう」この感覚を、ぜひ多くの人に味わっていただきたいです。
今回はイベントのレポートとなりましたが、城北線自体を取り上げる記事も近々アップする予定ですので、お楽しみに。
その記事はこちらから名古屋の非電化ローカル鉄道・JRになれなかった城北線
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