徹底して地域と共存する道を選んだテレビ愛知

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テレビ愛知はいきなりの地元密着編成

テレビ愛知が試験電波を発射すると、苦情が寄せられ始めました。それは「中京テレビの映りが悪くなった。」「三重テレビが綺麗に見られなくなった。」といったものでした。

中京テレビは名古屋市昭和区高峯町、住宅街のまん中にあり、その敷地内に送信所「東山タワー」を設置していました。

中京テレビの30kWの電波に加え、同じ鉄塔から、テレビ愛知10kWの電波が発射されたことで、双方の電波がケンカしあって共に映らなくなったり、中京テレビにテレビ愛知の画像が入り込んでしまうという現象が発生しました。

また、強電界となってしまい、遠く三重県津市から5kWという弱い出力で、海を越えてやってくる、三重テレビのかすかな電波をかき消し、三重テレビが映らなくなってしまうという事例が発生したのです。

三重テレビへの電波障害に対応したテレビ愛知

これに対しテレビ愛知は、受信相談係を設け、愛知県電器小売商業組合加盟小売店に工事を要請し、補償金を支払ったのでした。

本来は映らないはずの越境電波である、三重テレビを受信していた家庭についても対策工事を行った、という点をみても、テレビ大阪とサンテレビとの関係とは大違いです。この苦情対策は、開局後も約1年続き、テレビ愛知、中京テレビ、三重テレビの受信状況を改善し続けたのでした。

サービス放送が新聞のテレビ欄に登場

8月、お盆を過ぎると、テレビ愛知の広告が新聞によく出るようになりました。そして24日、テレビ欄にこのようなお知らせが出ました。「あすからサービス放送-テレビ愛知 テレビ愛知(UHF25チャンネル、豊橋地方=同52)は九月一日から本放送を始めますが、それに先立ち、あす二十五日から三十一日までサービス放送をしますので、同番組表を朝夕刊に掲載します。」

私は翌日の新聞からどう変わるのか、そしてどのような番組が放送されるのか、興奮してなかなか寝付けませんでした。

翌25日、朝さっそく新聞のテレビ欄を見ると、端っこの三重テレビの欄のさらに右隣りに、三重テレビと同じハーフサイズで、「テレビ愛知TVA25<サービス放送>」という欄が加わっていたのです。そこで私は、思わず目を疑いました。

1983(S58)年8月25日のテレビ欄。サービス放送初日(出典:中日新聞)

テレビ愛知は朝から放送するの!?という驚き…なぜなら

なんと、放送が午前10時からなのです。10時の「ファミリー経済情報」に始まり、終了は深夜12時という長時間放送なのです。

え?それのどこが驚きなの?と思われるかもしれませんが、当時、三重テレビの放送開始が午後5時17分、岐阜放送が午後4時55分という時代です。U局とは言え、先発のテレビ局の放送開始が夕方であるにもかかわらず、新局の放送、しかもサービス放送が朝10時からという事実に驚きを隠せなかったのです。

「U(ユー)」がもうひとつ増えるってこと?

ひょっとして、テレビ愛知は三重や岐阜よりもすごい存在になるかもしれない…。少年だった私の心にあった、テレビ愛知への期待はさらに増したのです。

それまでは、三重テレビのような同じような地方局が増えるくらいだろう、という意識しかしていなかったのが、これは「U(ユー:中京テレビのこと)」がもうひとつ増えるくらいのすごいことなんじゃないか…。

今なら独立U局と系列局の違いはわかりますが、当時はテレビ愛知が系列局になるという知識もなく、素直に、先に開局していた、三重テレビとテレビ愛知を同列に考えていたのでした。

テレビ愛知のキャラクターはコアラに

そして25日の朝刊には、大きく、テレビ愛知の1面広告が掲載されていました。可愛らしいコアラ親子のキャラクターとともに、サービス放送期間のプライムタイム番組表が掲載され、「発表します。テレビ愛知のニコニコ試食メニュー。」と書かれていました。

同じく25日のテレビ愛知の広告。右上からコアラ親子が覗いています(出典:中日新聞)

なぜコアラなのか。推測ですが、翌年の1984(S59)年に名古屋の東山動物園にコアラがやってくることが決定していて、コアラが日本の動物園に来るのは初めてということで、名古屋は当時コアラフィーバーとなっていたのです。

確実と言われていた、名古屋オリンピックが夢と消え、閉塞感が漂っていた名古屋にとって、当時、コアラだけが希望の光だったのです。そのため、テレビ愛知はコアラをキャラクターに選定したのではないでしょうか。

サービス放送はテレ東の番組がずらり

サービス放送期間には、どのような番組が放送されたのでしょうか。広告を見ますと、すべてがテレビ東京をキー局とする、「メガTONネット」の番組だったようで、サービス放送期間は、ニュースも含めローカル番組は無かったようです。

「大江戸捜査網 妹慕情・怒りのまむし剣法」「金曜スペシャル 初公開、倉田保昭の突撃ルポ・恐怖の殺人学校」「日曜ビッグスペシャル 全日本にらめっこ大賞」当時からテレビ東京は、斬新な番組を放送していたんですね。今見ても面白そうなラインナップですね。

ローカル番組の意気込みにびっくり

そして今度は、テレビ愛知の自社制作ローカル番組を紹介する新聞広告が、27日に掲載されました。意気込みにびっくりしました。なんと、開局初日から「TVAホットレポート」という30分のワイドニュース番組を、月曜から金曜まで帯で設定しているのです。

テレビ愛知の自社制作番組をPRしていた新聞広告。見るコアラ、聞くコアラ、言うコアラといったところでしょうか(出典:中日新聞)

この頃、すでに開局から1年半経っていた、先発系列局のテレビ大阪でさえ、ニュースは「TVOニュース」が10分あるのみでした。

先発局もようやく30分のローカルニュースを整えたところだった

また、名古屋に目を移してみると、CBC(中部日本放送)がトップを切って、1974(S49)年10月1日に名古屋初の30分にわたるローカルワイドニュース「CBCニュースワイド」をスタートすると、続いて東海テレビ「イブニングニュース630」、中京テレビ「中京TODAY」と、各局がワイドニュース番組を編成していました。

▲イブニングニュース当時の番宣、西沢キャスターは中日新聞の方ですね(出典:東海テレビ)

しかし、ここで残る1局、名古屋テレビの動向を見てみましょう。すでにCBCがニュースワイドをスタートしていた1975(S50)年4月1日、夕方のネットニュース「ANNニュースレーダー」のなかで数分間、初めての顔出しローカルニュースを放送しました。

そしてようやく、1982(S57)年になって初めて、「名古屋テレビニュース615」(15分)という独立したローカルニュースをスタートさせ、それから段階的に「ニュース610」(20分)、「ニュース600」(30分)と拡大し、テレビ愛知が開局する少し前、なんとか30分のローカルワイドニュースを整えたという状況だったのです。

開局の日から30分間の夕方ニュースという衝撃

先発の名古屋テレビが、開局20年にして、ようやくスタートさせた30分間のワイドニュース。それをテレビ愛知は開局の日から始めるというのですから、ただごとではありません。

当時社内では、このローカルニュースについてかなり議論されたそうです。新局で少ないスタッフ、果たして30分のローカルニュースが毎日作れるのか…。

しかし、この「TVAホットレポート」は、それまで名古屋では考えられなかった斬新なスタイルで、名古屋で一番早い夕方のニュースとして、堂々とスタートするのです。しかも、テレビ愛知のローカル番組は、それだけには留まらなかったのです。

小さい頃、名古屋テレビの夕方と言えば…

me-ko
me-ko

トムとジェリーにウッドペッカー、黒べぇど根性ガエルとアニメ全盛でしたものね

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