
名古屋に新しいチャンネルだ! の 第6回です
東京12チャンネルが自前のネットワークを作るためには…
中京・近畿地区の独立U局と、ネットワークに近い状況を形成した「東京12チャンネル(以下12ch)」。12時間の正月特番を、独立U局と共同制作した1979(S54)年、次のステップへと踏み出すのです。しかし、踏み出すには、切らねばならぬ絆があったのです。
8局体制の東京12チャンネル系列?
この頃になると、協力体制は、東京12チャンネル・岐阜放送・三重テレビ・サンテレビ・近畿放送・びわ湖放送・奈良テレビ・テレビ和歌山という8局にまで広がりました。
それだけ番組販売もできるようになり、営業面でも製作面でも、そして視聴率の面でも、業績が良くなり、もちろん日本経済新聞社(以下日経)の支援のもと再建が進み、この1979(S54) 年、ようやく再建が完了しました。

▲この頃の東京12チャンネル、放送開始画面。(本文とは無関係)(出典:東京12チャンネル)
再建完了とともに持ち上がった構想
再建が完了するとともに、この年の年末、ある構想が持ち上がりました。大阪地区で、日経を中心としたテレビ局新設申請の一本化の動きがまとまる方向となったのです。
12chはネットワーク化による広告効率と、制作費効率の向上、および営業規模の拡大を図るため、自社系列をもつ必要にかられるようになっていたので、かねてからの念願であった、ネットワーク系列局が誕生するムードが高まりました。

▲この頃の東京12チャンネル、放送終了画面。(本文とは無関係)(出典:東京12チャンネル)
日経としては近畿広域局を想定していたが…
郵政省は1969(S43)年10月以降、VHF新局の開局を認めないとしていたことと、大阪地区にはもうVHFの空きチャンネルがなかったことから、この新局はUHFでの開局ということになりました。電波の飛びにくいUHFとは言え、名古屋には30kWの高出力で、広域をカバーしている中京テレビがあったため、それと同様に、日経は当初、新局を近畿広域圏エリアとして考えていました。
翌1980(S55)年10月17日。郵政省からテレビ大阪(株)に対し、予備免許が交付されました。しかし、ふたを開けてみると、大阪地区への割当はUHF19チャンネル。出力10kWで、大阪府のみをエリアとするというものでした。
大阪府のみチャンネルが少ない「格差」の是正
理由としては、先述のとおり、大阪府で見られるテレビ局の数が、NHK総合(2ch)、毎日放送(4ch)、朝日放送(6ch)、関西テレビ(8ch)、よみうりテレビ(10ch)、NHK教育(12ch)の「6」なのに対し、兵庫県は県域U局のサンテレビ(36ch)を加えて「7」というように、京都、滋賀、奈良、和歌山の各府県は7つのテレビ局が見られる状態となっていました。
そのため、情報格差の是正という観点から、大阪府域のテレビ局を開設し、大阪府で見られるチャンネルを7つにするからというものでした。
日経はこの決定に納得ができなかったのではないでしょうか。関東広域圏では、東京で見られるチャンネルが「7」に対し、周辺県では「8」という状態になっており、情報格差が発生していても、放置されているにもかかわらず、なぜ大阪新局だけがそういった制約を受けなければならないのかという思いはあったと推測できます。
噂はいろいろありますが…
テレビ大阪が広域エリアを認められなかったのには、他にも理由があるのでは?と推測することができます。まず、大阪府・大阪市の意向です。関西の他府県には、県域のテレビがあるのに、なぜ大阪だけ無いのか、大阪も地元のテレビ局が欲しいというもの。この可能性は非常に高いです。実際にその理由で開局したのが東京MXテレビです。
次に考えられるのが、周辺の県域独立U局の反対です。12chの番組を数多く放送していたこれらのテレビ局にとって、12ch系列の新局が、広域でできるとなれば、ネットしている全ての番組を持っていかれることとなり、営業的にも編成的にも非常に苦しい立場となるからです。
そしてもうひとつ考えられるのが、既存の広域V局の反対です。近畿広域圏2府4県の経済力というのは、テレビ局がひとつ増えるからといって、強くなるわけではありません。パイの奪い合いが厳しくなるだけです。そのため既存局が、新局については、パイの異なる大阪府域を望んだというものです。
大阪府・大阪市の意向は納得できるものですし、これら自治体は、大阪新局にも出資する予定だったことから、意向が汲みいれられた部分はあるかもしれませんが、独立U局や既存V局の意向で、郵政省が、大阪新局を府域エリアに設定したと言うのは考えにくいのですが、何か裏で、動きがあったのかもしれません。
このあたりの裏事情は、あらゆる資料を紐解いてみましたが、発見することはできませんでした。建前としてはやはり「格差の是正」です。
大阪の新テレビ局の前に立ちはだかったのは…サンテレビだった
そんなわけで、大阪府のみをエリアとする、大阪新局「テレビ大阪」開設に向け、準備が進んでいきます。
ところがここで、今まで恩恵に与っていたものが、急に邪魔な存在となったのです。そうです、サンテレビジョンの存在です。
神戸のサンテレビは、兵庫県域免許であったものの、送信アンテナの位置選びの成功から、大阪府も100%カバーしており、また、阪神タイガース中継に力を入れていたことから、大阪府内でも神戸にアンテナを向けている家庭が多く、ビデオリサーチ社の近畿広域圏における視聴率調査の対象局にもなっていました。これまでは、そのサンテレビのお陰で、12chの番組を大阪府民へ届けることができたのです。
サンと同じ番組ならテレビ大阪映らなくてもいいよね?
しかしテレビ大阪は、大阪で初めてのUHF局となるため、まず、大阪府内の家庭に、新たにアンテナを設置してもらわなければ、見ることができず、また、送信アンテナの位置決めも難航していたことから、開局してすぐに、大阪府全域をカバーすることは不可能な見通しでした。
ということは、同じ12chの番組を、サンテレビとテレビ大阪が放送したのであれば、当然サンテレビを見られてしまうだけでなく、サンテレビと同じことやっているなら、わざわざテレビ大阪のためにアンテナを建てる必要はないか…。と思われてしまう危険性があったため、非常に厳しい決断を迫られました。
サンテレビ・近畿放送と絶縁することに
その結果、テレビ大阪は、送信アンテナ位置選びさえうまく行けば、神戸市・京都市の人口集中部をカバーできる見込みがあったため、それまで、12chと共同制作やニュース素材交換など、ネットワークに近い状態であった、神戸のサンテレビと京都の近畿放送との友好関係を、見直すこととなったのです。簡単に言えば、一方的な絶縁…です。
テレビ大阪の開局からしばらく経った後、12chから内容は違っていたものの、絶縁状をたたきつけられた近畿放送とサンテレビ。
特にサンテレビとは完全な絶縁に
近畿放送は、その後もニュース素材交換や、競馬中継の相互乗り入れ、また、どうしても京都でCMを流したいというスポンサーの意向のある番組についてのネット関係を続けていますが、サンテレビとは、テレビ大阪開局後しばらくの猶予期間が経過した以降、全くの絶縁状態となっています。
ただ神戸市が提供に入っていた「デーブのフライデードリーム」という5分番組や、昭和天皇崩御時のネットなど、例外的なものは非常に少ないですがあります。
その他の3局、びわ湖放送、奈良テレビ、テレビ和歌山とはテレビ大阪のエリアが被らないことから、それまで同様協力関係を続けることとなりました。
恩を仇で返されたサンテレビ

未来永劫どんなに困ろうとも、テレビ東京に頭を下げることはないでしょうね…



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