13.大阪の今 おでかけレポ~全国・海外~

路面電車満喫のはずが寂しい気持ちになるマークのバスが...阪堺電車上町線

記事公開日:2008年7月7日 更新日:

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 トッピーネット開設12周年特別企画、名古屋からちょっと遠出の大阪レポートです。

 これまで私は、大阪へ遊びに行くとなると、やはりどう考えても大阪は名古屋よりも都会なわけで、大阪のアーバンな部分を感じるスポットへ訪れることが多かったものです。朝日放送新社屋なんかは、まさにそのアーバンでセンスのある大阪を見せつけられたわけですが、今回は打って変わって、ノスタルジックな大阪を感じようと思います。

 郷愁漂う大阪を...ということで、コーディネーターをお願いした友人に、JR天王寺駅へと案内されてやってきました。近鉄百貨店など大きなビルが立ち並び、片側3車線の道路を多くの車が行き交います。かなりアーバンなんですけど...。

いきなり始まる路面電車

 JR天王寺駅と地下鉄天王寺駅、そして近鉄大阪阿部野橋駅は隣接していて、徒歩で乗換えが可能です。駅の名前も違い、阿倍野区と天王寺区と行政区も違っていますが、JRと地下鉄と近鉄の駅は、同一のターミナルとして考えられています。ちなみに、近鉄阿部野橋駅のビルには近鉄百貨店が入っているのですが、このビルには建て替え計画があり、計画では高さ300メートルの日本一高いビルになる予定です。

 そしてもうひとつ。近鉄百貨店の西側にひっそりと、かつ道路の中央に堂々と存在しているのが、阪堺電車(阪堺電気軌道)の「天王寺駅前駅」です。

 阪堺電車は、ここから南へ伸びる「あべの筋」を路面電車として走ります。今でも唐突に現れる印象を受けますが、近鉄のビル建て替え計画が実現すると、高さ300メートルのビルの横を路面電車が走るという、コントラストがまぶしすぎる風景が繰り広げられることになります。

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さっきまでの都会な風景が嘘のよう

 あべの筋は、近鉄前交差点を起点に南へと伸びていてるのですが、阪堺電車上町線も同様で、その交差点が起点となっています。駅は道路の中央にあるため、歩道橋から降りて駅に入る格好になります。天王寺駅前駅のホームに立ちますと、あべの筋の西側には高い建物が少なく、アーケードの商店街が見られ、歩道橋を下った瞬間、まるで昭和にタイムスリップしてしまったかのような印象を受けます。

 しかし、そんなアーケードなどにも、どうやら再開発工事の手が入っているようで、ひょっとしたらしばらくすると、東西を高層ビルに囲まれる路面電車の駅になるかもしれません。

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大阪で唯一の路面電車

 名古屋ではもう何十年も前に廃止されてしまい、最近では惜しまれつつも岐阜で廃止されたことが記憶に新しい路面電車ですが、この阪堺電車は、大阪で唯一の路面電車として運行を続けています。

 路線は「上町線」と「阪堺線」。途中の住吉駅でクロスします。天王寺駅前駅から発車するのは「上町線」です。住吉公園までの4.6キロの区間です。

 阪堺電車は1980(S55)年に発足した会社ですが、それまでの生い立ちはかなり複雑です。最初に開通したのはこの上町線で、1900(M33)年9月に馬車鉄道として開通、その後旧南海鉄道に合併され、戦時下には近鉄となり、戦後は新しく発足した南海鉄道へと引き継がれ、阪堺電車発足時に独立しているのです。

 まずは天王寺駅前駅から、住吉駅まで乗ってみることにします。

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車両もおもいっきり昭和

 駅にやってきたのは、いかにも歴史を感じさせる昭和37年製のモ351。ワンマンカーとなっていて、乗車時には切符を買ったり、整理券を取ったりということはありません。乗務員室の横には、バスのような運賃箱が設置されています。

 料金表示を見ますと、大阪市内および堺市内での1回乗車は200円。両市にまたがる場合と、住吉・我孫子道で乗り換える場合は290円という、わかりやすいような、わかりにくいような不思議な体系です。

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 発車時刻になりました。46年前に作られた車両に乗って、いざ出発です。しばらくはビルの合間の幹線道路、あべの筋を走り抜けていきます。岐阜市の路面電車を思い出しながら乗っていると、駅の安全地帯の立派さに目が行きます。

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専用軌道になったり路面電車になったり

 松虫駅からは、道路を離れて専用軌道になります。と言っても、スピードアップするわけでもなく、ゆったりのんびりと走ります。いかにもチンチン電車という感じで、頻繁に駅があり、目の前の踏切を子どもたちが渡って行きます。鉄道用の信号は全て黄色になっていて、運転士さんは細心の注意を払いながらの運行です。

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 東天下茶屋駅を過ぎると、再び道路と合流します。と言っても、先ほどのあべの筋ほどの道路ではなく、細めの道路。線路の外側にはそれぞれ片側1車線しかないのですが、そこに路上駐車の車があったりして、自動車は線路の上を走らないと進めないような状況も見受けられます。

 まさに電車と自動車が共存しています。こんな環境でも路上駐車をするあたりが、さすが大阪。

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駅舎もすごい

 駅は基本的に、道路上にある安全地帯なのですが、姫松駅には道路の端に駅舎と言いますか、待合休憩所があります。この建物がすごい。まさに昭和。戦前を舞台にした映画にでもでてきそうな佇まい。思わず見とれてしまいます。

 この駅舎の前で、いろいろな物語が繰り広げられてきたのでしょうね。実際に戦前からあった建物かどうかはわかりませんが、それこそ、息子を戦場に送り出す親御さんの姿なんてものを、勝手に想像してしまいます。

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乗り換えの仕方がわからない...

 電車は住吉駅に到着しました。私たちはここで降りて、阪堺線に乗り換えたいのですが、そのルールがよくわかりません。運転士さんに聞きますと、ここで290円払って、整理券を受け取って乗り換えてくださいとのこと。

 290円をバスの運賃箱のような箱に入れます。すると運転士さんが手動で、これまたバスの整理券のようなものを手渡してくれました。これで阪堺線に乗ることができます。もちろん、IC乗車券など使えるわけがありません。ここは昭和です。

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鉄道がクロスそして自動車も

 住吉駅の降車場で降りて、車両を見送ります。しかしそれにしてもこの上町線と阪堺線のクロスはすごい。何がすごいって、阪堺線は路面電車でして、さらにそこに専用軌道の上町線が交差しているのです。ですから踏切といっても遮断機はなく、信号機で二方向の鉄道と車両が制御されているのです。もちろん電線はもう、こんがらがるんじゃないかってくらいに上空を覆っています。

 交差するチンチン電車を眺めながら、懐かしい空気を感じるとともに、遠くまで旅行に来たもんだと、感慨深く思いながらカメラを構えたそのとき...。

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そのマークはかつて…

 カメラのファインダーに入ってきたのは、岐阜で路面電車を運行していた名鉄の「M」マーク。

 なぜ?と思ったらそれは、名鉄グループの知多バスでした。住吉駅はその名のとおり、住吉大社に隣接した駅でして、どうやら知多バスは、その住吉大社にツアー客を連れてやってきたようでした。

 大阪まで来て、路面電車を満喫している最中に、名鉄のマークを見るとは…。岐阜を思い出します。

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 阪堺電車は上町線の方が歴史が古いのですが、もうひとつの路線、阪堺線の方が路線も長く、社名にもなっているとおりメインです。住吉駅で阪堺線に乗り換えて、さらに路面電車を満喫します。まずは阪堺線の終点である浜寺駅前駅へと一旦向かって、次回はそこから引き返しながら街並みを眺めてみたいと思います。

関連情報

阪堺電車

取材協力

KAZ Communications

阪堺電車天王寺駅前駅(大阪・阿倍野区)

阪堺電車天王寺駅前駅

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