NAGOYA REPORT 名古屋外食産業事情特集

異業態にチェンジ!進出そして名古屋地元の居酒屋チェーン・名古屋は外食激戦区

記事公開日:2006年1月14日 更新日:

 10回に渡ってお送りしてきました名古屋の外食産業シリーズ。最終回の今回は、名古屋に本拠を置く和食チェーンと、居酒屋チェーンを見て、最後に結論付けてみます。

とんかつからイタリアンへ...

 名古屋といえば味噌カツ。味噌カツのお店というとその発祥のお店でもある「矢場とん」を思い浮かべる方が多いと思うのですが、矢場とんは名古屋中心部に 3店舗、郊外に1店舗、そして東京銀座に1店舗を構えているのみで、いわゆるロードサイドの外食チェーンとは言いがたい存在です。ではまずは、名古屋でかつのロードサイド店といえばここと言われた、とんかつ知多家からご紹介するのですが...。

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▲最近少なくなってきたとんかつ知多家。

とんかつ知多家

 知多家は味噌カツもあるとんかつ店として愛知と岐阜に計15店舗を構えていたのですが、近年は店舗の閉鎖が相次いでいて、現在は8店舗という状態になってしまいました。しかし知多家自体が縮小しているわけではなく、なんと知多家はデザート、イタリアンレストラン部門に進出。「パステル」「パステルイタリアーノ」の展開を始め、東海3県に23店舗も出店しています。

 さらにそれを上回るペースで首都圏への出展を果たし、パステルは順調に店舗を増やしています。ずっと続けてきたとんかつ。でも儲からないのであればと見切りをつけて、それまでと全く業態の異なるイタリアンレストランにがらっと変えてしまうあたり、いかにも名古屋の企業です。潔ささえ感じます。

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▲パステル名物なめらかプリン。写真は名古屋コーチンプリン。

漬物屋さんが和食外食に進出

鈴波

 名古屋の地下街で、お昼になると大行列ができるのが鈴波の各お店です。日替わりの鈴波定食は1,029円。定食のメインは魚の味淋粕漬けを焼いたものです。シンプルな定食。一体何がそんなに人気なのかといいますと、この鈴波、名古屋名物でもあるあの細長い大根の漬物で有名な守口漬の「大和屋」が経営しているお店で、大和屋の味淋粕を使っているためにその味が絶妙なのです。名古屋中心部の地下街の他に、中部国際空港にも出店しています。

 もちろん定食に付け合せされる漬物は守口漬。さらにお米は新潟産天日干しのコシヒカリ。赤だしは宮内庁御用達と素材にこだわっています。元々贈答品店の一部が飲食スペースになっているお店が多く、席数が少ないうえに、口コミで人気が広がりいつも主婦の大行列が見られます。

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▲日替わりの鈴波定食。守口漬がついてきます。

菜めし田楽鈴の屋

 以前紹介しました、カジュアルレストラン・キャッツカフェの親会社、ジーコミュニケーションが運営するとうふ料理店が鈴の屋です。赤味噌たっぷりの田楽を味わうことができ、湯葉料理も楽しむことができます。あの味噌田楽の味は一度食べたら忘れられない芳醇な味わいです。味噌の味の濃さととうふが絶妙にマッチします。

 あの濃さは名古屋ビギナーには少し抵抗があるかも。でも白味噌のとうふ田楽なんて名古屋っ子的にはあり得ません。

美濃の郷

 岐阜県の多治見、可児、各務原、そして愛知県の小牧とエリアを絞って和食店を展開しているのが「美濃の郷」です。下呂市にあるドライブイン飛山が運営するお店で、いつ行っても込んでいるイメージがあります。釜飯、うどん、寿司を中心とした定食メニューが多く、雰囲気としてはサガミやえちぜんと変わらないのですが、ここの特徴はその量です。

 極端に多いわけではありませんが、ボリューム感はあります。独創的なメニューも多く、七色に輝くお寿司「レインボーロール」には度肝を抜かれました。しかも4店舗それぞれに独自メニューがあるなど遊び心のある和食店です。

居酒屋もやっぱり名古屋オリジナルがいいね?

 では最後に、居酒屋風味の入ったチェーンをご紹介します。

風来坊

「手羽先の元祖は風来坊です」という、社長が自信満々に記者会見するテレビコマーシャルで、名古屋では有名な鳥料理をメインとした居酒屋チェーンです。何といっても名物はその社長の力説どおり手羽先です。こしょうたっぷりの味は一度食べたら病みつきになります。デパートの地下にはお持ち帰り専門店がありますし、各店舗の店頭でもおみやげだけを購入することもでき、家で味わうこともできます。

 かつては風来坊というと鳥料理しか無い居酒屋というイメージでしたが、近年はいろいろなタイプの風来坊が登場し、各お店でメニューが異なっていて、創作料理を出す店舗もあります。持ち帰り店も含めて愛知県に49店舗、岐阜県に7店舗、三重県に5店舗あるほか、北海道や九州、埼玉、茨城にもポツポツとあり、ロサンゼルスにも4店舗を構えています。名古屋の味の濃さを体感するには最適なお店です。

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▲お持ち帰りも可能な風来坊の手羽先から揚げ。

昭和食堂

 ここ最近、名古屋で勢力をぐんと伸ばしているのが昭和食堂です。その名のとおり、昭和時代をコンセプトとした居酒屋で、愛知県に30店舗、岐阜県に9店舗、三重県に7店舗を展開しています。メニューはもちろんのこと、店内はホーロー看板や裸電球の電柱など昭和の路地裏が再現されています。路地裏といったら駄菓子屋さん。

 懐かしい駄菓子も食べることができます。昭和を生き抜いてきた人には懐かしく、そして昭和を知らない人には新鮮に映る、古き良き昭和の空間で時間を過ごすことができます。

 この昭和食堂、昭和を再現というコンセプトが大当たりした実績を生かし、続いて時代劇の世界を再現した「台所奉行」という業態が登場しました。江戸情緒溢れる店内。現在は3店舗ですが、こちらも爆発的ヒットとなりますかどうか。

養老乃瀧

 北海道から沖縄まで全国に展開している養老乃瀧。養老は名古屋から北西へ27キロ行ったところにあるので、養老乃瀧は地元の会社かと思って調べてみたら、全然名古屋とは関係がありませんでした。でも、店名の由来はやはり岐阜県養老町の「養老の滝」なのだそうです。

名古屋は超激戦区・名古屋から全国へ

 名古屋だけではないとは思いますが、ここ10年名古屋では外食チェーンが登場しては消えというペースが段々と速くなり、刻一刻と勢力図は変わっています。ここまでお読みいただいた方はおわかりだと思いますが、名古屋は地理的に関東と関西に挟まれているために、両方に本拠を置く外食チェーンにすぐ市場を狙われます。

 しかし名古屋は独特な食文化を育んでいるために、ただ進出しただけでは決してうまく行かず、名古屋っ子の味覚にあわせてメニューを変化させることがとても重要なのです。

 そしてそれらの進出を迎え撃つ、名古屋を地盤とする外食チェーンは、アンデルセンやとんかつ知多家のように、いざとなればがらっと業態を総入れ替えしてしまうような勢いで、フレキシブルに対抗して生き残っているという様子が手に取るようにわかります。逆にそれができないと、かつては名古屋で強大な力を誇ったアトムが、関東資本のコロワイドに買収されてしまうという結末になってしまうのです。

 名古屋はこのように、他の地方からの進出が多く、地場にもたくさんの外食チェーンがあるのですが、それほど市場規模が大きいわけではないので、常に激しい戦場となっています。特に90年代後半、そして2005(H17)年は大変革の年となりました。

 もし、あなたが名古屋でロードサイドのお店に入って「おいしいな」と思ったとしても、そのお店はいつまでそこにあるのかわかりません。ですので、あるうちに何度も足を運ぶことをオススメします。

 そして名古屋を本拠とするチェーンが、意外と関東や関西、全国に進出していることもお分かりいただけたと思います。あなたも知らず知らずのうちに、いつの間にか名古屋の味に慣れさせられてしまっているかもしれません。

協力:yueさん

※以上は2006/01/14にメールマガジンとして発行したものです。


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