NAGOYA REPORT 愛・地球博開幕前レポート

リニアにシャトル?万博会場へのアクセスもアトラクション

記事公開日:2005年2月17日 更新日:

 前回まで、愛・地球博の会場の見どころをご紹介してきましたが、今回はそれ自体が見どころともなる、愛・地球博の会場へのアクセス手段、会場内の移動手段をご紹介します。 愛・地球博のメイン会場は愛知郡長久手町の「長久手会場」、そして瀬戸市にはサブ会場の「瀬戸会場」が置かれ、2会場制になることはお伝えしました。

長久手会場へのアクセス

 まずは長久手会場へのアクセス方法です。長久手会場の場所には、かつて「愛知青少年公園」という総合運動公園がありましたが、主に自動車で利用することを前提として作られた公園であり、広大な駐車場があるかわりに、公共交通によるアクセスはバスが少し運行されていただけで、鉄道などはありませんでした。

 当然、万博となれば自動車で来場者を受け入れるわけにはいきませんし、交通機関は路線バスだけというわけにはいきません。

鉄道アクセス

リニモ(愛知高速鉄道東部丘陵線)

 そこで建設されたのが、名古屋市営地下鉄東山線の終点である「藤が丘」と「万博会場」、そして愛知環状鉄道「万博八草」駅を結ぶ、日本初の磁気浮上式リニアモーターカー「リニモ」です。磁気浮上式のために音や振動が少なく、磨耗しないために保守費用も安く済みます。

 また、自動運転システムを導入していて無人運行となり、他の鉄道に比べ人件費も抑えることができます。国内では既に都営大江戸線がリニアモーターカーとして走っていますし、カナダのバンクーバーではリニアで自動運転システムの「スカイトレイン」がありますが、リニモには決定的な違いがあります。

 私は一度そのスカイトレインに乗ったことがあります。確かに快適です。しかし無人運行であるために、車内での犯罪に遭ったりするのではないかという不安感が拭えませんでした。バンクーバーでリニアモーターカーが開通したのは1986(S51)年と結構前のことで、当時開催された「バンクーバー交通万博」の目玉として、そして来場手段として作られたものでして、要はリニモと全く同じ経緯で作られたものでした。

 カナダに比べ20年遅れのリニモ。もちろんそのままでは無く進化しています。リニモには車輪がありません。常時磁器浮上式のリニアは日本初登場なので、このリニモに乗ること自体も万博の楽しみと言えます。ところがです。

 リニモの正式名称は「愛知高速鉄道東部丘陵線」。愛知高速鉄道は愛知県などが出資する第3セクターで、万博終了後ももちろん残されます。そのために万博の輸送力よりも、将来の採算性を重視しており、3両固定編成となっています。

 この輸送力は地下鉄東山線と大きな開きがあり、もし地下鉄とリニモという交通手段で、どっと万博への来場者が訪れた場合、藤が丘で最大2時間待たされることになってしまいます。そのために万博協会では、リニモでの万博来場を控えるようにと呼びかけています...。でも、それって無用な心配のような気も...。

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▲リニモ万博会場駅は北ゲート直結。

エキスポシャトル

 リニモに乗るなというのであれば、どうやって会場に行ったらいいのでしょうか。協会では愛知環状鉄道の利用を推奨しています。愛・地球博の開催期間中は、JR中央線の名古屋駅を出発した列車が、高蔵寺駅で第3セクターの愛知環状鉄道の線路に乗り入れ、万博八草駅まで走る直通列車「エキスポシャトル」が運行されます。

 このエキスポシャトルに乗ると、万博八草駅からシャトルバスで瀬戸会場、もしくはリニモで長久手会場へと行くことができます。ただし問題があるのです。地下鉄とリニモを乗り継ぐと名古屋駅から長久手会場まで630円40分。エキスポシャトルですと万博八草駅まで780円44分となる上に、長久手会場へ行こうとするとさらにリニモの160円がかかります。

 愛・地球博のメイン会場は長久手会場です。誰がどう考えても、エキスポシャトルを利用したいとは…?

 そこでJR東海と愛知環状鉄道はエキスポシャトルについて、名古屋駅から万博八草まで往復1,300円という、通常よりも3割安い切符を発売することにしました。片道650円ですから、リニモを利用するのとそんなに変わりませんし、この特別切符には長久手会場内の移動手段「キッコロ・ゴンドラ」の200 円割引券がついていますので、実質リニモを利用するよりも安くなります。

 この切符を購入するには万博入場券提示の必要があります。万博来場者以外を優遇する必要は無いからです。もちろんこの切符には前述のとおり、藤が丘駅に人が溢れないようにという狙いがあるのですが、もうひとつ狙いがあると思われます。それは瀬戸会場への誘導作戦です。

 前回までご紹介したとおり、今回の万博の目玉はメイン会場の長久手会場に集中していて、一歩間違うと瀬戸会場は閑古鳥ということになりかねません。協会もそれを危惧しているのでしょう。万博八草駅は瀬戸会場に近く、リニモで長久手会場へと直行させるのを避け、なるべく万博八草駅へと人の流れを作り、それを瀬戸会場へ向かわせたいという思惑があるのではないでしょうか。

 万博八草駅からの無料シャトルバス運行についても、瀬戸会場へは常時出ることが決まっていますが、リニモとの並行運行となってしまうという理由もあり、長久手会場へのシャトルバス運行は未定となっています。

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▲愛知環状鉄道。写真は万博八草駅のおとなり山口駅。

シャトルバス

自動車アクセス

 シャトルバスについては、この愛知環状鉄道万博八草駅-瀬戸会場間のほか、名鉄瀬戸線尾張瀬戸駅-長久手会場間、名鉄豊田線黒笹駅-長久手会場間にて駅シャトルバスが運行されます。他に自動車で来場される方のために運行される、駐車場シャトルバスがあります。有料駐車場は名古屋空港、尾張旭、長久手、ながくて南、三好、藤岡の6ヶ所に設置され、そこから無料のシャトルバスが長久手会場へと運行されます。

 駐車料金は名古屋空港が1日2,500円、その他が 3,000円と高額なため、たぶん非公式の民間駐車場が発生すると思いますが、万博会場周辺には民家も無いため、発生するとしたら公式駐車場の周辺になるでしょう。

 しかし、無料シャトルバスには正規の駐車場利用者しか乗ることができません。シャトルバスに乗るには駐車券が必要です。さすがです。あと、自転車と原動機付自転車については会場に駐輪場が設置されます。

イラスト
▲理想は理想。現実は現実。

長久手会場内の移動手段

 変わって会場内の移動についてですが、まずは長久手会場-瀬戸会場間の移動手段についてご紹介します。長久手会場から瀬戸会場へは、万博会場駅から万博八草駅へとリニモに乗り、そこでシャトルバスに乗り換える...となると面倒で誰も行かなくなってしまうことは目に見えています。

 そこで建設されたのがゴンドラです。その名も「モリゾーゴンドラ」という、まさしくスキー場によくあるゴンドラです。やはり瀬戸会場へは、人をどんどん向かわせなければならないため、このモリゾーゴンドラはなんと無料です。そのかわり冷暖房はありませんので、夏は灼熱を体感できることでしょう。

 う~んエコロジー。このゴンドラ、途中住宅街を横断するために、なんと住宅街に差し掛かると窓が曇るという機能がついているそうです。カップルはその間がチャンスです。

 また、ゴンドラの他にもトヨタと日野自動車が開発した、燃料電池とニッケル水素電池を動力源とした燃料電池バスが会場間を運行します。このバスが排出するのはなんと水。二酸化炭素や窒素酸化物は一切排出しません。こちらも先ほどの思惑から無料です。

 さて、モリゾーゴンドラと同じタイプのゴンドラが長久手会場内にあります。こちらは長久手会場の北と南を結ぶ「キッコロゴンドラ」です。

 こちらには何の思惑もありませんから、うすうす有料だとは思っていましたが、発表された運賃はなんと600円。

 協会のコメントですが、「長久手会場と瀬戸会場が一体会場として連携するための移動手段であることを重視しモリゾーゴンドラは無料とした。キッコロゴンドラについては過去博の運賃設定・利用状況を参考とした。」とのことです。距離のあるゴンドラが無料で、 会場内の移動ゴンドラが600円...。意地でも赤字にできないという協会の姿勢が伺えます。

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▲キッコロゴンドラ。1回600円...です。

 他にも長久手会場内には最新の移動システムがあります。約2.6キロに渡って、こいの池周辺をぐるっと一周するグローバルループ上を3両のトラムが走ります。広い会場内を移動するのが大変な、小さな子どもやお年寄りに優しくということで作られました。運賃は半周500円。しかも大人も子どもも500円です(幼児・障害者は300円)。バッテリー駆動で環境にも優しいとのことですが、お財布には優しくありません。

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▲IMTS北ゲート駅です。無人なのにバスが隊列走行します。

 最後に、トヨタが最新の技術を駆使し、次世代の新交通システムとして開発したIMTSをご紹介します。IMTSは圧縮天然ガスを使用した大型低公害バスで、長久手会場の北ゲート、バス停、西ゲート、EXPOドームを結ぶ軌道の上を走ります。普段は自動の無人運転となります。

 何が最新の技術なのかと言いますと、3台が繋がれていないにもかかわらず、電子的に編成を組み隊列走行をするのです。これは乗ってみたいですよね。しかし、そんな最新技術ということは、トラムやゴンドラよりも運賃が高いのでは...と不安に思われるかもしれません。

 ところがなんと今回は、トヨタがその最新技術を多くの人に体験して欲しいと全面協力、大人200円、子ども100円という低運賃を実現したのです。さすがトヨタ。

 トヨタの燃料電池バスに、トヨタの最新交通システム。愛・地球博はまるでトヨタの最新技術展示会ですね。「トヨタ万博」でも良かったんじゃないですかね。もちろんですが、会場内に日産自動車による移動手段やパビリオンは存在しません。


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