トッピーネットでは以前、名張市について考察したことがありました。名張市は三重県ではあるものの大阪のベッドタウンとなっていて、いくつか名古屋資本のお店も見受けられますが、関西資本のお店が多く立ち並び、関西文化が色濃い地域です。そんな、関西が薫る街にやってきたのですから、せっかくだから関西な食事をしようということで、これまた「お好み焼道とん堀」という、いかにも関西なお店に入ることにしました。
しかしこのお店、ただのお好み焼き屋さんではありませんでした。驚愕のメニューと驚愕の真実が。
タヌキなお好み焼き道とん堀
「お好み焼道とん堀」。店先には大きな信楽焼と思われるタヌキが。このお店ではタヌキを、商売繁盛、魔除け、無病息災といった福をもたらせてくれる「招福たぬき」としてトレードマークにしていて、ドリンクバー(294円/平日昼間は199円)のグラスにもタヌキが描かれています。タヌキの前掛けに書かれた「福生れ道とん堀」の文字。この時はその意味に気付きませんでした。まさかそんなオチがあるとは...。
同席した友人は広島焼きを注文。広島焼きと言えば生地を薄く焼いて、その上でキャベツを蒸して、焼きそばをのっけて、最後に卵を半熟状態に焼いて乗せるという難しいメニュー。このお店は基本的に自分で焼くスタイルとなっているのですが、「ご相談ください」という張り紙がしてあったので、友人は店員さんに「焼いてください」と頼みます。すると、その女性店員はちょっと困った顔をしてバックヤードに。
しばらくして、やってきました。店長さんが。
広島焼きは難しい!
店長さん曰く、「この広島焼きはウチのお店で一番難しいメニューなんですよ~」とのこと。頼んでよかったと友人も一安心。やはり広島焼きは難しい。生地とは別に焼きそばを焼きます。すると店長さんは薀蓄を披露。「広島の人の前で広島焼きと言うと怒られるんですよ。広島ではこれがお好み焼きですから。」
私も確か、そんな話を聞いた記憶がありました。以前、広島のお好み焼き食べたさに広島まで行ったことがありましたが、広島では「広島名物お好み焼き」と書かれており、「広島焼き」の文字はありませんでした。
みっちり研修でマスターした店長
店長さんの話は続きます。「僕らは全部のメニューが作れるように、1ヶ月半研修するんですよ。そのうち1ヶ月がこの広島焼きの研修ですね。」
なるほど。店長さんが作れないのでは困ってしまいますものね。道とん堀という店名だけに、本場の大阪でみっちり研修するんだろうなぁ~と思った矢先、店長さんから予想もしない一言が。
「東京に研修センターみたいなところがありましてね。そこで1ヶ月半やるんです。」
ん...?東京...?
広島焼きが完成しました。
福生の道とん堀だった
ちょ、ちょっと...。「お好み焼道とん堀」なのに、本社は東京なの?と思って調べてみたらこのお店、東京都福生市に本社があり、北海道から熊本まで、東日本を中心に出店しているのです。関西な味を食べるつもりが...。ちなみに調べたら我が家のすぐ近くにもあるではありませんか。これはやられた。
ということはまさか...。そう、まさかです。「福生れ」は「福生」とかけてあったんです。
お好み焼きの香りじゃない!
さてさて、一方私が注文したのは、メニューに一番のオススメと書かれていた「ぶっかけデミ玉きのこ」です。もう、その名前からしてかなりのアドベンチャーなわけですが、オススメな以上は味に自信があるのだろうということで、注文しました。
生地にはチーズがたくさん。明らかに何かが違います。ソースはもちろんデミグラスソース。そこにきのこと生卵が落としてあります。
生地をこねて鉄板に。多少チーズが溶けてネバネバするものの、至って普通のお好み焼き。しかしです。ソースをかけた瞬間に「普通」が消え去りました。
デミグラスソースをかけます。見た目は普通のソースと変わらないのですが、鉄板にソースが触れた瞬間、デミグラスの香りがふわーんと。
「この香りは知ってるけど、お好み焼き屋さんで嗅ぐ香りじゃない!」
同席した皆がそう言います。そんなデミグラスソースにかつおぶしをかけてできあがり。かけるかどうか迷ったのですが、メニューの写真を確認したらかかっていたので、かけてみました。
ぶっかけデミ玉きのこを、ちょっと恐る恐る口に運びます。
「あれ!おいしい!」
なんとこれがおいしいのです。
でも...。そう、でもです。これは明らかにお好み焼きではありません。食感はそうなのですが、もう全く別の食べ物です。しかし抜群においしい。クセになるかも...。
デザートには「バニラアイス今川焼き付」のメープルシロップかけを注文。そこにはタヌキの絵が描かれた今川焼きが。
ピンと来た方もいらっしゃると思いますが、これを「今川焼き」と呼ぶのはまさに関東ですね。大阪では「回転焼き」、名古屋では「大判焼き」ですものね。まあ、はっきりと地域で呼び名がわかれているわけではありませんけれども、大阪や名古屋で今川焼きと呼ぶ人はほとんどいないでしょう。
関西文化の名張だからと、関西なお好み焼きを食べるつもりが、道とん堀という名でありながら、バリバリ関東資本の、しかもお好み焼きと言えるかどうかもわからない食事となってしまいました。
まるで、タヌキに化かされたような晩御飯でした。
でも、ぶっかけデミ玉きのこは美味しかったからいいや。今度、近くの店にも行ってみます。デミ玉オススメ!
関連情報
・道とん堀