広告

なぜ東海地方にならないといけないの?名張市

広告

写真

 三重県の各都市探訪シリーズ。前回の鳥羽市に続いて今回は名張市をお届けします。名張市は三重県でありながら、距離的にも文化的にも大阪に近く、関西文化が流入している上に、実際に大阪のベッドタウンとしてここ数十年は発展を遂げてきています。

 今回は地理的な面から名張市と関西について考察したいと思います。名張市と関西の間には、意外にも大きな壁が立ちはだかっていたのです。

飛び交う双方からの電波

 名張市内を車で走ります。カーステから流れるのは開局したばかりのFMなばり・なばステ。関西文化が流入している名張の人は、放送に求めるクオリティも高いはずです。なぜなら、名張界隈では大阪、名古屋、そして地元三重の大手FM放送が聴けるわけですから。

 さて、名張という街が一体どういう場所にあるのかを見渡すために、名張市の西側にそびえる茶臼山山頂へと向かいます。駅周辺の新興住宅地街を抜けると、周囲は広大な田園風景へと姿を変えます。

写真

 茶臼山は、三重県名張市、奈良県山辺郡山添村、宇陀市にまたがる標高536メートルの山で、ここから名張市内に向けて、テレビやラジオの電波が発射されています。しかし、その発射されている電波は、三重と名古屋の放送です。なぜなら、いくら関西文化が流入していて、大阪のベッドタウンとなっているとはいえ、名張市は三重県。三重県は中京広域圏という、名古屋の放送区域になるためです。

関西の電波が直接は…

 関西のテレビ電波は、大阪と奈良の府県境にある生駒山から発射されています。ということはこの茶臼山の背後からやってくるわけです。この茶臼山へ来てみてわかったことは、交通利便性や文化的にいくら名張と関西の結びつきが強いといっても、地理的には名張市と奈良県の間に壁があるということです。

背後から飛んでくる関西のテレビ電波は、この茶臼山でシャットアウトされてしまいます。これでは、名張市内で関西に向けてアンテナを建てても、関西のテレビを安定して見るのは難しいということがわかります。

写真

 さて、その問題を解消するために頑張っているのが、先述のケーブルテレビ会社「アドバンスコープ」です。アドバンスコープはこの茶臼山に受信用のアンテナを建てています。そうです。ここで関西に向けてアンテナを建てて、大阪、京都、兵庫のテレビ電波を受信し、それをアドバンスコープの本社に送り、名張市内の各家庭へケーブルを通じて関西のテレビ電波を送り届けているのです。

 そのお陰で、名張市内では関西のテレビ放送を見ることができるのです。

 ちなみに、その受信設備のすぐ横に、FMなばりの送信アンテナが設置されていました。

写真

名古屋の地デジは楽しめるけど…

 この茶臼山からは、名張市側に向けては名古屋の放送電波が発射されています。既にデジタル放送の電波も発射されており、名張では名古屋のデジタル放送を楽しむことができます。そして奈良県側には奈良テレビの放送電波が発射されていて、名古屋のテレビ局と奈良テレビのアンテナが山頂で同居しているという不思議な光景が見られます。

 もちろん、それぞれの放送設備には、違う電力会社から電気が供給されています。名古屋のテレビ局は中部電力、奈良テレビは関西電力です。

 名張市街では、名古屋資本と関西資本のチェーン店が混在する不思議な街並みを見ることができますが、この山頂でも同様のことが起きているというわけです。

写真

地デジ化でエリア是正?

 今問題になっているのは、このアドバンスコープによる関西のテレビ再送信が、デジタル化になると認められない可能性があるということです。といいますか、現時点で認められていません。

 以前にもお話しましたが、総務省はテレビのデジタル移行を機に、放送エリアの適正化を図ろうとしています。エリアの適正化となれば、名張は三重県、三重県は中京広域圏というわけで、名張市では三重テレビとNHK津、そして名古屋の放送見るのが「適正」となります。

 しかし、ケーブルテレビ会社で配信されないのならば、各家庭で大阪にアンテナを向けて、デジタル放送を見れば良いんじゃないの?とこれまで私は考えていたのですが、この地形では、名張で大阪にアンテナを向けても、大阪のデジタル放送が見られるのかどうかは微妙だと思います。この茶臼山がそれを邪魔しそうだからです。

 名張市での関西のテレビ受信は、総務省と茶臼山という二つの大きな壁によって、デジタル化をきっかけにして終わりを告げるのでしょうか。街並みを見ると関西と名古屋が混在しているのに、テレビだけは名古屋に一本化しなければならない。そこにはやはり「利権」があるのでしょう。利権と住民の声のどちらを尊重する結果になるのか。テレビのデジタル完全移行まであと5年。今後も注目していきたいと思います。

追記

※2007(H19)年8月2日追記
CATVの区域外再送信、総務相が容認裁定へ
どうやら認められる方向になりそうです。

※2010(H22)年6月11日追記
アドバンスコープに対し、在阪広域4局の地デジ再送信が認められたとのことです。今後、アドバンスコープ内で再送信方式を決める会議で結論が出た後に、再送信開始の運びになったという情報が入ってきました。

※2010(H22)年06月23日追記
アドバンスコープでの、在阪広域4局の地デジ再送信は、8月1日から開始されるとのことです。

茶臼山(三重・名張市)MAP

名張市 茶臼山

コメントはこちらから

Loading Facebook Comments ...

コメント

  1. nori より:

    今回も思う事を書きます
    名張市が>なぜ東海地方にならないといけないの?
    ですが、いにしえまで遡れば伊賀の国は東海道に属していました。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E8%B3%80%E5%9B%BD
    まぁ、この理論だと東山道だった岐阜県は東海地方でない・滋賀県も近畿地方から除外しなくてはいけなくなってしまいますが〈笑〉
    総務省についてですが、旧態依然な規制に拘る理由はとどのつまりテレビのキー局制度維持にあるのでしょう。
    全国的な情報や文化配信は全て東京に集めて行う、放送区域規制はその末端を担う制度ですから。
    余り詳しくは書きませんが、この制度こそが大阪の地盤沈下を引き起こすと同時に名古屋の製造業集中を促す副作用を引き起こしているのでしょう
    (そう言えば以前に大阪はもちろん名古屋のテレビ局もBS放送免許申請したのに全て却下になってしまいましたしね)
    かつて私が勤務した職場に上野(伊賀)市出身の人がいて「実家では大阪と名古屋の両方のテレビが見られる」と自慢しているのを聞いて少しうらやましいなと思ったものです。
    お役人のエゴで名張市からこの特権(?)が無くなってしまうのならお気の毒極まりないです。
    (悪い例えですが)このままだと名張市は普仏戦争後のアルザス・ロレーヌ地方のような立場になってしまいそうですね。
    アナログ放送が終わってしまう日に、名張市長さん辺りがアルメ先生のように「今日が最後のテレビ放送です」と言って悲しんだりして。
    名張市は色んな手を使って2地域の広域放送が見られるように頑張ってもらいたいですね、これが認められれば放送の規制緩和やキー局制度打破への道筋をつけることになるのだから。
     一方で名古屋マスコミは(万が一)伊賀地域が中京広域圏放送単独受信地域になっても支障が出ないような周辺地域への配慮ある報道や番組作りをしていくべきでしょう。
    今回の件が引き金で三重県を分割を起こさせないためにも
    (2006/05/19 9:50 PM)

  2. トッピー@管理人 より:

    >noriさん
    こんばんは。名張のケーブルテレビ区域外再送信問題は、いろいろな意味が含まれていますよね。伊賀市については、旧上野市やそれ以外の部分についてもまた機会を設けて考察したいと思います。
    (2006/05/23 1:14 AM)

  3. MI より:

    はじめまして。
    読ませていただきました。
    名張市をはじめとした伊賀地域の人達にとって区域外再送信は重要な問題ですね。
    区域外の再送信を認めると再送信をするケーブル会社がどんどん増えてキリがなくなる(実際、香川県のケーブル会社も関西のテレビを区域外再送信している)とか、色々問題があるようですが、個人的には、近畿広域圏の場合ですと、関西との結びつきが強い伊賀地域や福井県の嶺南地域の人には特例的に認めてあげてもいいと思います。
    アドバンス・コープさんには頑張って頂きたいですね。
    ただ、私は伊賀地域は名古屋からの距離の割には結びつきが弱いと思うんです。
    伊賀上野は名古屋駅から関西線で94.5kmと100kmを切っていて、高速では95km・1時間少々と距離的には名古屋と大阪のほぼ真ん中にありますが、関西の影響が目立っています。
    また、名張市は大阪のベッドタウンで距離的にも大阪に近いとはいえ、名古屋にも近鉄特急で1時間25分で行けますが、ここに住む多くの人たちは名古屋を遠く感じています。
    名古屋の求心力が弱いことや文化的にも関西に近いことを考えると仕方ないのかなぁとも思えますが、電車での移動が便利になれば、もうちょっと結びつきが強くなるんじゃないかと考えたりもします;^
    まあ、そのためには名古屋がもっと力をつけなければいけませんね。
    伊賀市はグレーター・ナゴヤ・イニシアティブにも参加していますし、名古屋が大きくなることは、この地域にとっても良いことだと思います。
    名古屋はこのままのペースで伸びつづければ10年、15年後にはかなり大きくなって、人口も230万、240万ぐらいになってるじゃないかと思うんですが、夢物語でしょうかね?笑
    (2006/05/24 1:11 AM)

  4. トッピー@管理人 より:

    >MIさん
    はじめまして、こんばんは。
    確かに、区域外再送信をどこまで認めるのかという線引きが難しいですよね。
    だからこそお役人は「一律禁止」にしたいというのもわかります。
    名張市と伊賀市、そして伊賀でも旧上野市と伊賀町では空気が違いますよね。
    伊賀市は観光地としても魅力ですよね。
    少し前になりますが宿泊していろいろと見てきましたので、
    追々このブログで紹介していきます。
    端的に言うとやっぱり「伊賀は関西」という印象です。名古屋っ子としては。
    (2006/05/25 10:02 PM)

  5. 匿名 より:

    コメント読んでどうしても書きたくなりましたので、もう一度
    >名古屋がもっと力をつけなければいけませんね
    この「力」についてですが、従来的な人口集積や産業求心力強化だけの事を指しているのだとしたら、名古屋圏の広域化は逆に遠のいてしまうでしょう。
    名古屋が周辺地域から本当に「魅力ある”都会”」として見られる(認識される)ためには、今までとは違った思考が必要ではないでしょうか?
     もっと周辺地域との人的経済交流(つまり観光を通じた所得再配分)が一番必要でしょう。
    簡単に言うと名古屋の人がもっと伊賀市の忍者屋敷へ遊びに行ってお金を落としてくるような事をやらないとダメなんですよ。
    周辺地域から人と産業を寄せ集めるだけでは尊敬されない、人とお金と楽しい情報が溢れ出る街こそが、広い地域から関心と憧れを持たれると同時に、影響力が広く行き渡る「都会」の絶対条件です。
    残念ながら、今までの名古屋市は見事にこれとは全て逆をやって来ていた。
    名古屋が目指した『自給自足の強い産業都市』は裏返せば「交流を拒む巨大な田舎」でしかなかった。
     ですので周辺地域への影響力拡大を目指すのであれば農村的な全てを自分の県で賄う発想を棄てる事から始める必要があると思います。
    これは名古屋には未知の分野であり、変えようとすれば相当な苦労があると思いますが、他の都会的な要素の強い街では既に根付いている事でもありますので不可能ではないと思います。
    伊賀地域との関係強化を促進する意味でも
    >伊賀市は観光地としても魅力ですよね。
    >少し前になりますが宿泊していろいろと見てきましたので、
    >追々このブログで紹介していきます
    (勝手にですが)期待しています。
    (2006/05/26 11:26 PM)

  6. 匿名 より:

    伊賀には18万以上の人が住んでいますが少なくとも名張5万、旧上野市・青山町・島ヶ原村併せて1万、少なく見積もってもその6万は関西への通勤者及びその家族と言う状況です。
    例えば通勤に直結する情報として関西私鉄のスト情報や西名阪道・阪神高速の渋滞情報は名古屋局から関西局と同レベルに提供されるんでしょうか?
    放送は企業の収益を得るための事業としてだけでなく、公共サービスとしての側面がありますよね。
    それを最低限保障する事を考慮しての東海波統一とまで考えてる官僚は少ないでしょう。
    関西波を見たいというのは我儘ではなく多くの住民の基本的生活権なんですよね。
    (2006/07/16 11:12 PM)

  7. まさ より:

    はじめまして
    名張市民として、この案件を非常に心配しているひとりですが、見通しが明るくなってきたようです。アドバンスコープに対し、一日も早い関西波地デジ再送信を切望しております。
    毎日新聞 2008年3月14日 東京朝刊
    ケーブルテレビ:近県の地デジも放送可--総務省案
    (2008/03/22 1:47 AM)

タイトルとURLをコピーしました