偕楽公園(三重・津市)
津の美味しいものを食べよう!ということで、ここまでいちご大福と天むす、そして前回は平治せんべいをご紹介しましたが、まだ食べたいものがあります。
今年の1月に津にやってきた際、その話を津で生まれ育った大学時代の後輩に話すと、「津に来たのにカレー焼きを食べなかったんですかー?」と不覚にも指摘されてしまったので、続いてはそのカレー焼きと、かつては三重テレビでCMがよく流れていたとね菓子館の「梅干」という和菓子を味わおうと思います。せっかくなのでそれらを津の名所で食べようというわけで、買い込んで偕楽公園へと向かいました。
快楽公園ではありません
相方に「偕楽公園へ行こう」と言うと、津に疎い岐阜県民である相方は、「かいらく」って一体どういう字を書くどんな公園なの?と不思議そうに聞いてきます。確かに、「かいらく公園」という音だけを聞くと、「快楽」という字面を思い浮かべてしまいますよね。決してそんな官能的な欲望を満足させる公園ではありません。
偕楽公園は三重県庁のすぐ西側にある6.5ヘクタールの公園で、もともとあった丘陵の斜面に木を植え石を置き、津藩第11代藩主の藤堂高猷(たかゆき)が安政年間(1854-60)に別荘として整備したことに始まります。別荘の名は「御山荘」。丘陵は結構起伏があり、都心の公園とは思えない風情です。
さて、なぜ偕楽公園と呼ばれているのかといいますと、それはその藤堂高猷に由来しています。高猷の俳号が「偕楽園」だったことから偕楽公園となったのです。確かに起伏が激しいので死角となる場所はありますが、この公園では大っぴらに快楽を求めていいというわけではありませんので、ご注意ください。県庁だけでなくすぐ南には三重県警察本部もありますから、快楽を求めているとすぐに警察が飛んできますよ。
偕楽公園は桜の名所としても知られており、お花見のシーズンは大変賑わいます。ソメイヨシノが約1,500本植えられているほか、つつじも約1,000本植えられており、3月下旬から4月の中旬頃までは茶店や露店が立ち並びます。
ではその偕楽公園で津の名物をふたついただきます。
高田高校の生徒なら思い出のカレー焼き
まずは「カレー焼き」。カレー焼きといえば、高田高校近くの東林堂さんが有名で、高田高校の生徒はよく食べていて、まさしく高校時代を思い出す味なのだそうです。先述の大学時代の後輩はその高田高校出身です。その東林堂の息子さんがその味を継承して開いているお店が「さかえや」さんです。さかえやはこの偕楽公園から県庁をはさんで反対側、線路の東側にあります。
さかえやを訪れてびっくり。行列ができているではありませんか。後輩の言う「津に来たのにカレー焼きを食べなかったんですかー?」は、やっぱり本当だったのですね。しかも驚くべきことに、前に並んでいる人たちは20個とか30個と、大量にカレー焼きを買っていくではありませんか。私たちはたった2個…なので、なんか申し訳ないなーという気分になってしまいましたが、店のご主人は逆に「お待たせして申し訳ないね」と恐縮されていました。
「すぐに食べる?」と聞かれたので、「はい」と答えたところ、紙袋にカレー焼きを入れて手渡されたのですが、これが熱い!まさに焼きたてです。
すっごい具沢山
ではいただきます。見た目は中にあんこでも入っていそうな、いわゆるおやきの生地なのですが、これが結構しっかりしています。相方は焼いている所を見ている時から、あの生地はすごい粘りをしてるねと注目していたのですが、そのとおりです。そのしっかりとした生地を割るとなかからとても良い香りとともに、具だくさんのカレーが姿を現します。
お店で買ってからこの偕楽公園へやってくるまで、少し時間がかかったにもかかわらず、アツアツ。高校生に人気なのも頷けます。カリっとした生地となかのカレーのバランスも絶妙。野菜がいっぱい入っていてとてもヘルシーです。クリーム入りやあんこ入りも売っていますが、やっぱり津へ来たらカレー焼きを食べないとね。ただ、本当にアツアツで具だくさんなので、ヤケドには気をつけましょう。
梅干という名の和菓子
続いては、以前は三重テレビでよくCMが流れていたとね菓子館さんの「不老銘菓梅干」をご紹介します。こちらは国道23号線の岩田橋の南、道路沿い東側にお店を構えている、1910(M43)年創業という老舗の和菓子屋さんです。そのCMというのがこれまた三重テレビらしいインパクトの強いもので、フニャフニャしたフィルムで音程も不安定という、まさしく老舗を感じさせるCMでした。
しかもそのCMは長い間リメイクされることなく流されていました。CMは「とねの梅干」という一品だけを紹介する内容のもので、地味なCMだったのですが、梅干という名の和菓子という点と、その一品だけを長年アピールしていたという点が気になり、一度食べてみたいという思いをずっと抱いておりました。
古いフィルムのCMのイメージから、店構えも重厚で歴史を感じさせるものかと思っていたのですが、意外にも今風で、ケーキや洋菓子も豊富な品揃えでちょっと面食らってしまいました。でも、逆に考えるとそれだけ幅広い品揃えにもかかわらず、「梅干」だけをCMでアピールしていたということは、それを食べて欲しいという思いが強いということですよね。迷わず「不老銘菓梅干」を買い求めました。
見た目は梅干・甘さいっぱい
箱を開けてビックリ。見た目は本当に梅干です。まさしくCMと同じ。しその葉や塩のような白い粉もかかっていて梅干そのもの。ところがです。やはりこれは和菓子。口に入れた瞬間に甘さがいっぱいに広がります。でもそのなかに梅の酸味や風味も感じられます。梅肉の入った羊羹を白あんで包んであるのです。
私たちは箱に入ったものを買ったのですが、面白いのは、本物の梅干のように万古焼の器に入ったものがあるのです。となると容器も梅干そのもの。食べ終わった後は本物の梅干入れに使えるというわけです。伝統の味の割には遊び心があっていいですね。今こそあの伝説のCMを復活させていただきたいものです。あのCMを見ていなかったら、愛知県在住の私はこの面白くて味わい深い和菓子の存在を知ることは無かったでしょう。
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