犬山に愛知北エフエム放送 まちの放送室 開局へ
犬山市にコミュニティFM放送局が開局するという話を聞き、しかもそれが、どうもこれまでのラジオの概念とは違うコンセプトのようだということで、ラジオに詳しい「KAZ Communications」のA氏と二人で早速取材に行ってきました。
生まれ変わった城下町に…
犬山市は、名古屋の北にある愛知県最北端の都市です。北側には日本ラインと呼ばれる木曽川が流れます。河畔には白帝城という別名を持つ国宝の犬山城があり、お城から南側へは城下町が形成されています。年に1度行われ、国指定無形重要民俗文化財ともなっている「犬山祭」では、県の有形民俗文化財に指定されている13台の車山が街を練り歩き、からくり人形が舞い踊ります。
その他、明治村、リトルワールド、モンキーパーク、お菓子の城といったテーマパークや、日本ライン下り、木曽川うかいといった体験型観光プランと、犬山は多彩な顔を持つ観光都市なのですが、そのなかで今、この犬山城の城下町が大きく生まれ変わりつつあります。古くからの城下町なのに「生まれ変わる」とはどういうことなのでしょうか。
犬山城から南へ、一方通行の細い一本の道路があります。道の両側には昔ながらの建物がずらりと並び、道路は拡幅されることなく昔ながらの風景が広がります。福祉会館から本町交差点までの間には、国の登録有形文化財となっている町家の旧磯部邸や、祭りの車山を保管しておくための本町車山蔵などがあります。でもそれだけではないのです。
この城下町では、空き家になってしまった古い建物を改修して店舗にする活動を行っているのです。空き店舗や空き家をデータベース化し、まちづくり会社が仲介となり、古い建物を生かしながら、そこに新しいものを受け入れることで、活性化しようという試みがなされているのです。
中心市街地を活性化することは、犬山市にとって大きな課題です。
犬山まちづくりの活性化
犬山市で中心市街地の活性化に取り組む「犬山まちづくり株式会社」の事務局長、森本さんにお話を伺いました。城下町の活性化という話になった際、城下町通りの利便性、安全性を高めるために、道路を拡幅するという話が上がったことがあるそうです。しかし、わざと拡幅せず昔ながらの細さを残すことを決断したというのです。
城下町の細い通りの両側は、互いに声をかけられる距離感となっています。それを大切にしたいというのです。上からの押し付けではなく、自分達で街を活性化させたいというのが、犬山の特徴なのだそうです。これはかつて、犬山城の城下では武家よりも町家が多かった名残だと森本さんは言います。祭の男衆の心意気で街を活性化してしまおうということなのです。
城下町の目玉としてラジオ局
この城下町では、電気屋さんもお団子やさんも、まるで江戸時代のままなのではないかという町家風情を残しています。しかし、それらの建物は江戸時代のままのようで、ままではないのです。ちゃんと改修工事をして、格子なども綺麗になっているのです。なので、見た目がとても美しいのです。
その城下町に今、活性化の目玉としてラジオ局が作られようとしています。7月7日に開局を目指している「愛知北エフエム放送」です。この愛知北エフエム放送ですが、これまでのラジオ局の概念からは全く想像もできなかったアイデアで、本当の意味での地域ラジオ局を目指しているのです。
このラジオ局についても森本さんにお話を伺いました。面白いのは、このラジオ局自体も昔ながらの町家の建物を改修してスタジオを建設している点です。現在は建物の改修工事が行われており、1階には格子戸付きのガラス張りのスタジオが作られ、2階に放送局の事務所が作られることになっています。古くからの建物を改修してラジオ局として使えるようにするためには、新たに建物を建設するのに比べ、コストは1.5倍かかっているのだそうです。
誰でも出られるラジオ局
そんな愛知北エフエム放送の計画の中で、最も面白いと思う試みが、誰でも1,900円払うと1分出演できてしまう「しゃべり砲台(放題)!!」という企画です。1,900円(※1,500円になったそうです)で1分間、何を喋っても良いのだそうです。しかも広告宣伝に使っても良いとのこと。
森本さんのお話では、例えば夕方、その日売れ残りそうな生ものが出てしまったスーパーの担当者がラジオ局にやってきて、1分間売り込みをしてもらっても良いそうなのです。広告宣伝費として見て格安です。そしてその1分間出演する人が、出演することを広めてくれることで、ラジオ局の存在を広めてもらえればということのようです。番組を担当するパーソナリティについては、開局に向けて現在勉強会を行っているそうなのですが、こちらも来るものは拒まずといった体制とのことです。
昨今、各地で地域ラジオ局が誕生していますが、大手ラジオ局のただのミニチュア版という印象を受ける局が少なくありません。それらは、極端な言い方をすればただの「ラジオごっこ」です。しかしこの愛知北エフエム放送の取り組みは、住民に広く門戸を開き、地域ラジオ局のあるべき姿といえるのではないでしょうか。しかし今はまだ開局前ですから、実際に放送が始まった時、真価が問われることになります。
存在の認知をどう高めていくか
ただ、このラジオ局の存在をいかにして広めるかという点が大きな課題であると森本さんは言います。確かに、大胆で面白い試みをやっていても、それを聞く人がいなければメディアとして生き残ることができません。全国各地には、ただ東京からの番組を流すだけの地域ラジオ局や、残念ながら電波を止めてしまったラジオ局もあります。でも、この愛知北エフエム放送は、これまでの地域ラジオ局とは全く異なる方向性で、地域活性に役立つ存在となり得ると私は思います。
ラジオを放送することが目的なのではなく、地域を元気にするためにラジオを放送する。
これが愛知北エフエム放送がこれまでの地域ラジオ局とは大きく異なる点であり、だからこそこれまでのラジオ局に無い発想が生まれてくるのでしょう。犬山の城下町のこれからとラジオ局のこれからに注目です。愛知北エフエム放送の開局は7月7日午前7時7分7秒の予定です。
コメント
愛知北エフエムの母体となった弐番屋さんは、これまで開局に向けたシンポジウムを2回開いておられ、私も2回目に参加してきました。こちらではコミュニティ放送第一号となったFMいるかさんや、フロムさんでおなじみの安部さん、そして新潟県中越地震で大活躍されたFMながおかさんも基調講演・パネラー両方を務めておられました。
コミュニティ放送は確かに地域情報機関のはずなのですが、本気で今もそう取り組んでおられるところは、おっしゃる通りそんなにない気がします。ただ、市街地で町屋の一員となることは、奈良市のならどっとFMさんもやっておられます。
地域を元気にする放送にはいろいろ方法があることでしょうが、間違っても、単にラジオが好きだとか音楽が好きだとか内輪で盛り上がるのにハクをつけたいとか、それだけで終わるようなことだけはあってはならないと思います。
(2006/06/16 2:49 PM)
かじかさん>
:間違っても、単にラジオが好きだとか音楽が好きだとか内輪で盛り上がるのにハクをつけたいとか、それだけで終わるようなことだけはあってはならないと思います。
このくだりですが、制作に関わってきた側として少し意見させてください。
ラジオが好きだということを隠し味にして、ラジオという道具の良さをどう活かすのか、
音楽が好きだということを強みとして、聞き手側の生活スタイルを意識した選曲をこなしていくのか、
という面がとても大切であり、これは単にラジオが好き、音楽が好き、でも構わないと思います。
かじかさんはシンポジウムに参加されたとのこと。
エフエム愛知の伊藤氏なども出席されたと聞きました。
かじかさんがどういう立場や目的で、このシンポジウムに参加されたのかは分からないのですが、それなりのお考えがあったと察するところです。
でしたら、かじかさんこそそれらご自身のお考えを隠し味に、ラジオを送り出す側として携わってみたらいかがでしょうか?
(すでに携われているのであれば、失礼をお許しください;)
内輪で盛り上がるのにハクをつけたいとか云々、これは同感です。
ラジオに限った話しではないのでしょうが、電波を使ったメディアはその性質上、いつでも凶器になるんですよね。
良くも悪くも人の心を動かすことができるのが、電波を使ったメディアの力ですので、その利点を上手に活用していっていただきたいですね。
(2006/06/17 5:58 PM)
>かじかさん
こんばんは。シンポジウムに参加されたのですね。となると放送自体にも関わられるのでしょうか。仰るとおり、ラジオというのは伝えるメディアですから、自己満足に陥っていてはどうしようも無いと思います。喋りはもちろん、音楽にしても、全てを情報として聞き手に伝えることを目的として番組を制作することが大切だと私も思います。
>あかださん
こんばんは。もちろん、ラジオが好き、音楽が好きというのはラジオ番組を制作する上で大切なことだと思います。私の思いとしてはそこから一歩踏み込んで、聞き手にもラジオを、そして音楽を好きになって欲しいという思いをぜひとも番組にこめて送り出して欲しいと願っています。
(2006/06/19 1:42 AM)
遅くなりまして申し訳ありません。
>あかださん
私は「それだけで終わってはいけない」と申したはずで、ラジオ好きであること、音楽好きであること自体は全く構わないと思います。ただコミュニティ放送の場合、ただでさえラジオ全体が地盤沈下しているうえ、番組表を載せてもらえない場合も珍しくない、というハンディを背負っています。その中でせっかく周波数を合わせてもらっても「なーんだ、ちっとも地元のことをやらん。これならやっぱり、レベルの高い(あるいは私好みの)他局にしよっと!」ということになりかねません。これでは、何のためにコミュニティ放送という制度があるのか分かりません。
だから、本当はコーナー時刻まで分かる番組表があるべきなのですが、HPでそこまでやってる局は少ないですし、インターネット以外の手段で伝えようとしている局がどれだけあるか・・・。改編期毎(毎月は無理でしょう)に全新聞折込は最低限必要だと思いますが。あと、対象エリア内全ての駅や主要道路のエリア境に広告看板が必要だと思うのですけど。生ワイドでも、○分に1回は地元情報にするとか必要だと思うのですが。それに、安易に「FM」と名乗ることで聴こうとしなくなる人(お年寄りとか)もいるはずです。
内輪意識に陥らないとは、いま局が何をしようとしているかがリスナーに伝わっていない場合も含むのです。
あと、私は現在コミュニティ放送に関わっていませんが、仮に参加しようとしても「よそ者が何しに来た」という雰囲気のほうが大きいと思います。それは訪問時の対応である程度分かります(全国の半数くらいは訪れてると思います。番組表をもらいに行くという名目で、話が弾めば激励するつもりで)。関わるほうがむしろ非現実的なのが現状といえましょう。その意味でも犬山は例外的ですね。
>トッピーさん
あかださんにも申しましたが、私自身は参加しようとして行ったわけではありません。シンポの後にスタッフ募集があったわけでもありませんから(おそらく設立前にスタッフも役員も全部決まっていた)。ボランティアスタッフであれば、時間も別の収入もないといけないですしね。
コミュニティだからレベルが低くても構わないという甘えが許されないのは当然ですが、「自分が楽しいんだからリスナーも楽しいだろう」式の決め付けがみられる局が少なくないのは何故でしょうね・・・。
(2006/06/20 7:37 PM)
かじかさん>
お返事ありがとうございます。
かなりCFMにフラストレーションを感じてらっしゃるご様子。
:ただでさえラジオ全体が地盤沈下….
:….地元情報にするとか必要だと思うのですが。
この部分は、どう騒いでも改善されない業界体質的な物を感じてしまいますよね。
インターネット以外の媒体を活用し、詳細なセグメントが分かる番組表の類を、鉄道の時刻表的な感覚で配布したりする、
そういう感覚が欠如しているのは、ご指摘の通りですね。
広告看板、毎時一定数の地元情報の入中、これはCFMだからこそ、積極的に展開していただきたいですよね。
:「よそ者が何しに来た」
これは仕方ありませんよね。
でもそれは、通常の仕事における営業とスタンス的には違いがない訳で。
そう思われたとしたら、そう思わすなにかがこちらにあったのでしょう。
トッピーさんへのお返事から拝借させていただきます。
:「自分が楽しいんだからリスナーも楽しいだろう」式の決め付けがみられる局が少なくないのは何故でしょうね・・・。
ホント、多いですよね。
自分が楽しいということばかりを波にのせる方が少なくありませんよね。
例えば、お祭りやイベント、催し物などの紹介なんか、良い例ですかね。
自分がお祭りやイベント、催し物を楽しんで、ワーキャーというレポートがそのまま波にのる。
最悪です。
なぜ、それほど楽しいお祭りやイベント、催し物なんだということを、送り手としてしっかり波にのせられないのでしょうか。
私は、多分にこういう面を内輪ノリだと感じてしまいます。
あと、最後に。
:私は「それだけで終わってはいけない」と申したはずで、
それは理解しています。
私がかじかさんへ伝えたかったのは、そう思うのであれば、ここへ書き込むまえにご自身で携わり、その流れを変えることなのでは?、ということです。
私やトッピーさんは、そういう活動はそれなりにしてきたと考えています。
多分、かじかさんが耳にされてきた番組の中には、我々がお手伝いさせていただいた番組もあるかと思います。
かじかさんのラジオ熱、活かしていただけることを期待します。
(2006/06/21 12:20 AM)
あかださん、早々にありがとうございます。
まず「よそ者が何しに来た」ですが、実は私、毎回アポなしで行ってます(もちろん、それ故に相手側が忙しい場合は強要しませんし、忙しいが故の態度である可能性も考えねばならないのはいうまでもありません)。となると、局側にとってはエリア内リスナーの可能性があるんですよね。にもかかわらずけげんな顔をされる、というのが理解できないんです。あかださんは営業スタンスと変わりないとおっしゃいますけど、この件についてはこちらがむしろ客の可能性があるわけですよ。ということは、スタッフの意識が実はリスナーでなくスタッフ同士という内輪にしか向いてないのではないかと思えてならないのです。
あと、私が現在コミュニティに関わってないことについて、設立メンバーを含めたスタッフの意識から「関わる(関われる)ほうがむしろ非現実的」と書いたのですが、その点はお読みでしょうか。仮に私が犬山に声をかけたとして、犬山や丹羽郡の出身でもなければ放送に関わった実績もない、しかも日常業務からすれば(名古屋という)遠方に住んでいる私を採用できるでしょうか。むしろ交通費を出さねばならないだけでも不採用にされるほうが自然だと思います。ただ、コンサルに既存の放送局をベースにされる方も少なくないのは分かりましたので、近々、インターネット上で看板だけは出そうと思ってます(むろんアクセスしてくれた方に対しては実績がないことや、分野によっての限界(経営など)があることは説明しますよ)。ちなみに私が発起人になるのは、現在無職で預金を取り崩してる状態である以上、不可能に近いでしょう。
(2006/06/21 1:51 PM)
>かじかさん、こんにちは。
まず、ラジオ番組の制作スタッフなることと、放送局の社員になることはイコールでは無いと思います。FM局もAM局も、もちろん岐阜放送も、ラジオ局の仕事は編成や営業や経営であって、実際に番組を作っているのはほとんどが外注の制作会社であり、コミュニティFMの場合はそこにボランティアスタッフが入ることが多いです。
ボランティアだっていいじゃないですか。誰だって最初は実績なんてありませんよ。あかださんもそうでしたけど、もちろん私だって、最初は何もありませんでしたよ。それが今、私の場合はこうやって文章を書くお仕事を少しいただけるようになったのは、このToppy.Netをずっと何の見返りも無しにやってきたことの結果だと思っています。無報酬とわかっていても、こちらから「ぜひやらせてください」と仕事をすることもあります。でもそれが趣味ではなく仕事と言えるのは、お金はもらえないですけど、実績、人脈という報酬がもらえるからです。
理想を机上で唱えるよりも、理想のものが欲しいのであれば、お金という見返りを求めずに動くことも必要なのではないでしょうか。自分の理想を論じるだけではなく、人の手を借りて自分の理想を形にできること、そのことがお金よりも何よりも最高の見返りだと私は思います。
(2006/06/22 2:04 PM)
検索エンジンからココを発見しました。
私は同社で唯一の名古屋在住の株主です。
盛り上がっていますね。
> 誰でも1,900円払うと1分出演できてしまう「しゃべり砲台(放題)!!」
「しゃべり砲台」は1900円から1500円に変更になっています。
> シンポの後にスタッフ募集があったわけでもありませんから(おそらく設立前にスタッフも役員も全部決まっていた)
スタッフ募集については、シンポの資料に記載してあります。
あと、役員ですが、当然ながら設立総会で決定しました。
もちろん、事前に内定しており、そのとおりになりました。
私としては、夢と安心がある放送局になってほしいと思っています。
応援、よろしくお願いいたします。
(2006/06/25 10:51 PM)
>TECCHANさま
はじめまして、こんばんは。
愛知北エフエムさんには本当に期待しています。我が家ではたぶん聞くことはできませんが、まあいろいろありまして私は犬山や可児、各務原のあたりをうろうろしていることが多いですので、放送が始まるのを楽しみにしています。高い理念を持ったコミュニティFM局として発展をお祈りしています。
(2006/06/26 8:36 PM)