おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 第1章 名古屋っ子気質

市内と市外と県外と...名古屋をとりまく階層社会

記事公開日:2003年12月20日 更新日:

おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 第5回

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 名古屋の人々は閉鎖的で他の地方の人をなかなか受け入れない。と言われることがよくあります。しかしそれは「名古屋対その他」という単純な構図ではなく、幾重にも地域による微妙な温度差が重なったものとなっています。今回は、周辺都市に対する名古屋の確執、愛知県の確執を見ていきます。

 名古屋市民にとって、当然この地方の中心は名古屋市であり、名古屋市外の周辺都市については寄生虫かのように考えている節があります。それを如実に表しているのが名古屋市にあるマスコミです。

複雑な名古屋の排他性

 最近ではさすがに周辺都市に配慮してかこの傾向はあまり見られなくなってきたのですが、かつて名古屋のテレビ局のローカルニュースでは、「市」といえば無条件に名古屋市を、「市長」と言えば名古屋市長を指していました。

 例えばある日、名古屋市内の各地で防災訓練が一斉に行われたとします。それが名古屋市単独のもので他の街では開かれなかったとします。するとその日のニュースでは、「今日、市内では一斉に防災訓練が行われました。」と言っていたのです。また他のニュースで、「今日、西尾市長は...」と言えば愛知県西尾市の市長のことではなく、西尾名古屋市長(当時)のことを指していたのです。

 「市」と言えば名古屋市を指すことが当然のように行われていたのです。では、西尾市の市長を指すときはどう言うかと言いますと、「西尾市の本田市長」と言うわけです。

 現在ではこのようなことは少なくなり、テレビでは「名古屋市内」「松原名古屋市長」と言うことが多くなりましたが未だに変わっていないのが新聞です。新聞には各地域ごとに異なる内容となっている地域版があります。名古屋市に本社を置く中日新聞には、版の名前自体にこの名古屋市偏重が現れています。

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▲名古屋市民にはこういう考えがあります。地価も、「市」を一歩出ただけで、かなり安くなります。

名古屋市民による排他と支配

 現在中日新聞は愛知県を11の地域に区切り、「尾張版」「西三河版」といった地域版を発行しています。その中で名古屋市内を対象とする版の名称は「市民版」です。

 市と言えば名古屋なのは当たり前なことであって、「名古屋市民版」とすることは蛇足とでも思っているのでしょう。しかし、それよりも名古屋市偏重が如実に表れているのが、名古屋の周辺都市に向けて発行している地域版です。そのために私は幼い頃、その言葉の意味を勘違いしていたほどです。

「近郊」って何だ

 私が住んでいるのは名古屋市の隣りにある瀬戸市です。幼少の頃、名古屋市の周辺に配られている版の名前がなんと「近郊版」だったのです。名古屋の近くという意味での「名古屋近郊版」の「名古屋」が省略されているのです。名古屋市が「市民版」であることは知っていました。それに対してここは「近郊版」。私はその言葉の意味をまだ理解していなかった頃、この「近郊」という言葉がこのあたりの呼び名だと思っていたのです。

その誤解はすぐに解けましたが、この「近郊版」という名称は名古屋市が全ての中心であると考えていることが表れた、実に象徴的な名前だと思います。名古屋の近くだから「近郊版」、この「近郊」と呼んでいる地域には主体性が無いということでしょうか。

 現在では、この「近郊版」はさらに2つに分けられ、春日井・小牧・犬山が「近郊北部版」に、瀬戸・尾張旭・日進などが「なごや東版」に改められましたが名古屋市中心思想が変わる気配は全くありません。

 ただ後者が、「近郊東部版」にならず「なごや東版」になったのには何か理由がありそうですが、所詮は「なごや東版」であり、名古屋市外にもかかわらず「名古屋の東」という呼び名で片付けられているというわけです。

 このように、一見一体に見える名古屋も実は市内と市外でかなりの温度差があるのです。名古屋市外に住む人間について名古屋市民は、「名古屋市外」というレッテルを貼りながらも、「名古屋の付属」かのように考えているということが、これらの事象からわかります。

名古屋周辺地図
▲名古屋市周辺の位置関係です。

市外在住名古屋っ子のはけ口

 さらにそれは「愛知県」にも当てはまります。名古屋市民に寄生虫扱いされた、名古屋市外に住む人間がその捌け口としてターゲットにするのが、愛知県外に住む名古屋っ子です。

 特に愛知県の北隣に位置する岐阜県は、県庁所在地の岐阜市が名古屋駅から電車でたった17分というとても近い距離にあり、また岐阜県内でも多治見・土岐といった東濃地域では、電車や車で岐阜市へ行くよりも名古屋市のほうが短時間で行くことができるということもあって、名古屋に通勤・通学している人も多く名古屋のベットタウンとなっています。

 もちろんその人たちは、岐阜県民という意識よりも名古屋っ子という意識のほうが強いわけです。

岐阜にある名古屋?

 私の住む瀬戸市は岐阜県と隣接しており、その県境付近に「名古屋」という名のつく大学があるのですが、そこの学生さんに聞いた話でこんな話があります。

その人は、今書いたような岐阜県在住の名古屋っ子で、通学も便利ということからこの大学に入学しました。通学は車で30分、確かに近い方です。しかし、そこに待っていたのは「県外」という区別でした。

 新入生は、サークルなどに入ると決まって歓迎会があります。そこでその人が「どこに住んでいるの?」と聞かれたときに事件は起きました。その人は普通に「岐阜県○○市です。」と答えたのですが、周りのリアクションは「県外じゃ~ん」という驚きだったのです。これがその人には未だに理解できないそうです。

 この大学は「名古屋」という名は名ばかりで、車で2,3分走ればもう岐阜県多治見市です。対して、名古屋市に出るには1時間ほどかかる場所です。そんな岐阜県寄りの大学に通っているにもかかわらず、岐阜県の人間に対してなぜ愛知県民はそんなに驚くのか。

しかも「県外」という区切りは一体何なのかと、常滑や蒲郡といったところよりよっぽど近いにもかかわらず、遠距離通学しているかのように扱われた。と、かなり憤慨していました。

近くの県外より遠くの県内

 確かに、私もこの岐阜県境の街に長年住んでいますが目は常に名古屋を向いているといっても過言ではありません。車に乗るようになるまでは岐阜県側の土地勘は全く無く、長久手や豊田といった県内の周辺都市には親近感を感じるものの、同じ周辺都市でも、多治見市や笠原町といった県外の街にはあまりそれを感じませんでしたし、隣りの市でありながら多治見へ行くというのはちょっとした旅行気分でした。

 同様に東京でも、東京に通勤・通学する埼玉県民「埼玉都民」を見下すかのような風潮はあると思いますが、それは「埼玉」が田舎の代名詞かのように扱われているだけであって、「都外」であることを卑下しているわけではないと思います。たまに「東京ディズニーランドは東京じゃない。」などと言っている人も見かけますが、もしこれが名古屋だったらもっととんでもないことになります。

 名古屋っ子の感覚からすれば、東京都あきる野市民に「23区外じゃーん」、千葉市民に「都外じゃーん」、八丈島の住民に「東京のおまけじゃーん」。という言葉を浴びせることでしょう。

「名古屋」の大学
▲これら大学の中で、本当に市内にあるのは...。正解、「0」。

名古屋市を出て初めてわかる

 名古屋市で生まれ育ち、結婚して市外に引っ越してきた母親が、私に常々言う言葉はこれです。

「あんた結婚したら、絶対市内に住みゃーよ。」

 もちろん、市内とは名古屋市内です。名古屋市に住んでいたときは、名古屋市内と市外の地域格差がこれほどあるとは思っていなかったようです。社会福祉、税金、交通費どれをとっても市外と市内では雲泥の差。バスに乗っていても、名古屋市内は均一料金のため名古屋市を出た瞬間に料金表は倍増するのです。

 名古屋が排他的だ、というのは、決して東京や大阪に対してだけではありません。名古屋と呼ばれている地域の中でさえも、市、そして県でこういった区別をしているのです。これでも、岐阜県の扱いはまだ良い方で、同じ愛知県の隣でも三重県出身などと言ったら、たとえ名古屋駅から電車で20分の桑名市であっても名古屋ではおのぼりさん扱いされます。

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