おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 の第25回です
名古屋御三家、東海銀行・名古屋鉄道、そして残るは中日新聞なのですが、その前に新聞よりも接する時間が多いメディアであるテレビについて見ていきます。今まで紹介してきた銀行・自動車・鉄道といった企業とテレビ局の大きな違いと言えば、完全なるローカル企業が存在しないということです。
つまり、名古屋にあるテレビ局とは言え東京や大阪から流れてくる番組が大半を占め、名古屋の番組だけをやっているテレビ局というのは存在しません。
名古屋のテレビ局の位置付け
そもそも、日本のテレビ局というのはネットワーク化されることを想定していませんでした。当初国からは「各地方で50%以上は独自番組を放送することが望ましい」という指針が出されていました。
しかし、魅力あるプロレス、野球、ドラマといったコンテンツは東京で作られるようになり、やがて故・田中角栄氏の登場で新聞とテレビ局が系列化されると一気にテレビ局の単一系列化が進み、国も4系列を全国に拡大することを目標とするようになります。
キー局番組の合間を埋める地方局
こうして、日本のテレビというのは東京や大阪から流れてくるものの隙間に、地元の番組を挿入するという図式が出来上がります。ほとんどの番組のセールス、制作、送出を行う東京のテレビ局を「キー局」、東京ほどではないものの全国に番組を送出する大阪のテレビ局を「準キー局」、その他受け手側の放送局を「地方局」と呼びます。
名古屋のテレビ局は地方局?準キー局?
ここでも、名古屋のテレビ局は微妙な存在となっています。全国ネット放送される番組のなかで、名古屋発というのも僅かですが存在します。例えば、フジテレビ系列で放送されている午後1時半からの昼ドラや、TBS系列で大阪・名古屋の交代で放送される同時間帯の昼ドラ、日本テレビ系列で放送される深夜のバラエティ番組、テレビ朝日系列で日曜の朝7時に放送されるアニメ、テレビ東京系列で日曜深夜24時に放送されるエンターテイメント情報番組。これらは名古屋発全国ネットの番組です。ということは名古屋も大阪同様「準キー局」なのでしょうか。
中にはそういう扱いをする人もいますが、私は名古屋のテレビ局を「全国に向けて番組を発信する唯一の地方局」という位置付けをしたいと思います。テレビ業界で名古屋はあくまでも「地方」なのです。しかし、東京・大阪に挟まれる立地条件の良さと、スポンサーを独自で獲得できる経済力の良さから、たまたま全国に番組を送ることが出来る力を備えたのです。
だからといって全国のテレビ局を仕切り、ゴールデンタイムにドーンと全国ネットの番組を作るほどの勢いは無いのです。かつて一部の局にはそういう時代がありましたが、ことごとく撤退しています。
名古屋の独自番組はそこそこ多い
また、名古屋のテレビ局は全国に発信するだけでなく、それら条件の良さから地元のオリジナル番組も多数制作しています。自社制作率は10%以下という地方が多い中、CBC(TBS系)は17.4%、東海テレビ(フジ系)は24.8%、メ~テレ(テレビ朝日系)は16.6%、中京テレビ(日本テレビ系)は15.0%、テレビ愛知(テレビ東京系)は9.7%と比較的高めの数字を記録しています。(2001年4月1~7日民間放送テレビジョン中継回線運営センター調査)
さらに野球のシーズンともなると通常放送される東京の番組をお休みして、ドラゴンズ戦中継を行うので自社制作率はもっと高くなります。
意外と大物タレントも名古屋にやってくる
しかも、名古屋のテレビ局は立地条件の良さから全国区タレントを呼ぶことが容易で、同じようにある程度地方局に力のある札幌や福岡から名古屋に引っ越してきた人がテレビを見て驚くのが、名古屋ローカル番組への有名タレントの出演です。札幌や福岡ではその地方のタレントが番組に出ることが多く、余程のことが無い限り全国区タレントというのはやってこないのだそうです。そんな名古屋では、ふと東京の番組なのか名古屋の番組なのかわからない時があるほどです。
ローカル番組かどうかが気になる
そのため、テレビマニア度の低い人の口からも「これってローカル?」「これって名古屋の番組?」という言葉が登場することが多いのです。年輩の人になると「これは名古屋のテレビかね?」と言います。それは11チャンネルの「名古屋テレビ」のことを言っているのではなく、名古屋で作っている番組かどうかということを聞いているのです。
でも、いくら全国区タレントが出演しているとは言え、少し見ていれば内容やそのチープさに名古屋の番組だと言うことはすぐに気づきます。そしてそこに出ているタレントは毎週名古屋に来てるのだと思い、名古屋っ子は妙に親近感を湧かせたりするのです。逆に、近所のラーメン屋さんか何かがテレビで紹介されていて、「これって名古屋の番組?」「違うがね、全国区だがね」となれば「すごいな~」ということになります。
「ローカル」「全国区」「ネット」こういった言葉を、マニアではない一般の人がテレビに対して頻繁に使うのは名古屋くらいなものではないでしょうか。
▲名古屋の番組に出る全国区タレントは、このどちらかであることが多いのです。
名古屋っ子御用達
そして、特に名古屋っ子が昔から親しみを持っているテレビ局が、CBC(中部日本放送)と東海テレビです。CBCは昔から「自社制作率20%」を目標としていて、地域に密着した番組制作を心がけているために名古屋っ子に広く受け入れられています。東海テレビはフジテレビの人気番組と中日戦中継を武器に、そして何よりチャンネルが「1」ということでテレビの主電源を入れたときに最初に映るチャンネルであるという強みを生かし、視聴率三冠王の日本記録を保持していました。
▲日本最初の民間放送、CBC(中部日本放送)。
他のテレビ局はと言いますと、UHFという新しい電波のテレビ局で当初は見るためにアンテナとコンバーターを買わなければならなかった中京テレビは、地道にアンテナ普及活動を進め、また巨人戦中継に副音声で「ドラゴンズ応援放送」を行い、さらに「お笑いマンガ道場」など果敢に名古屋っ子に受ける番組を日夜研究している社風が好感を持たれ、新参者でありながら名古屋っ子への浸透は早く、今では日本テレビの人気番組と合わせて視聴率トップになることもしばしばです。
▲独自にタワーを建設した中京テレビ放送。
テレビ愛知はさらに新参者ですが、名古屋の心のふるさと大須に社屋を構えたことと、中日ドラゴンズの遠征試合を追っかけて中継することで、今まで見られなかったドラゴンズ戦を名古屋で見ることを可能にしたことがイメージアップに繋がっています。
▲一番新しい大須のテレビ局。テレビ愛知。
心に一線を引いているチャンネル
さて、残るテレビ局はひとつ。名古屋っ子はこのテレビ局に対して心に一線を引いています。それは名古屋テレビです。
名古屋テレビが開局した当時、名古屋にはTBS系列のCBCとフジテレビ系列の東海テレビしかありませんでした。そこで名古屋テレビは東京にあった残る2つのテレビ局、日本テレビとNETテレビ(現:テレビ朝日)からいい番組だけをネットし、編成を行っていました。いかに東京の番組をうまく編成するかを常に考えていて、自社製作はほとんど行っていませんでした。しばらくはそれで上手く行ったのですが、中京テレビが開局しそれは崩れました。
中京テレビが開局しても、しばらく名古屋テレビはいいとこ取りの編成を続けます。しかし、中京テレビが日本テレビ系列一本化をすることとなり、巨人戦中継などの有力なコンテンツは名古屋テレビから中京テレビへと移されました。これにより名古屋テレビは放送する番組が減っただけではなく、中日ドラゴンズ戦の中継をほとんどすることができなくなってしまったのです。
派手なクロスネットから一転…
そして、それまで東京の人気番組をいかに放送するかに終始していたことから、当時は番組制作のノウハウも少なく、名古屋テレビが作る番組からはどことなく地元軽視という雰囲気が伝わってきてしまっていました。実際、ローカルニュースのワイド化も他局にかなり遅れをとりました。名古屋っ子はこういう空気に敏感です。地元を蔑ろにするテレビ局は受け入れられません。しかし、後から開局しても地元密着を掲げているテレビ局はすぐに受け入れられているのです。
ところが、それは地元重視・軽視という問題だけではありません。名古屋テレビがイマイチ浸透しない影には名古屋のマスコミを牛耳るあの強大な力が見え隠れしているのです。
▲羊の皮をかぶったテレビ局。メ~テレ(名古屋テレビ)。
コメント
テレビ局のネットワーク化の過程に於ける「ねじれ」だったのでしょうか、過去に名古屋・民放で「珍現象」が有りました。「円谷ウルトラ・シリーズ、二作目ウルトラマン」の本放送時(1966年)、「東海テレビ」が放送していました。しかし「三作目ウルトラセブン」以降から「CBCテレビ」が一元、放送をしました。「一作目ウルトラQ」はどちらのテレビ局かは、記憶に無いのですが「二作目ウルトラマン」はハッキリと「東海テレビ」が放送していたのを記憶しています。
「大物タレントが来る」と言うのも、昔からでした。現在も放送しているか私には知り様が無いですが、日曜日の「どんぐり音楽会」(いわゆる「素人のど自慢番組」の類)では「人気アイドル歌手」がゲスト審査員として続々出演して後半に「持ち歌」を披露してました。この様な番組は「尾張・岩倉」から「石川県・金沢」に転居したら、「かの地」には一切有りません。「名古屋ローカル番組」であっても「人気アイドル歌手」には、大きな「人気獲りの市場」だった訳です。(古い話しですが、ドリフターズの土曜怪物番組の「常連アイドルたち」は殆んど出演していました。)
そして「名古屋・発信、全国放送」のBig Nameと言えば「NHK名古屋・中学生日記」で決まりでしょう。彼是45年にもなる「長寿番組」ですから。
全国何処であろうと「在名テレビ局」のテロップが流れる「番組」が今なお続いているのは、私の「心密かな自慢」です。
>ara40oyajiさま こんばんは
東京と名古屋のテレビ局の数が大きく違った時代は、
同じシリーズでも別のテレビ局で流れるなんてことが、
当たり前のようにあったのですね。
どんぐり音楽会は幼い頃見た記憶がありますね。
確か、オリエンタルが提供でしたかね…。
昨年、CBCはドラマ枠を奪われ、
その代わりの情報番組枠も今年奪われ、
CBCはとうとう、レギュラーの全国ネット番組を
持てなくなってしまったことが、ちょっと寂しいですね。