お正月に東山動物園へ
私は動物園が大好きです。
昨年は、どうしても上野のペンギンとパンダが見たくなって、雨の中を一人で東京・上野動物園に行ったりしましたが、ここ数年、我らが名古屋の東山動物園に出かけていないことに気づき、松の内に久しぶりに東山へと行ってきました。
東山は我が家から近いこともあり、幼い頃から何度も行っているので、どこに何がいるのかも完全に把握しているほどです。
かつては東洋一の動物園と呼ばれ、入場者数も上野に次いで国内2位を誇ってきた東山動物園も、ここ数年はあの北海道の「旭山動物園」に抜かれ、ライバル心を燃やす東山も、再生プランを策定して大胆な行動展示をする計画のようですが、私は今の、のほほんとした東山の雰囲気を気に入っています。
では、♪たいかんお~こく、ひがしやま♪でも聞きながら、東山の戦後のスターと今のスターをご覧ください。今回は東山動植物園の動物園本園をご紹介します。名古屋に希望の光をくれた動物とは。
東山のイチオシ!
東山動植物園の入場料は、動物園と植物園共通で、高校生以上が500円、中学生以下は無料となっています。親子連れのお財布に優しいですね。チケットには、「ゾウ」「ゴリラ」「コアラ」「カバ」「キリン」のイラストが描かれています。彼らは東山のイチオシ!たちです。
このうち、ゾウ、コアラ、キリンが本園にいます。
やっぱり、東山と言えば真っ先に「コアラ」を思い浮かべる方が多いと思います。なんてったって日本で初めてコアラがやってきたのが東山ですからね。もちろん、そんな集客効果抜群のコアラは本園の最も奥にいます。
意外とオイシイ動物園グルメ
この日、私たちは昼頃にやってきたので、まずは腹ごしらえ。私たちはいつも平日に動物園に訪れることが多いので、正月休みの人の多さにちょっとビックリ。
本園は中央に休憩所や食べ物屋さんが立ち並んでいます。すると、おいしそうなソースの香りが。鉄板で焼きそばが焼かれていました。
焼きあがるのを待って、やきそばとお好み焼きを購入。人が多いと、待たなくてはいけないものの、こういった食べ物もできたてを戴けるので嬉しいですね。焼きあがった焼きそばは、あれよあれよと売れて、あっという間に無くなってしまいました。
腹ごしらえが済んだところで、まずは東山の元祖スター「ゾウ」を見ることにします。かつては、この東山のゾウを見るために、全国から人がワンサカやってきた時代があります。
東京から子どもたちがゾウ列車に乗って…
戦後、この東山のゾウを見るために、東京から「象列車」という団体専用列車に乗って、子どもたちがたくさんやってきたことがあります。1949(S24)年のことです。
なぜ、わざわざ東京の子どもたちが名古屋の東山まで象を見にやってきたのか。
当時の日本で、東山はゾウのいる唯一の動物園だったのです。なぜなら、他の動物園のゾウたちは、戦争中に軍の命令で殺されてしまっていたからです。毒殺もできず、注射で殺すこともできないゾウを殺すには餓死させるしかありませんでした。
お腹が空いて衰弱しているゾウが、芸をすれば食べ物がもらえると思い、わずかな力を振り絞って、飼育員に向かって芸をするのですが、結局餓死させられてしまう上野動物園のゾウの話はよく知られていますよね…。
もちろん、東山も多くの動物が処分されたのですが、東山を管轄していた軍人がゾウについてはわざと見逃していたのです。
上野の「かわいそうなぞう」と東山の「ぞうれっしゃがやってきた」は、どちらも絵本などになっています。
この日も戦後と変わらず、アジアゾウのサッカーに多くの子どもたちが歓声を上げていました。
寒いとイキイキな奴らたち?
真冬ですから、動物園を見て周るのは本当に寒い。でも、そんな寒さのなかで活動的なのが、水に棲む彼らです。
まずは、チョコチョコと短い足で歩き回るペンギン。ペンギンの愛くるしさはどれだけ見ていても飽きませんね。ペンギンは、毛の生え変わりのシーズンが好きです。あちこちボッコボッコと塊で毛が抜けて、無数の10円ハゲが出来てる姿がとてもラブリー。
そして、仰向けで泳ぐアザラシに、結構な勢いで段差も気にせずスイスイと泳ぐアシカ。みんな活動的です。でも、寒さに強いはずのシロクマがおとなしい。寒いんだからもっと動いてくれてもいいのに…温暖化の影響ですか?やっぱり。
名古屋有数の縁切りスポット
アシカとシロクマの先は階段になっていて、その先には東山ボートのある「上池」があります。
私は迂闊にも相方に「ボートに乗ってみようか?」と何の気なしに言ってしまいました。そう言ってから、私は「しまった…」と思ったのですが時すでに遅し。相方に「それは、そういう意味で捉えてさせていただいていいのでしょうか。」と言われてしまいました。
そうなんです。東山ボートといえば「乗ると別れる」縁切りスポットとして、名古屋で最も有名と言っても過言ではない場所です。「東山のボートに乗ろう=別れよう」です。
このウワサは名古屋っ子なら耳にしたことがあると思います。ボート側もそのウワサを否定するのに躍起で、カップルに無料で「僕たちは別れません」というプレートを付けた船に乗ってもらい、ウワサを打ち消そうというイベントを行ったこともありました。
実際のところは、この池には「悲しみを忘れる池」という伝説があり、それがいつの間にか「人間関係を清算できる池」に転じたとのこと。すごい転じ方ですが…。
所詮ウワサはウワサですが、さすがに…乗る勇気がありませんでした。
小っちゃくっておぼこいキリン
上池のほとりにはコアラ舎があるのですが、コアラを見る前に、キリンを見るのを忘れていたことを思い出し、戻ります。キリンは繁殖が難しいと言われているのですが、そんななか昨年の秋に生まれたばかりの、アミメキリンの赤ちゃんを見なくてはいけませんでした。
おおお!いるじゃないですか、小っちゃ~なキリンが!お母さんの近くで、ちょっとおどおどした表情で不安げです。その様子のカワイイこと。なんともおぼこい表情がたまりません。元気に大きくなれよ~。
いつの間にか撮影が解禁に
いよいよコアラです。ブラザー工業の手によって建てられたコアラ舎です。かつてコアラ舎内では、カメラやビデオといった類のものは全て撮影禁止で、コアラがコアラ舎の外にいる時しか撮影はできませんでした。しかし、今回訪れてビックリ。「フラッシュ撮影はご遠慮ください!」となっているではありませんか。と、ということは、コアラの写真撮っていいんだ!やったー。というわけで、コアラ初激写です。
絶望の名古屋に希望の光
先述のとおり、東山動物園は日本で初めてコアラがやってきた動物園なのですが、単独の日本初ではありません。東京(多摩)、鹿児島(平川)と同時の日本初です。そのあたりの経緯については、当サイトの「日本初は譲れない」の後半をお読みいただければと思います。
コアラがやってきたのは、1984(S59)年。名古屋オリンピックの誘致に失敗し、名古屋の街全体に閉塞感が漂っていた時代です。そんな名古屋にとってコアラは、失ったオリンピックに変わる希望の光だったのです。
ちなみに名古屋オリンピックは、この東山動植物園の北側にある、平和公園で開催されるはずでした…。
コアラは寝てばかり…というイメージがありますが、この日は2歳のティムタムくんが元気にムシャムシャとユーカリを食べていました。思わずムービーまで撮ってしまいました。本当にぬいぐるみみたい。
さすがの貫禄
他のコアラたちはやっぱり寝ていました。そのなかで、8歳のフォレストくんは余裕。客にケツを向けて寝ていました。お尻もこれまたカワイイ。なんだか背中の毛並みを見ていると、思わず頬擦りしたくなっちゃいます。
相方は、オーストラリアでコアラをだっこした経験があるのですが、話を聞くと、結構爪が鋭くて痛いとのこと。確かに、コアラってよく見ると目つきも鋭くて、怒らせたら怖そう。でもやっぱり、1日のうち18時間は寝てるそうなので、結局はのんびりものなのかな。まあ、普段おっとりしてる人ほど、怒らせると怖いですからね。
名古屋の公衆電話には、鳥山明先生デザインのコアラの絵が描かれていたり、中日ドラゴンズのマスコットキャラクターはコアラをモチーフにした「ドアラ」だったり、かつてはテレビ愛知がコアラをマスコットキャラクターにしていたりと、名古屋とコアラは切っても切れない関係にあります。
その要因はやはり、名古屋オリンピックの誘致失敗を慰めてくれたという貢献があったからでしょう。名古屋っ子にとってコアラの存在は特別なのです。
では、このコアラがやってくるまで、東山動物園のスターは一体誰だったのか。そのスターに会いに、今度は東山動物園の北園へと向かいましょう。

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