おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 第44回
名古屋といえば中日ドラゴンズ、中日ドラゴンズといえば名古屋というくらいに、ドラゴンズは地域に密着した球団です。ところが、名古屋っ子は皆ドラゴンズファンと言うとはできないと思います。
名古屋っ子はどのようにしてドラファンになるのか
名古屋っ子の好きな球団はどこなのか。具体的な統計データは無いので根拠はありませんが、私が20年程前、小学生の時にクラスでアンケートを取った結果では、ヤクルトや近鉄といったごく少数の意見を除いて、クラスは中日ファンと巨人ファンが同数で真っ二つにわかれました。
あくまでも主観ではありますが、この結果は素直に名古屋っ子の傾向を表していると思います。そもそも、プロ野球の好きなチームとはどのようにして決まるものなのでしょうか、考察してみます。
親の影響
これはかなり強いと思います。幼い頃から親が巨人戦ばかりをテレビで観戦していれば巨人に親近感を覚えるでしょうし、親子の会話も巨人が中心となるでしょう。親が野球に感心が無ければその子どもも自然とそうなる場合が多いのではないでしょうか。逆に、親子関係がうまくいっていない場合は、親が巨人を応援するから子どもは巨人が嫌いということになるでしょう。
生で観た
これも親の影響の一端ですが、ナゴヤドームにしょっちゅう連れて行かれて、中日戦ばかりを見ていれば自然と選手の名前を覚えるでしょうし、好きになるでしょう。私が幼い頃はまだナゴヤドームが無くナゴヤ球場でした。ナゴヤ球場はドームに比べると席数が少なく、巨人戦ともなればプラチナチケットと呼ばれ当時はチケットを入手するのが非常に困難でした。
それでも息子に野球を見せたい私の父親は、当時ナゴヤ球場で年に数回開催されていた、近鉄バファローズの試合に私を連れて行ったのでした。ですので私は少年時代、もちろんドラゴンズは好きでしたけれど近鉄ファンでもありました。リーグ優勝をかけた1988(S63)年10月19日のロッテとのダブルヘッダー、私は必死になって大阪のラジオの電波を拾い、ラジオにかじりついて聞いていました。
▲かつてよく足を運んだナゴヤ球場。
その後、ナゴヤ球場からナゴヤドームになると、なぜか近鉄は名古屋で試合を行わなくなり、かわりにオリックス主催試合が行われるようになりました。当初は地元出身のイチロー選手が在籍していたこともあり、名古屋にオリックスファンがちらほらと増えました。
テレビや新聞
テレビで中継されている。これもファンになる要素としては大きいです。地元に野球チームが無い地域では、巨人ファンが圧倒的に多いのはこれによるものです。現在は数試合NHKに回されていますが、巨人戦のテレビ中継は2003(H15)年まで系列の日本テレビが全試合の権利を握っていて、必ず全国ネットで中継するために地方では巨人戦のみが放送されるという状況になります。
球場に直接見に行くことができない地域では、テレビの巨人戦のみがプロ野球との接点になりますから、巨人ファンになりやすいのです。また、巨人を経営する読売新聞は紙上で巨人を中心に扱うのは当たり前です。その読売新聞は日本一の発行部数を誇るわけですからこれも理由としては大きいでしょう。
それに対し、名古屋では中日ドラゴンズを経営する中日新聞のシェアが85.6%を占めています。もちろん中日新聞には毎日ドラゴンズの情報が掲載されます。対する読売新聞のシェアはわずか2.2%です。(2002(H14)年3月調査の世帯到達率)ドラゴンズ応援新聞とも言える中日スポーツのスポーツ紙シェアも東海3県で86.0%を誇ります。
独特な中日戦のテレビ中継事情
名古屋に限らず、地元に野球チームがある関西、広島、福岡などでは全国ネットの番組を休止して、地元球団の試合を中継することがあります。特に東京のテレビ局が巨人戦を中継する場合は、同じ野球中継ということでスポンサーの説得がしやすく、地元球団の試合に容易に差し替えが可能です。しかし、ここで名古屋には他の都市には無い特殊な事情があるのです。
巨人戦のホームゲームはほとんど日本テレビで放送され、名古屋では中京テレビがネットします。対して中日戦のホームゲームは東海テレビ、CBCテレビ、三重テレビ、テレビ愛知の中日新聞系列のテレビ局に独占されていて、中京テレビで放送されるということはありません。ですので巨人戦を中日戦に差し替えるということは名古屋では少なく、中日戦も巨人戦も両方放送されるケースが多いのです。
▲ナゴヤドームでは、ジャイアンツグッズも結構売ってます。
強いから
これはもう単純に強いから好き、というものです。1950(S25)年に2リーグ制となって以降、ペナントレース、日本選手権シリーズは55回行われていることになりますが、55回中30回もセントラルリーグを制覇しているのが巨人です。その強さは圧倒的です。特に1965(S40)年から1973(S48)年の9年連続優勝、9年連続日本一という記録が塗り替えられることは今後無いでしょう。対する中日は1954(S29)、1974(S49)、1982(S57)、1988(S63)、1999(H11)、2004(H16)年とリーグ優勝が6回、日本一は1954(S29)年の1回のみです。
▲ナゴヤドーム。巨人戦となれば、結構巨人ファンも集まります。
主役だから
野球を題材にしたアニメといってまず思い浮かぶのは「巨人の星」。タイトルから巨人です。アニメのキャラクターに対する憧れがそのまま実際のプロ野球に繋がり、アニメの主役=プロ野球の主役という図式を子どもの中に芽生えさせるのは容易です。ちなみに、巨人の星は私が生まれる前のアニメなので、私はリアルタイムでの記憶はありません。私が中学生の頃は「ミラクルジャイアンツ童夢くん」というアニメが放送されていて、それなりに人気がありました。やはり主役は巨人です。放送されたのは両方とももちろん日本テレビです。
監督・選手が好きだから
この理由でファンになる人は、その監督や選手が移籍すると好きなチームも変わってしまうので流動的です。その分チームに対する思い入れが薄くなるので、チームの熱狂的なファンとはなり得ないでしょう。でも、それをきっかけにチームにのめりこむというパターンもあることはあるでしょう。
このように理由をいくつか挙げて見ていくと、やはり名古屋では中日ファンと巨人ファン、そして若干のオリックスファンが形成されてきたことがおわかりいただけたと思います。
中日に名古屋を重ねる
中日と巨人には共通点があります。それは両方とも親会社が新聞社であるということです。それによりテレビ中継も系列会社でほぼ独占されています。マスコミ代理戦争と呼ばれることもありますが、読売新聞は発行部数トップの全国紙。新聞業界でもガリバーなのです。そこに果敢に挑戦する地方ブロック紙。この構図が思い浮かびます。
そしてもうひとつ言われるのが、地方対中央の構図です。巨人は東京がフランチャイズであるものの全国区です。全国を支配する東京の力。巨人は中央集権の象徴でもあるのです。それを打ち崩す地方ローカル球団、中日。中日が巨人に勝つことに、名古屋が東京に勝つという姿を名古屋っ子は重ねているのです。
以前、名古屋っ子には相反する二つの気持ちがあるということを書きました。それは東京に対する「コンプレックス」と「憧れ」です。実はこれが名古屋っ子の好きな野球チームに大きく影響しているのではないでしょうか。つまり、東京に対して憧れよりもコンプレックスが強い人は中日ファン。コンプレックスよりも憧れが強い人は巨人ファンになると言えるのではないでしょうか。
もしこの説が正しければ、名古屋から上京し、東京で生活しているにもかかわらず中日ファンを続けている人々は、東京に対するコンプレックスを抱きつつ、それを抑えながら東京暮らしをしているということになります。巨人を打ち負かす中日を見ることで、普段抑圧されている気持ちを晴らしているのでしょう...。
▲中日ファンに、強烈なアンチ巨人が多いのはやはり...。