
- 名古屋が県域放送を召上げた!?送信所が空襲で廃止…津局の歴史
- 初代マスコットキャラクターの名前と姿が今も残ってる!
- 明治時代の面影と最新が融合した新放送会館はいつできる?
老朽化と災害対応で移転予定
少し前から新局舎に移転するという噂がある三重県津市にあるNHK津放送局。現在の日本放送協会津放送会館は1973年(昭和48年)に建設されたもので、既に半世紀以上の時間が経っているだけでなく、津波浸水想定区域に立地していることから移転を決定したとのこと。
一時期は県域テレビ放送を名古屋から召上げられていた…送信所が空襲で燃えてしまった…といった津局の歴史などを振り返りつつ、現局舎と新局舎の予定地を見に行ってきました。

もとは放送局ではなく受信サービスセンター
NHK津放送局の開局日は1940年(昭和15年)9月1日となっていますが、この日に開設されたのは「津出張所」でして、NHKのラジオ受信をサポートするサービスセンターとしての扱いがメインでした。電波を初めて発射したのは1942年(昭和17年)1月のこと。出力50Wで「津臨時放送所」としてラジオの放送を開始、10月15日には「上野臨時放送所」も開設され津と上野の2局体制となるのですが、電波管制のため内容はすべて東京からのものでした。そして津の放送所は1945年(昭和20年)7月28日に空襲で消失してしまいそのまま廃止となります。

県域テレビ放送ができなかった10年間
戦後、津出張所は津支局、そして津放送局に改称され、ようやく独自の電波を発射するのは1970年(昭和45年)4月6日のこと。三重県域のFMラジオの放送を開始します。そして1973年(昭和48年)4月2日には三重県域のUHFテレビ放送を開始するのですが……。
NHKの調査で、三重県と岐阜県の過半数の世帯で県域のUHFテレビ放送ではなく、NHK名古屋放送局のVHFテレビ放送が見られているということがわかり、1992年(平成4年)になると「NHK東海 UVスルー体制・東海圏広域放送化施策」が実施され、津局と岐阜局の県域テレビ放送は事実上廃止となり、テレビスタジオは倉庫になってしまいます。

NHK津の県域テレビ放送が無くなってから10年の月日が経った頃。地上デジタル放送では住んでいる県のNHKの放送が優先的に受信される仕様にできるということで、2002年(平成14年)春に週1回の三重県域ローカル番組が復活。その年の10月からは毎日7分の三重県域ニュース番組が復活し、再び夕方のニュースが三重県域となるのです。現在は「まるっと!みえ」が放送されています。

どーもくんにななみちゃんにみうみくん
NHK津放送会館には、伊勢海老仕様になったNHKマスコットキャラクターの「どーもくん」や、海女さん仕様のNHKBSイメージキャラクター「ななみ」ちゃん、さらにNHK津放送局キャラクターの「みうみくん」「えびニキ」の姿があります。

ロビーには見学スペースが設けられていまして、みうみくんのショートアニメを見ることができます。みうみくんの声は三重県桑名市出身の声優・小松未可子さん、えびニキの声は子安武人さんです。
さらに、ロビーの奥には「8Kみえ~るシアター」があり迫力の8K映像を楽しむことができます。

「みえ~る」といえば
そこでふと思い出したのです。2021年(令和3年)春に登場した「みうみくん」の前に、「みえ~るくん」というキャラクターがいたことを。みえ~るくんはNHK津放送局の初代キャラクターで、三重県で地上デジタル放送がスタートした2005年(平成17年)に登場。今もシアターだけに名前が残っているのね……と思ったら。
なんと、津放送会館の側面に今も描かれているじゃないですか。ちゃんと初代キャラクターとして「みえ~るくん」の姿を今もとどめているのですね。先代のキャラクターもずっと残るのですね!と思ったのですが。

新局舎は津駅西口の偕楽公園近くに
NHK津放送会館には建て替え計画があるのでした。ではその建設予定地に行ってみましょう。場所は津駅西口から歩いてすぐ、偕楽公園と県道に挟まれた場所です。現在は更地になっています。

100年以上前の階段が残される?
建設予定地にかつてあった旧・三重県立博物館は、1907年(明治40年)に開催された博覧会「第9回関西府県連合共進会」のメインパビリオンだった「三重県勧業陳列館」の跡地に建っていたのですが、その正面玄関の階段は博覧会当時のものだったというのです。今は工事のために仕切りがあって見えませんが、どうやらその階段は残されているように見えます。
もし残されるのであれば、NHKの新津放送会館は100年以上前からある歴史的な階段を上った先に最新鋭の放送会館が建てられるということになりますね。

スケジュールは延期を重ねている
2007年(平成19年)まで旧・三重県立博物館があった場所に、NHKが新放送会館を建設することについて、NHKと三重県が2017年(平成29年)に基本合意を締結。2023年度(令和5年度)に建設着工し、今年度(2025年度)新局舎から放送を開始するという予定だったのですが……まだ更地です。
実は「新津放送会館の建設基本計画の修正」が行われ、着工も延期を重ねているという状態なのです。逆の見方をすれば、半世紀前の津放送会館をもう少し見られる猶予があると言えます。

とはいえ、ここ数年の間には移転することは間違いないわけで、その時には新局舎には初代キャラクターのみえ~るくんは転生しないかもしれないなあと思うとともに、ひょっとしてキャラクターも3代目になったりする?と思ったり。
もっと古い岐阜は建て替えの計画すらない
ちなみに、津放送局と岐阜放送局は開設日も同じで、津放送会館が1973年(昭和48年)竣工なのに対して、岐阜放送会館はさらに古く1967年(昭和42年)11月竣工なのですが、岐阜は津波の心配もないためか建て替え計画もありませんね。

大阪周辺の県域のNHKの放送局に比べて、津と岐阜は扱いが軽いと言いますか、名古屋偏重が強い気がするのですが、三重県ではケーブルテレビでNHK津だけでなくNHK名古屋のテレビ放送も流されていますし、NHK自身もかつては住民の要望等によって岐阜県の半分で岐阜局ではなく名古屋局の放送を流していたということもったわけですから、住んでいる人の意識がそうなのかもしれませんね。それはまた別の機会に。
参考文献
NHK年鑑
三重県総合博物館ウェブサイト




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