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第17回
ちょっとほろ苦い!?海老ふりゃあ
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2004.03.20 |

海老ふりゃぁは名古屋名物では無かった |
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「海老フライ」

私は幼い頃から良く食べていましたが、名古屋の食べ物だという意識はありませんでし
た。実際、海老フライは全国どこへ行ってもありますし、冷凍食品としても一般的で大手
メーカーから発売されています。海老フライは名古屋名物と言えるのでしょうか。

現在では名古屋名物としての地位を着々と固めつつある海老フライ。しかしその歴史は
浅く、きっかけは20数年前の出来事でした。それはタモリさんです。彼は20数年前、名古
屋で「海老フライ」のことを「海老ふりゃぁ」と言っているのを耳にし、それをネタにし
たのでした。その「ふりゃぁ」という語感が名古屋弁の特徴をよく表現できていたことも
あり、それにまつわる名古屋の嘲笑ネタは一気に全国へと広がり、名古屋と言えば海老フ
ライというイメージが出来上がるほどになりました。

しかし、実際に地方の人が名古屋へやってきても、当時は海老フライが特に名物という
わけではなかったので、海老フライの専門店を見つけることは困難を極め、海老フライを
口にすることなく帰路につくという人がほとんどでした。

日本全体の平均ですが、一人が年間に消費する海老の量は2.3kgでアメリカの2倍。もち
ろん世界一です。名古屋が特にというわけではなく、日本全体が海老好きなわけです。こ
の2.3kgを海老フライに換算すると80匹。日本人は平均して4.5日に1回は海老フライを食べ
ていることになります。もちろん、海老の消費が全て海老フライというわけではありませ
んから、実際の数字はこれよりも少ないと思います。

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まんざら無縁なわけでもない |
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では、名古屋と海老の間には全く関係が無いのかと言うと、実はそうではありません。
どこの県にも県の花や県の木といったものがありますが、愛知県の魚は「クルマエビ」で
す。エビ科の節足動物を魚と呼んで良いのかどうかという話もありますが、三重県の魚も
「イセエビ」なので、それはこの際抜きにして、どうして愛知県の魚がクルマエビに決ま
ったのかを調べてみました。

まず、クルマエビは愛知県の沿岸又は内水面で生産されその漁が相対的に多いこと。次
に、生産量が全国的に上位であること。そして県内で消費者に広く親しまれ、知名度が高
いこと。さらに現在及び今後、資源拡大を積極的に推進する主要魚種となり、県水産業の
イメージアップとなると期待できることから、「愛知県・県の魚選定委員会」にて満場一
致で選定されました。

確かに漁獲量も生産量も多く、消費量も全国平均を上回ることからこれらの理由は納得
できるのですが、ただひとつ引っかかるのが、県の魚にクルマエビが選定されたのは1990
(H2)年のことで、比較的最近であるということです。実は、タモリさんが「名古屋=海老
フライ」というイメージを作った後、それは、もともと印象の薄かった名古屋のイメージ
のひとつとして、全国に浸透し始めたのです。それを利用しない手は無いと、名古屋は海
老フライを名物へと仕立て上げていくのです。

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| ▲今や名古屋のおみやげやさんにはエビフライグッズが並ぶ…。 |
嘲笑ネタを利用せよ |
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タモリさんがネタにしたのが20数年前、その後時期的にそういった気運が高まりつつあ
ったからこそ、県の魚をクルマエビに制定したのではないでしょうか。確かに、愛知県と
言って思い浮かぶ魚などありませんし、名古屋の海老フライの知名度は高まりつつありま
した。また、名古屋城のシンボルである金鯱に、どことなく海老フライとの共通点がある
気もしないではありません。

そしてその勢いはエスカレートしていきます。タモリさんに揶揄された名古屋の反撃、
いや便乗商売です。もともと名古屋の名物料理に味噌カツがあります。カツのお店には当
然フライヤーがありますので、海老フライを調理することができます。そして生まれたの
がカツ屋さんの「巨大エビフライ」です。いくつかのお店が出していますが、なかには30
センチを越える海老フライを出す店もあります。しかしそれは珍しいことではなく、名古
屋の洋食屋さんに入れば、30センチとは行かなくとも大きな海老フライがメニューとして
大抵はあるというところまで、海老フライは名古屋名物としての地位を高めたのです。今
では、名古屋に来て海老フライを食べられずに帰るといった事態は起きません。

しかし、海老フライには赤味噌をつけるという話を聞きません。とんかつにも赤味噌を
つけ、何にでも味噌をかけようとする名古屋っ子も海老だけには合わなかったからなの
でしょうか。ひょっとしたらその味噌の味の濃さで、海老の風味が消えてしまうからかも
しれません。もしそうなら、他の食材の風味についてはどう考えているのでしょうか…。
しかし海老フライを名物にしようと思ったときに、味付けや調理方法ではなく、ただ衣
をつけてつけて巨大にすればとにかく名物になるだろう、というのはちょっと安直すぎ
やしませんか…。それがシンプルでおいしいのかも知れませんけど。

今では海老フライのぬいぐるみ、携帯ストラップをはじめ、キティちゃんまでもが海老
フライに乗っかっています。今日、海老フライはすっかり名古屋名物として定着したので
した。

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天むすと聞いて名古屋っ子が思い出すこと |
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さて、名古屋にはフライ以外にも有名な海老の食べ物があります。愛知県の知多半島と
渥美半島に挟まれたちょうど真ん中、三河湾に面する一色町という小さな町があります。
この町、なんと「海老せんべい」の生産量日本一を誇る町なのです。アカシエビと呼ばれ
る体長数センチの海老を原料としていて、漁獲したその日のうちにせんべいになってしま
います。一色町にある一色さかなセンターでは、新鮮(?)な海老せんべいを買うことがで
きます。他にも美浜町には「えびせんべいの里」という試食食べ放題、コーヒー無料で飲
み放題の直売店があります。また、東海市にある「坂角総本舗」の海老せんべい「ゆかり」
は江戸時代から贈答品として利用され、名古屋の高級なお土産として今もその地位は揺
るぎません。

まだまだ名古屋には、海老を使った名物があります。「天むす」です。天むすと
は、おにぎりの頭頂部に海老の天ぷらが差してあるもので、片手で気軽に一口で、海老の
天ぷらとおにぎりを食べられるという合理的な食べ物です。天むすはもともと三重県津
市にある天ぷら料理店のまかない料理で、それを商品化したものです。天むすという名は
その元祖「めいふつ天むす千寿」の登録商標となっています。店舗は発祥の地である津
市と名古屋市内にしかありませんが、2005(H17)年に開港する中部新国際空港に出店が決
まっています。

それにしてはこの天むす、今では全国的に名古屋名物として知られているだけではなく
実際に各地で販売されていますが、それは他に「天むす」を全国展開しているお店がいく
つかあるからです。最初に全国展開をしたのが、現在東京駅でも販売している「天むす・
すえひろ」です。その名を聞いて、名古屋っ子なら必ず思い出すことがあります。

それは、この「天むす・すえひろ」の社長を務める末広真季子さんについてです。彼女
は1970(S45)年、大阪万博のテレビレポーターとしてデビュー。その後1973(S48)年から
1993(H5)年まで東海ラジオの「真季子とともに」のパーソナリティとして親しまれました。
その間の1986(S61)年に「天むす・すえひろ」を設立し、名古屋の味天むすを全国に広めた
のでした。

そんな末広さんは参議院議員選挙に立候補します。1995(H7)年、愛知万博反対を掲げ、
無組織、ボランティア、無党派をキーワードに万博反対派の支持を広く得て見事当選を果
たしたのです。

しかしその3年後。1998(H10)年に突如自民党に入党。自民党は、もちろん愛知万博を
推進していました。その際記者から「万博に反対して当選したあなたが、なぜ万博推進の
自民党に鞍替えするのか」「万博反対派に対してこれをどう説明するのか」と飛ぶ質問に
末広さんはさらりと答えたのでした。

さぁ、あなたも「愛・地球博」の新聞記事やニュースを見ながら天むすを頬張り、末
広さんの名言を言い放ってみましょう。

「万博?いい方向に向かってるじゃないですか。」

その後、末広さんは2001(H13)年の参院選に自民党比例で出馬するも落選。
 万博会場にもし「天むす・すえひろ」が出店していたら全ての謎は解けますね。なるほどそれが「いい方向」だったのか、と。さすがにもう出店はしないかな。 ※結局出店はありませんでした。

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| ▲えびせんべいの里は試食食べ放題、コーヒー飲み放題。 |
▲元祖、めいふつ天むす千寿の天むす。きゃらぶきが必ず添えられます。 |
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| ▲「♪あなた〜の土曜日〜、真季子〜とともに〜」というジングルが懐かしいです。万博見に来るかな…? |
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