おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 の第27回です
新聞は中日
これは、名古屋市内を走るラッピングバスに書いてある言葉です。それはもちろん中日新聞の広告なのですが、他の新聞があれこれキャッチコピーを練っているのに比べ、実に単純かつ傲慢に見えるかもしれませんが、実際この地方での中日新聞のシェアは圧倒的で、新聞と言えば無条件に中日のことを指します。
名古屋御三家・中日新聞
2001(H12)年3月調査によりますと、名古屋市内の新聞世帯到達率は中日が85.6%、以下朝日が8.8、日経が4.1、読売が2.2、毎日が1.2と中日が2位の朝日に大差を付けてトップとなっています。中日新聞は愛知県全体でも80.7%、県紙岐阜新聞がある岐阜県でも74.9%、三重県では63.3%となっています。三重県は伊賀地域の関西志向が高く、朝日新聞が25.5%となっています。
また、中日新聞の2001(H12)年7~12月の平均部数を、世帯と事業者数合計で割ってみますと、愛知県は60.1%、岐阜県51.4%、三重県45.4%と落ちます。やはり会社では全国紙を購読する傾向が高いようです。それでも中日がトップシェアなことに変わりありません。
地元紙が強いのは名古屋に限ったことではありませんが
しかし、地元の新聞のシェアが高いのは中日新聞に限ったことではなく、地元紙がトップシェアで無い県、つまり全国紙がトップシェアとなっているのは茨城・埼玉・千葉・東京・神奈川・滋賀・大阪・奈良・和歌山・山口の10都府県に留まっています。これらの地域には有力な地元紙が無いという事情もあります。
中日新聞と名古屋文化はリンクする
三重県の伊賀地域同様、中日新聞のシェアは名古屋の力の強さと比例します。中日新聞と中日新聞東京本社が発行する東京新聞を合わせると、愛知・岐阜・三重・静岡・長野・滋賀・富山・石川・福井そして関東1都6県で発行されていますが、愛知・岐阜・三重を除いてはそれほどシェアが高いわけではありません。発行部数でトップになっているのはこの3県のみです。
新聞には県紙と複数の県をカバーするブロック紙、そして全国紙がありますが、中部と関東という人口集中部をカバーするブロック紙である中日新聞の発行部数は多く、ブロック紙では当然トップ、全国紙と比較しても読売、朝日、毎日に次いで4位となり日経、産経よりも発行部数は多いのです。
読売が名古屋に捨て身のアタックをしたことがあった
先述のとおり、地元の新聞が強いのは名古屋だけではありません、しかし、名古屋では中日新聞に比べ全国紙が弱すぎるのです。特に顕著なのが読売新聞です。いくら世界でトップの発行部数だろうが、名古屋で読売新聞をとっていると言えば、余程の巨人ファンか景品目当て、もしくは物好きかと言われるくらいです。世帯到達率が2.2%なのですから。
読売新聞は名古屋に進出する際、「中部読売新聞」と地元密着の名称にしたり、ダンピングを行ったり、毎月長島温泉の入場券や巨人戦のチケットを配ったりといろいろと策を練ってきたのですが、シェアが伸びることは無く、結局中部読売新聞社は読売新聞と統合され、現在では他地区同様「読売新聞」の名で発行されています。ちなみにダンピングは緊急停止命令を受け、中部読売新聞不当廉売事件と呼ばれました。
▲圧倒的なシェアを誇る中日新聞。本社は意外と地味。
マスコミ代理戦争
名古屋では中日ドラゴンズが圧倒的に人気があります。中日のライバルと言ったらもちろん巨人です。そこには対東京、対全国区という思いがあるのです。名古屋っ子には東京に対して特別なライバル心があることは先述のとおりです。そして、読売新聞のジャイアンツと中日新聞のドラゴンズ、これはマスコミの代理戦争、全国紙対ブロック紙の戦い、名古屋対全国の戦いでもあるのです。
これは「卵が先か鶏が先か」という話になってしまいますが、幼い頃から家に中日新聞や中日スポーツがあり、テレビでも毎日中日ドラゴンズ戦が放送されていれば、どう考えたってドラゴンズファンになります。これは、地元球団の無い地域に巨人ファンが多いのと同じ理屈です。読売新聞は全国トップの発行部数、そして巨人戦は全国ネット。全国に巨人ファンが多くなるのは当たり前、名古屋に中日ファンが多いのは当たり前なのです。
ドラゴンズと名古屋
中日新聞が発行する中日スポーツも発行部数が多く、名古屋では中日新聞に次いで2位、他の全国紙よりも上回ります。また宅配率も高く、スポーツ紙が一般家庭で多く読まれているという珍しい地域でもあります。そのため、他のスポーツ紙では当たり前のように載っている風俗広告が中日スポーツには掲載されません。中日スポーツは純粋にドラゴンズを応援する新聞なのです。
このドラゴンズの人気の高さが、非中日系のマスコミにとって悩みの種なのです。ドラゴンズは中日新聞直系の球団であるため、テレビ・ラジオ放送についても中日系マスコミで独占されています。広島や阪神、ダイエーといった地方球団の試合は、その地方のテレビ局各局で満遍なく放送されているのですが、中日の主催試合はCBC、東海テレビ、テレビ愛知、三重テレビという中日新聞系放送局に独占されています。
▲中日新聞です。もちろん我が家にも毎朝・夕届きます。
中日新聞でなければ…ダメなんです
ところで、中日新聞にはもちろん全国ニュースも掲載されていますが、地元のニュース関しては圧倒的な取材網を持っており他紙を寄せ付けません。しかも、些細なことでも記事になるため、名古屋で何かやらかすと他の地域ではニュースにならないようなことでも必ず中日新聞に掲載されるので注意が必要です。
折込チラシも中日に集中
また、これだけ中日新聞のシェアが高いと折り込み広告も中日新聞に集中します。我が家でも一度、景品の魅力に惹かれ一時期朝日新聞を購読したことがありましたが、困ったのはその折り込み広告の少なさです。近所のスーパーも、電気店も、ホームセンターも中日にしか広告を入れないのです。3ヶ月後、我が家は中日新聞に戻りました。
そしてその時驚いたのが中日新聞販売店の対応です。朝日に切り替えるために中日を断ったわけですが、「あ、そうですか」の一言なのです。「どうしてですか」とか「そんなこと言わずにこれからもお願いしますよ」という言葉はありませんでした。それでも、結局我が家は中日に戻ったわけですけど…。
名古屋の街を歩いていると、中日新聞の販売店を多く見かけます。しかも、どこも立派で綺麗な建物に驚かされます。チラシの多い中日新聞販売店はどこもリッチです。週末ともなればその広告によって、中日新聞はポストに入らないほどの分厚さになるほどです。
お悔やみ欄を見ておかないと…
さて最後に、名古屋で営業職をやるのなら、絶対に中日を取らなければならないという話です。東京などでは、訃報があると新聞社の営業マンが料金表を持ってすぐに飛んできます。それは訃報広告を載せて欲しいからです。社会面には通夜や葬儀の案内が載っていますよね、そうですあの広告です。時には複数の新聞社が同時にやってくることもあるなど、その広告争奪戦は熾烈だそうです。
しかし、これも名古屋では中日の一人勝ちです。中日に載せれば八割の人に知れ渡るのですから。そのため他紙には訃報があまり載りません。営業職はこういった訃報に敏感にならなければなりません。取引先であれば電報や香典を用意し、場合によっては葬儀に出席しなければなりませんから。
「どうしてお前はここに電報を打っていないんだ。訃報が出てるじゃないか。」
「いや、知らなかったものですから…。」
「新聞も読んでないのか、お前は。」
「ウチ、読売なものですから…。」
「営業失格だ!」
私が取引先で聞いた上司と部下の会話です。
▲名古屋で中日以外をとっていると理由を聞かれます。テキトーに用意しておきましょう。親戚が勤めているだとか…。
コメント
北海道だと「道新」こと北海道新聞がそうなるのかな。
ただすべての地域でトップシェアを獲っているわけではなく、帯広では地元の「十勝毎日新聞(勝毎と呼ばれている)」がトップだという話を聞いてます。
かつては「北海タイムス」というライバル紙がありましたが、
道新と全国紙に挟まれる形でいつも苦戦していました。
晩年は経営者と社員との間で争いが絶えなかったとか。
倒産して10年以上経つかな。
我が家では道新とタイムスを交互に購読していましたが、いつのまにか道新になっていました。
(タイムスは父の学生時代の先輩が販売店を経営していたため)