何もかもが濃い-味覚の英才教育? 味噌ばかりではないけれど確かに味は常に濃いかもしれない

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ここまで色々と名古屋の味をご紹介してきましたが、なかでも赤味噌を使ったものが多い、いやそれがほとんどであるということがおわかりいただけたと思います。今回は、名古屋における酒のおつまみ事情から見ていきます。

赤味噌を使った料理は、先述の味噌煮込みうどんや味噌カツの他にもあります。時には酒の肴として、またある時はおかずの一品として登場するのが「どて」です。

関東煮も名古屋煮に

「どて」は、赤味噌で牛すじや牛もつをグツグツと煮込んだもので、見た目はお世辞にも綺麗とは言えません。味噌煮込みうどんでさえその色で引いてしまう地方の人にとっては、どてはもはや食べ物であるということを認めたくはない次元のものでしょう。色は赤味噌がさらに煮込まれて、もう例えるとしたら、汚い話ですが、お腹の調子が悪い時の…あれとしか言いようが無い色のところに、ゴロゴロとグロテスクな肉が転がっているのです。他に具としてはコンニャクやごぼう、隠し味にショウガのかけら、そして刻みネギをかけていただきます。

どては大鍋で煮込む際、鍋の内側に赤味噌を土手のように塗ることからそう呼ばれるようになったと言われています。お店や家庭によっては具を串に指すところもあります。香りや肉の食感が良く、味も赤味噌と牛肉がマッチしてたまりません。

これをご飯にかけた「どで飯」もよく食べられます。お店によってはこの土手鍋に串カツを入れたりする人もいますが、それだけには留まりません。

どて
▲これが「どて」です。冷静に考えるとすごい色してますよね。

関東煮でも味噌

名古屋ではおでんにも味噌をつけます。はんぺん、ゆで卵、コンニャクなどをだし汁で煮込んだおでんのことを、名古屋では「関東煮(かんとうに・かんとうだき)」と言うのですが、これにカラシ以外に味噌だれをつけて食べます。

お店によっては、無条件で味噌がかけられている場合があります。この味噌だれは、赤味噌と砂糖を煮詰めたものでかなりの甘味があります。ちなみに、名古屋で言う「はんぺん」は「さつま揚げ」のことで、東京のおでんに入っている白いはんぺんは名古屋にはありません。なぜかはわかりませんが、赤味噌との相性が悪いからかもしれません。

がっつり味噌の味噌おでん

さて、そのおでんをさらに進化させたのが「味噌おでん」です。要は、先程の土手鍋におでんだねを全部入れてしまうのです。ゆで卵は色が茶色っぽくなり、赤はんぺんは赤茶色に変色します。他にも冬の鍋料理として「牡蠣の土手鍋」があります。こちらも基本的な調理方法は一緒なのですが、牡蠣の場合のみ、白味噌を少し混ぜることが多いようです。あわせ味噌と牡蠣と焼き豆腐が、深い味を繰り広げます。

赤味噌に親しみの無い方からは一体どんな味なのだろうと思われそうですが、実際味の濃さは半端ではありません。だから全てが酒のつまみになるのです。さらにはそのお酒も辛口が好まれ、各ビールメーカーが名古屋工場で製造していた地域限定ビール「でらうま(キリン)」「名古屋仕込み(サッポロビール)」も味が濃かったと言われています。私は下戸なのでわからないのですが…。

味噌おでん
▲味噌おでん。ゆで卵が味噌の色に染まっています。

専門の居酒屋チェーンまである手羽先

味噌料理以外にも濃い味の料理が続きます。私が居酒屋に行くと、必ず注文するのが「手羽先の唐揚げ」です。関西へ行った時、手羽先を注文したら煮付けが出てきて驚いたことがあります。名古屋で手羽先と言えば唐揚げしかありません。味付けは醤油とみりんと砂糖、そして揚げたあとに濃い塩コショウとゴマがふりかけてあります。名古屋の居酒屋さんでは必ずと言って良いほどあるポピュラーなメニューですが、それを専門に扱っているお店があります。

それが「風来坊」と「世界のやまちゃん」です。

手羽先の元祖は風来坊です

風来坊は、テレビCMでも「元祖手羽先は風来坊です」と長年アピールしており、その独特な味のタレを他の店が真似することはできません。一度食べたら病みつきです。やはり味はかなり濃く、コショウがたくさんかかっているせいか最初は「ケホッ」と小さく咳き込んでしまうほどです。風来坊はチェーン展開していますが、その味にこだわりを持っていて、暖簾分けという形でしか出店をしないそうです。店舗網は愛知・岐阜・三重・富山に留まらず北海道、茨城、埼玉、大阪、九州の一部にまで広がっており、事情があって名古屋を離れなければならなくなった名古屋っ子の生命線となっています。

さらにはアメリカ・ロサンゼルスにも4店舗を出店していますので、もし手羽先の禁断症状がアメリカで出てしまったときには、ロサンゼルスへと急ぎましょう。

ネーミングで知名度アップ・世界の山ちゃん

風来坊と双璧をなしているのが「世界のやまちゃん」です。社長のやまちゃんに鳥の羽が生えた似顔絵のイラストが目印です。こちらは名古屋市内の出店がほとんどですが、関東にも数店進出しています。味は風来坊に比べて甘辛いという印象があります。スパイシーさでは欠けますが、味自体はさらに濃い気がします。

どちらの手羽先が好きかと言うのは好みがありますが、私の場合は全く別の食べ物と考えています。「今日は手羽先が食べたいから、風来坊とやまちゃんどちらに行こうか。」ではなく、風来坊とやまちゃんは最初から別のものとして考えています。

風来坊は鳥料理専門店という位置付けでメニューにも偏りがあるのですが、やまちゃんはメニューの幅が広いので、一緒に行く人の嗜好によっても使い分けをします。どちらにしても味の濃さは半端ではありません。知らないうちに飲物がどんどん進んでいきま
す。

手羽先
▲風来坊の手羽先。名古屋三越栄本店の地下にはお持ち帰り専門店。

名古屋名物全てをアレンジ

ところで、その手羽先をあるものと融合してしまったメーカーがあります。それは茶っきり娘本舗です。ここはジェラートを作っている会社です。まさか…、そうなんです。ここには「手羽先アイス」が存在するのです。しかも使用しているのは名古屋コーチンの手羽先。アイスクリームと鶏肉の融合。普通の発想では思いつきません。

しかしこの会社、それだけでは留まらなかったのです。マイナス30℃でも柔らかいきしめんを開発し商品化した「名古屋きしめんアイス」。有機栽培の味噌をバニラとブレンド、香り豊かな「八丁味噌アイス」。八丁味噌アイスはなんと愛知県観光土産品協会長賞を受賞しています。さらに、甘海老の風味をそのまま活かした「アイスえび娘。」娘のあとに「。」があるのはひょっとして…。

この会社のホームページには、「名古屋の味こんなにあるゾッ!」と書いてあるのですが、「ゾッ」というところに、web担当者の主張が少し感じられる気がします。ちなみにこれらのアイス、名古屋市北区のお店だけでなく、東京池袋のナムコ・ナンジャタウン「カップアイス博物館」でも食べることができます。また、インターネットでも購入することができます。

これら4種類に愛知の特産季節のフルーツアイス、ナゴヤコーチンエッグアイスを加えた6個セットで2800円(税込・当時)です。興味のある方はぜひ。私は直接お店に買いに行きました。

名古屋アイス
▲斬新なアイスを製造している茶っきり娘本舗。通販もやってます。

名古屋限定モノのお菓子

さて、アイスだけでなくお菓子にも名古屋限定物があります。「プリッツ・八丁味噌味(グリコ)」「ベビースター・チキンみそかつせんべい・お菓子な小倉トースト・味噌煮込みうどん(おやつカンパニー)」「ジャンボおっとっと味噌煮込みうどん味(森永製菓)」「カール・うなぎひつまぶし味・名古屋コーチン手羽先の味(明治製菓)」

名前を見ただけで、どれも味が濃いことが容易に想像できます。これらの限定品は、名古屋でも街中のお店にはあまりなく、名古屋駅のキヨスクや高速道路のサービスエリアでしか見かけることがありませんので、普段から名古屋っ子がこういったお菓子を食べているわけ
ではありません。

でもこれって、本来お菓子のターゲットであるはずの子どもが好きな味とは到底思えないのですよね。味が濃いために、お菓子と言うよりもむしろ酒の肴としてピッタリです。名古屋へ出張の際には、手羽先を食べて、こういったお菓子をお土産に抱え、濃い味で疲れた舌を八丁味噌アイスで休めてあげてください。休まらないかな…。

赤味噌に順応することが名古屋に溶け込む第一歩

名古屋。味噌が嫌いな人にとっては地獄の街です。

さて、10回にわたって名古屋の食について見てきましたがいかがだったでしょうか。実際、名古屋の味に馴れることができず苦労している人を、私は何人も見たことがあります。そのうち、北海道出身の方でとにかく赤味噌がダメという人がいました。

私がいた会社の社員食堂は、毎日メニューが決められていたのですが「みそ煮込みうどん」や「どて」の日、彼は必ずあらかじめ「別メニューにしてください」と食堂のおばちゃんにお願いをしていました。やはり赤味噌が口に合わない人にとっては、赤味噌料理は何もかもが合わないのでしょうね。

また、東京へ行き10年経った元名古屋っ子の友人は、「最近みそカツを食べるのがつらい。」などと言う言葉を口にしました。名古屋を出たことで赤味噌に対する免疫力が低下しているのかもしれません。早急に対策が必要です。

タイでは、離乳食を食べ始める頃の赤ちゃんに唐辛子を食べさせる「辛いものはじめ」という儀式があるそうです。、名古屋でも知らず知らずのうちに「赤味噌はじめ」がどの家庭でも行われている可能性があります。

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▲味噌に馴染めないのは名古屋で疎外される第一歩。「くせになりみそー」というCMの味噌キャラメルで慣れよう!

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