おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 第5章 名古屋の言葉

名古屋の少年はこうして名古屋弁を失う

記事公開日:2004年11月20日

おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 第48回

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「たわけ」「やっとかめ」「だがや」

 最近は名古屋弁の言葉も一部は全国区になりつつあります。これは既出のとおり「Dr.スランプ」という鳥山明先生の漫画が大きく影響しているのはもちろんです。しかし、全国区といってももちろん全国的に使われているようになったわけではなく、名古屋弁として有名になったに過ぎません。名古屋っ子は上京したりすると名古屋弁が抜けるというお話をしましたが、今回はその理由をさらに深く考察してみます。

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名古屋っ子が名古屋弁だと思っていない名古屋弁

 名古屋弁のイントネーションは、基本的に言葉の最後にアクセントをつけます。「名古屋」についても、標準語では「名」にアクセントをつけるのに対し、名古屋では「屋」につけます。「イチゴ(苺)」の場合も、標準語では「チゴ」もしくは「イ」を強く言うのに対し、名古屋では「ゴ」だけを強く発音します。地名も「千種(ちくさ)」「栄」「名駅(めーえき)」「岡崎」「長久手」「栄」「伏見」全て最後の一音にアクセントをつけます。最後が「ん」で終わる「江南(こうなん)」でさえです。

 そういったアクセントが名古屋流のままだったとしても、上京した名古屋っ子は特に不便ではありませんし、それほど馬鹿にされることはありません。しかし、名古屋でしか通用しない言葉、他の地方では全く意味が異なる言葉を名古屋以外で使うと大きな失敗に繋がることがあります。さらにその言葉について、名古屋っ子が名古屋弁と意識せずに標準語だと思っていたら尚更です。いくつか具体的な事例を見ていきましょう。

<名古屋から東京に転校した小学生の場合>

 小学校時代の転校は、うまく馴染めないと仲間はずれにされてしまったりイジメに繋がることがあります。特に言葉の違いについては敏感ですので注意したいものです。

1.ほうか

転校先の子ども 「今日放課後遊ばない?」
転校名古屋っ子 「放課後?放課の後は授業だろ?サボるの?」

 名古屋では授業と授業の間にある休み時間のことを「放課」といいます。標準語の「放課後」に相当する言葉は名古屋では「授業後」「業後」になります。ですので「放課後の教室で...」というセリフを聞いてもイマイチ私はドキドキできません。

2.けった

転校名古屋っ子 「じゃあケッタで遊びに行くよ。」
転校先の子ども 「???」

 ケッタ。自転車のことですが、名古屋ではケッタという言葉を一般的に用います。「自転車」と言うより「ケッタ」と言った方が馴染みがありますし何より言いやすいですからね。地域や世代によっては「ケッタマシーン」「ケッタリング」「ケッタリングマシーン」「ケッタクリマシーン」などと呼びます。ここまでくると自転車と言ったほうが早い気がするのですが。

3.つくえをつる

転校先の子ども 「今日掃除当番だから、早くやって帰ろうよ。」
転校名古屋っ子 「なら、早く机つっちゃおうよ。」

 掃除のために机を後ろに下げたり、他の部屋に運んだりすることをなぜか名古屋では「机をつる」と言います。決してどこかに吊り下げるわけではありませんし、机を吊り下げるというシチュエーション自体が名古屋にあるわけではありません。

4.こわける、じょおぶい、やぐい、もんだで

「ドーン。」転校した名古屋っ子は机を運んでいる途中に転んでしまいました。すると机はバラバラに壊れてしまいました。そこで一言。

転校名古屋っ子 「机こわけてまった。やぐいなあ。じょおぶく作らんもんだで。」

 この一文に4つも名古屋弁が含まれています。名古屋では壊れること「こわける」といいます。そこには自分が壊したわけではなく、机が自発的に勝手に壊れたというニュアンスが含まれています。「やぐい」はモロい、壊れやすいの意味で完全な名古屋弁なのですが、「じょおぶく」は丈夫という形容動詞を強引に副詞にしたものです。形容詞化した「じょおぶい」もよく使われます。「じょうぶい」ではなく「じょおぶい」なのも耳につきます。そして最後の「もんだで」は直訳するすると「~ものだから」なのですが、名古屋っ子は何かと多用します。「おばあちゃんの肩を揉んだら手が痛くなった。」は「おばあちゃんの肩を揉んだもんだで手が痛なってまった。」になります。

5.びーし、だだくさ、ときんときん

 クラスのみんなで、模造紙を切った紙を使って発表をすることになりました。

転校名古屋っ子 「B紙(びーし)をそんなだだくさに切ったらいかんて。それに鉛筆ももっとときんときんにせな。」

「B紙」とはB0サイズの模造紙、「だだくさ」はいい加減とか無駄にすること、そして鉛筆がとがった状態のことは「ときんときん」です。名古屋っ子はこれらの言葉を名古屋弁と意識せず使っていることからなかなか抜くことができません。しかし、これだけ方言を連発すれば「はば」(=仲間はずれ)にされてイジメに遭いかねません。幼い名古屋っ子はこのようなカルチャーショックを次々と受け、次第に方言を使わなくなるのです。

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▲こうして少年は名古屋魂を忘れていく。中には逆恨みで名古屋が嫌いになってしまう元名古屋っ子もいるとか。

<名古屋から東京に転校した高校生の場合>

1.ふくらまかす、はぜる

転校先の高校生 「東京はなあ、小学生でもあんなことやこんなことやってるんだぜ。」
転校名古屋っ子 「うそだあ。そんなに話をふくらまかせんでよ。はぜちゃうよ。」

 名古屋では、なぜか「ふくらます」ことを「ふくらまかす」と言います。そして風船が破裂することを「はぜる」と言います。風船だけでなく、あんなことやこんなことに使うゴム製品も同じように言います。この場合「はぜる」ともう大変。

2.おぼわる、ちゃっと

転校先の高校生 「今度の模試の勉強してる?」
転校名古屋っ子 「やってもやっても全然おぼわらん。今日もちゃっと帰ってやらな。」
転校先の高校生 「え?勉強せずにチャットやるの?」

「覚えられる」ことを「おぼわる」、「覚えられない」ことを「おぼわらない」と名古屋っ子はいいます。最近は「食べられる」を「食べれる」、「見られる」を「見れる」といった「ら抜き言葉」が東京でも使われるようになりましたが、名古屋では昔からら抜き言葉が一般的に使われています。その進化系が「おぼわる」です。他にも「聞こえる」を「聞ける」ということもあり可能表現を短縮しがちです。そして「ちゃっと」は「さっさと」の意味です。なので名古屋では「チャットでは言葉をちゃっと打たないかん。」になります。

3.ばっか、どべ

転校先の高校生 「模試の順位ってズバリ出るから嫌だよね。」
転校名古屋っ子 「勉強ばっかしとるとイライラするけど...、でもドベは嫌だよね。」
転校先の高校生 「ドベ?」

 このふたつは広く西日本で使われることもあるようです。「~ばかり」を名古屋っ子は強調したいのか「ばっか」「ばっかり」といいます。それぞれのおかずを少しずつ順番に食べる「三角食べ」に対し、同じおかずばかりを食べていると「また、ばっかりご飯してる。」と怒られます。そして「ドベ」これは最下位、ビリの意味です。また下から二番目の「ブービー」のことを「ドベ2(どべに)」、三番目を「ドベ3(どべさん)」と言います。なので、中日ドラゴンズは最下位になると「今年はドベゴンズだ。」と名古屋っ子に野次られます。

4.しゃこう

転校名古屋っ子 「大学合格したら、しゃこうに通いたいね。」
転校先の高校生 「社交ダンスに興味あるの?」

「しゃこう」とは漢字で書くと「車校」で自動車学校の意味です。標準語では教習所ですね。ポケベルの時代も「485-2194(しゃこーに行くよ)」と名古屋では打たれていました。本当にどこかの電話番号みたいですが。もしこの「ポケベル言葉」の意味がわからない若い方は、近所の20代の人に聞いてください。何?「ポケベル」って何かって?もうそんな時代なのか...。

気づいた時、心に大きな傷を負う

 さてさて以上の言葉は、大抵の名古屋っ子が名古屋弁と意識せずに使っている名古屋弁の一例です。こういった言葉を東京で連発すればもちろん意味が通じないですし、何より田舎モノというレッテルを貼られてしまいます。言葉の違いを指摘された名古屋っ子は心に深い傷を負い、それまで標準語だと思っていた言葉がそうで無いことに気付き使わなくなるのです。こうして名古屋を離れた少年たちから少しずつ名古屋弁が消えていくのです。

 しかし、学生時代はそれで済むからまだいいのです。これが社会人になると大きな失敗に繋がってしまう言葉もありさらに注意が必要です。次回は名古屋から東京に転勤した社会人を事例に言葉をご紹介します。

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