結婚するのは家と家 娘3人持てば身上つぶれる?嫁をもらうなら名古屋から?

広告

イラスト>

娘3人持てば身上つぶれる

嫁をもらうなら名古屋から

昔からよく聞く言葉です。前回テレビドラマ「名古屋嫁入り物語」のお話をしましたが、実際に名古屋の結婚式は派手なのでしょうか。トラック何台分もの嫁入り道具を娘に持たせ、それを近所の人々に披露し、ガラス張りのスケスケなトラックに紅白の幕をつけて凱旋し、さらには集まった近所の人達に向けてお餅、お菓子などを娘の両親がばら撒く。そんなことが現在も日常的に名古屋では行われているのでしょうか。

名古屋の嫁入りも今や…

では、まずは具体的にデータを見てみましょう。結納から結婚式、披露宴、新婚旅行までにどれだけのお金をかけたかをアンケート調査し、それを地域別に平均したものがあります。2001(H13)年度の調査では、東京周辺では337.1万円、そして関西地区は317.7万円。

対する名古屋地区は374.6万円と確かに東京や大阪に比べ高くなっています。しかし東北地区は415.7万円、北関東地区は414.6万円と名古屋よりもかなり高い地域もあります。名古屋が結婚にお金をかけるという話は、もはや過去のものなのでしょうか。(リクルート社結婚情報誌ゼクシィ調べ)

過去はどうだったのだろう…

それでは、と過去のデータを紐解いてみました。1997(H9)年にブライダルサービス会社が調査したものがあります。これには結納から新生活準備費用までが入っています。それによりますと関東地区が589万円、近畿地区が643万円なのに対し、東海地区は757万円とずば抜けて高く、東北地区646万円を大きく上回っています。

さらに古いデータでは、名古屋は東京の2倍近い費用をかけていました。これらのデータは算出方法が違う為に先ほどの調査と単純に比較することはできませんが、結婚費用は年々減少していることは間違いないようです。

※最近の調査では、名古屋もほぼ平均となりました。

進む二極分化

私は20代後半ということもあり、身の回りで最近は結婚する人が多く、いくつか式に参加しました。名古屋での結婚式にしか呼ばれたことが無いので、東京などでの一般的な結婚式とどこがどう違うのか、比較することはできないのですが、取り立てて派手だなぁと思うことはありませんし、一緒に式に参加した他地域出身の友人に話を聞いても、「特に名古屋だからと言ってコレといったことは無いね。」とあっさり言われました。

ただ、この友人が驚いていたのは引き出物の大きさです。「これを持って新幹線に乗れって?」と困惑気味でした。いまだに風習として残っているのは引き出物が大きい、重いといったことくらいなのでしょうか。

結論から言いますと、今の名古屋の結婚式は完全に二極分化されています。つまり親がこだわるかどうかで、名古屋式の結婚式になるか、ごく一般的な結婚式になるかどうかが決まるというわけです。特に西尾張地域にその傾向が強いのですが、古くからそこに住む家柄のしっかりした家庭となれば、名古屋式を貫かなくてはならないのです。会社の社長令嬢であったり、いわゆる名士の娘であれば簡略化は許されません。

家具店
▲田園地帯でも家具店は巨大。もちろん嫁入り道具を多数展示。

名古屋式の結婚とは

運良く、私の大学時代の友人にそういった家柄のしっかりした人がいるので話を聞いてみると、「そうだね。うちはやっぱり菓子撒きもやらなきゃいけないだろうし、嫁入り道具披露もあるだろうね。」と言います。やはり名古屋式の結婚式は今もしっかりと残っているのです。では、名古屋式とはどういうものなのでしょう。

結婚は、結納、結婚式、披露宴と大きく3つの要素で構成されますが、名古屋式で最も重要なのが最初の結納です。最近では双方の両親が食事会という形で顔を合わせるだけで済ませてしまい簡略化されることが多いのですが、こだわる家柄ではそうは行きません。

名古屋の結納のしきたりは

まずは結納の前に、「きめ酒」「とっくりころがし」と言って、新郎とその両親が酒と肴を持参して、新婦の家を訪れる習慣があります。それによって両家が打ち解けた後、正式に家と家を結び納める正式な儀式、結納に進むのです。

ただ結納品は名古屋だからといって特に珍しいものはありませんが、ご紹介しましょう。まずは「熨斗(のし)」干し鮑を長く伸ばした「のし鮑」を略したもので、不老長寿を表わしています。熨斗は便宜上結納品全体の熨斗として扱われ、目録には加えられません。そして以下の7点セットが基本となります。

「結美和(ゆびわ)」以前婚約指輪は結納品に含まれていませんでしたが、外国の風習が定着し、名古屋式でもそれを受け入れざるを得なくなりました。「末廣(すえひろ)」白い扇子を2本で1対にしたものです。白は純潔・純真を、扇は末広がりを意味します。

「友白髪(ともしらが)」白い麻糸です。2人とも白髪になるまで仲良く長生きできるようにという意味がこめられています。「寿留女(するめ)」日持ちが良く、かつ噛めば噛むほど味がでるお嫁さんになってくださいという意味です。「酒肴料(しゅこうりょう)」は祝い酒のことですが、最近はその名目で現金を包みます。

「子生婦(こんぶ)」よろこぶ、そして子どもに恵まれる花嫁になるようにという願いがこめられています。そして7品目目が「小袖料(こそでりょう)」です。かつては花嫁衣装や帯地を送っていたのですが、現在はそのかわりに現金を包みます。いわゆる結納金にあたります。給料の2~3ヶ月分が一般的とされています。ちなみに酒肴料は小袖料の1割を包むことが慣習となっています。

小袖料の金額によっては、呉服地にハサミを入れず、反物で作った呉服細工の宝船(たからぶね)、目出鯛(めでたい)、家内喜多留(やなぎたる)、九谷焼(くたにやき)、高砂(たかさご)を加え、9品、11品とする場合もあります。これら結納品を花婿側が用意し、花婿と両親そして仲人が花嫁の家に向かいます。

イラスト
▲それでもやっぱり、結納をやる人は年々減っているそうです。

形式一辺倒ではない

ここで名古屋独特な風習が登場します。花婿側は結納品だけでなく、花嫁の家族それぞれにお土産を用意するのです。しかもそれは同じものではなく、花嫁の両親、兄弟、祖父母などそれぞれに応じたものを用意しなければなりません。

さらには花嫁の先祖へのお土産として、線香や白羽二重・紅白巻真綿を持参することもあります。そして結納品の目録は○○家から○○家という場合がほとんどで、本人同士というよりも、家と家、いや家柄と家柄が結びつく儀式であることがわかります。

結納返し・引出結納

そして結納返し、引出結納です。今度は花嫁側が花婿側に結納品のお礼とともに、娘をよろしくお願いしますという意味を込めて行われるものです。最近は結納と同じ日に済ませてしまう同時交換も多いようですが、基本的には嫁入り道具の荷送りと同時に行うことになっています。結納飾りの品は、花婿側から戴いた結納品よりも若干控え目な金額の品物を用意します。

末廣や友白髪は同じですが、新郎の家に対して送るので寿留女に対しては「錫(するめ)」か「勝男武士(かつおぶし)」、子生婦に対しては「昆布」となります。そして酒肴料は半額から同額を、結納金である小袖料に対しては「袴料(はかまりょう)」を、一般的には1割返しですが、名古屋では1割から3割の金額包みます。さらに結美和に対しては腕時計やスーツ、タイピンなどを送る場合が多いようです。

もう一度言いますが、これら結納を全ての名古屋っ子が必ず行うわけではありません。ただ、こだわる家は本当にこだわります。名古屋式では結納を重視しているので、結納品を専門に扱うお店が名古屋にはあります。そんなのは名古屋に限ったことだけではない、他の都市にだって結納品店はあると言われるかもしれません。

ところが名古屋の場合、一般的な商店街の中に個人商店として「○○結納店」というお店が存在するほどなのです。結納を生業として個人商店が生計を立てていけるほど、名古屋の結納に対する思いは特別なのです。

いよいよ次回は嫁入り道具の搬入についてです。もちろんそこにも多くのしきたりがあります。現金をばら撒いちゃいます。

関連情報

コメントはこちらから

Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました