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いつも世界の中心・名古屋。

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おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 第1回

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「名古屋」

 この街ほど、住んでいる人の意識とそれ以外の人が持つ印象とに温度差がある地域はあるでしょうか。いやそれは温度差程度のものではなく、名古屋という街自体が日本の中で浮いた存在なのかも知れません。最近東京へ度々出張に行く様になった私には、そう感じることがあります。

自己完結の街・名古屋

 私は28年前に名古屋で生まれ、その後名古屋のとなり街でずっと暮らしてきました。名古屋は日本三大都市圏(関東、関西、東海)の中心都市を担っており、なおかつ中京工業地帯の中心でもあります。それなりに経済力、民力もあり、大抵の分野については地元企業がそれを手がけていて、東京や大阪からの侵食をあまり受けることなく、長年自己完結の街でした。そのために存在が浮いているのかもしれません。

アピタ
▲名古屋っ子御用達スーパー・ユニーのGMS業態「アピタ」。

名古屋のローカル企業が大好き

 デパートは「松坂屋」、スーパーは「ユニー(アピタ)」、コンビニエンスストアは「サークルK」、ホームセンターなら「カーマ」、家電量販店は「エイデン」、銀行は「東海銀行(現在はUFJ銀行あえて旧名)」。車は「トヨタ自動車」で、電車は「名古屋鉄道」、そして新聞は「中日新聞」。

 ケチャップは「カゴメ」、缶コーヒーは「ポッカ」、パンは「シキシマ(現在はパスコ)」、醤油は「サンビシ、サンジルシ」、ソースは「コーミ」。ミシンは「ブラザー」、ガスコンロは「パロマ、リンナイ」。毛染めなら「ホーユー」。碍子なら「日本ガイシ」、そして電気は「中部電力」。

ユニー
▲かつては名古屋のあちこちに見られた「ユニー」。

 ここに挙げたのはあくまでも例ですが、名古屋で暮らす人間はもちろんこれら名古屋ブランドを中心に生活しています。

エイデン
▲家電量販店といえば、名古屋では当たり前のように「エイデン」。

名古屋≠名古屋市

 本題に入る前にまず、「名古屋」を定義しておきます。このお話で「名古屋」というのは名古屋市だけのことではなく、名古屋を中心とした半径約30kmの「名古屋圏」を指すことにします。

 この30kmというのは非常に曖昧でして、本来なら距離ではなくひとつひとつ市町村名を挙げて「ここは名古屋と同じ文化」、「ここは違う」と指摘していきたいところなのですが、一概に市町村で仕切ることはできませんし、その時々の都合によってこの「名古屋」の範囲は変わってきますのであえて曖昧のままにしておきます。名古屋における「名古屋」の定義が実際に曖昧だからです。

 名古屋市の東端でほんの少しだけ接しているとなり街、瀬戸市に私は長年居住しているのですが、この「名古屋」という言葉はやはり曖昧に使っています。どういうことかと言いますと、例えば比較的遠くに旅行へ行った折、「どちらからいらっしゃいました?」と聞かれることがあります。

 そういったとき、いくら有数な陶磁器の産地で「せともの」の語源となった瀬戸市とは言え、テレビ東京の「開運!なんでも鑑定団」が大好きな骨董品マニアならともかく、地方の一般的な人はほとんど知りませんので「瀬戸」とは答えません。それどころか「愛知県」と言っても「四国ですか?」などと言われたこともありました。そこで名古屋市ではないものの「名古屋」と答えるのです。

名古屋と同化してみたり離れてみたり

 それほど名古屋という地名は知名度が高いのです。対する愛知県は、常識を問うクイズ番組でも「名古屋市のある県は?」と出題され、東京の半数の人が答えられないと言う有様でした。

 名古屋を隠れ蓑にするのは私のようなマイナーな市に住んでいる人間だけではなく、世界的に有名なトヨタ自動車がある豊田市民の友人でさえ、名古屋市のある尾張地域ではなく三河地域にもかかわらず「名古屋」と言うことも多いのです。

 ところが都合の悪いとき。例えば名古屋の悪口談義になったりすると、瀬戸の私は「あ、うちは名古屋じゃないから。微妙に違うんだよね、やっぱりそんなことないよ。」と逃げたりしますし、やはり名古屋市民にとっては「名古屋市以外は名古屋にあらず。」さらには「守山区、緑区も本当は名古屋じゃない。」という意識が見え隠れすることがあります。(この2つの区は名古屋市に編入されたのが比較的遅く、守山区は守山市で、緑区は郡部でした。)

 しかし、実際のところ名古屋市周辺というのは名古屋に勤めている人も多くほとんど同じような文化圏です。そういったことから、名古屋を含むひとつの圏を「名古屋」と呼ぶことにします。ただ、先に書いた理由で、それがどこからどこまでかという話は、とりあえず触れないでおくことにします。

地図
▲ご存知だとは思いますが、念のため名古屋の位置をご確認ください。

井の中の蛙ならぬ、味噌樽の中のきゃぁる

 さて、名古屋ブランドで固められた名古屋。しかし私のように名古屋を出たことの無い人間にとっては、そんな名古屋ブランドが名古屋だけのブランドであることに気づいていないということがあります。

 これは極端な例ですが、名古屋から初めて大阪に出張に行ったおじさんが、ホテルにて新聞が無いことでフロントに怒鳴り込んだのです。おじさんはなぜ怒ったのでしょうか。もちろん、ロビーにはたくさんの新聞があります。しかし「中日スポーツ」が無かったのです。

 中日スポーツは、名古屋市に本社を置く中日新聞社が発行する、名古屋を本拠とするプロ野球球団中日ドラゴンズ情報満載の新聞です。名古屋のドラファンは、これを読まなければ朝が始まりません。しかし怒鳴った理由は新聞が無かったこと自体にではありません。

 フロントマンが、「申し訳ございません。あいにく中日スポーツは…」と言うとおじさんは、「じゃあ中日新聞はあらせんのか?」と聞きました。するとフロントマンは「申し訳ございません、当ホテルは全国紙のみの扱いとさせていただいておりますので。」それを聞いたおじさんは、それまでと形相が変わりこう怒鳴ったのです。

「何言っとるだ、中日新聞は全国紙だて、東京でも売っとるがや、とろくさいこと言うな!」

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▲名古屋っ子の朝は喫茶店モーニングサービスに決まり。毎朝、中日スポーツの争奪戦…。

ところが企業は井の中ではない

 あらかじめ断っておきますが、中日新聞はもちろん全国紙ではありません。愛知・岐阜・三重・静岡・富山・石川・長野・滋賀・福井の一部で販売されている、複数の県をカバーするブロック紙です。当然大阪では買うことができません。

 ところがです。おじさんの言うとおり東京では買うことができるのです。東京では、中日新聞は名を変えて「東京新聞」、中日スポーツは「東京中日スポーツ」という名前で売られているのです。だからこそさらにややこしいのです。

中途半端に名古屋以外へと進出してる例が多い

 北海道新聞を全国紙だと思っている道産子や、西日本新聞を全国紙だと思っている博多っ子はいないでしょう。名前が地名な為にすぐにわかります。中日新聞も元々は地名でした。ところが、「中部日本新聞」から「中日新聞」と略したことで地域色が薄れてしまい、なおかつ東京新聞を買収して東京へ進出したことで、全国紙と勘違いしている名古屋っ子が存在すると言うわけです。

 これは新聞に限ったことではなく、名古屋でトップシェアを誇る各地元企業は結局のところ名古屋は市場が狭いため、東京へと進出するケースが多いのです。そのため、普段サークルKで買物をしている名古屋っ子が東京でサークルKを見かければ、そこで「サークルKは全国区なんだ。」と刷り込まれます。

 ところが実態は、東京でサークルKと言えば少しマイナーなコンビニエンスストアとして扱われており、ローソンなどの様に全国隈なく出店しているわけでもありませんし、東京新聞も他の全国紙に比べると購読率は下がります。

 つまり、名古屋っ子は名古屋ブランドを、名古屋ブランドとして意識していないのではなく、名古屋を中心として、日本中にいや、世界中に通用するブランドだと思っているのです。

本気で世界に羽ばたいている例も

 さらには実際にトヨタ自動車やブラザー工業など、それを実現している企業もあるため、名古屋っ子は、名古屋が世界の中心だ、世界を動かしているのは名古屋の企業に違いないと思い込んでいるのです。ここ最近は名古屋の製造業の景気の良さがクローズアップされることも多く、この傾向にはますます拍車がかかっています。

 おじさんは、中日新聞が全国紙ではないと言われたのを、「名古屋なんて、そんな田舎の新聞あるわけ無いだろう、名古屋が全国区?笑わせるな、名古屋は地方なんだよ、地方。それぐらい自覚しろ!」と言われたかの様に感じたのでしょう。中日新聞が無かったこと自体にではなく、名古屋を代表する中日新聞、そして名古屋自体をバカにされたと感じてしまったから怒鳴ってしまったのです。

-次回はそんな世界の中心、名古屋に課せられた義務のお話です。

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