おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 第4章 名古屋の文化・風習

お値打ちが大好きな現金なヤツ

記事公開日:2004年9月4日

おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 第39回

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 それは意外に思われるかも知れません。ケチと言うと大阪というイメージが強く、名古屋にはそれ程ケチというイメージが無いかもしれません。しかし実際は大阪に負けず劣らずのケチぶりを発揮しています。今回は名古屋っ子とお金の関係について見ていきます。

「お値打ち」

 これは名古屋っ子が名古屋弁だと意識していない名古屋弁のひとつです。最近では全国的にも少しずつ使われるようになりましたが、元々は名古屋の言葉です。この言葉には名古屋っ子の性質が実によく表れています。具体例で見てみましょう。お寿司で考えてみます。お寿司屋さんには回るところと回らないお店があります。回転寿司のお店の中には100円均一のところがあります。そういうお店は「お値打ちなお店」と言えるでしょうか。答えはノーです。

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お値打ち大好き名古屋っ子

 なぜならそれはただの安い店だからです。ですから100円ショップも決してお値打ちなお店ではありません。それは100円相応のものを100円で売っているに過ぎないからです。では回らない高いお寿司屋さんが「今日だけ全品100円」と言ったらお値打ちになるか。確かにそういう使われ方をすることもありますが、少しニュアンスが違います。お値打ちという言葉は単に高いものが安いというものでもありません。

「値打ち」という言葉を辞書で調べると「1.その物や事柄がもっている価値。役に立つ程度・度合いや、その物の品位。2.値段。」とあります。名古屋っ子の言う「お値打ち」とはまさしくこの「1」を備えもっていながら安いものという意味です。

 つまり、役に立ちそうで価値があり、なおかつ品位もありながら安い。この場合だけにお値打ちが適用されるのです。さらに限定であることも条件に加わります。普段は絶対こんな値段では売ることができないけれど今日はお値打ちにご奉仕。となれば名古屋っ子は黙っていません。

 しかし、お店側がお値打ちといくら言っても衝動買いはしません。一般的にどれだけの価値があろうが、自分にとって価値が無ければ買わないのです。名古屋っ子は本当に欲しいもの、必要なものしか買いません。お金は1円たりとも無駄にしたくないのです。

風俗
▲風俗産業さかんな名古屋は、風俗もお値打ち?

タダほど安いものは無い

 その象徴が無料プレゼントへの対応です。街でティッシュや試供品を配っていることがありますが、東京ではそれを受け取らない人がいるということに私は驚きました。名古屋では必ず受け取るどころか、2往復、3往復する主婦も登場します。

 以前にも紹介しましたが、名古屋では喫茶店のモーニングサービスとして無料でパンやサラダがついてきます。しかし関東ではその名古屋流のコメダ珈琲店で、無料のモーニングサービスを断る人が続出したとのこと。その感覚は名古屋っ子には全く理解できません。

「タダより怖いものは無い。」

 名古屋っ子にとっては何を言っているのかわからない言葉です。これはタダの裏には怖い誘惑が待っているという意味ですが、名古屋っ子はいらないもはいらない。必要無いものには絶対お金を出さないという信念を持っているので怖くないのです。タダのものはもらいつつも悪徳商法にはひっかからない自信があるのです。

持ってけ泥棒!の気持ちが必要

「どうして開店祝いの花にビニル袋がかけてあるの?」

 東京から名古屋にやってきた友人が、オープン初日のパチンコ店を見てこんなことを言いました。

「あれはレンタルだからだろう。ケチなパチンコ店だよ。」

 と私が答えると、その友人は頭に「?」をいくつも並べたような顔をしていました。名古屋では、開店祝いの花は自由に持っていって良いという風習があります。ですから通常は、開店したばかりのお店でも朝一番でなければ花はありません。開店と同時に近所の主婦たちが花を持っていってしまうのです。残るのは土台のみです。

 このパチンコ屋さんが花にビニル袋をかけているのは、花を持っていかれないようにしているのです。そうしないと生花だろうが造花だろうか持っていかれてしまうからです。

やっぱり貯金額も上位

 このように、名古屋っ子は値段が高くて価値があるものを安く買いたがり、タダのものがあると聞けばすぐにどこへでも走ります。そこまでしてお金をケチってどうするのかと言えば貯金です。総務省統計局の全国消費実態調査によると、2人以上の一般世帯の貯蓄高を見ると全国平均は1500万円。これに対し愛知県は1677万円で全国8位となっています(H11年調査)。

 また、県民1人あたりの個人預貯金残高を見ても全国平均571万円に対し愛知県は645万円で全国10位となっています(H13年度日銀調べ)。ズバ抜けて高いというわけではありませんが、比較的上位にランクインしています。この統計から言えるのは、元々貯蓄志向の高い名古屋っ子は、結婚して世帯を持つとさらに貯蓄にお金を回すようになるということです。

 面白い数字があります。それは宝くじです。愛知県内での年間売上額は598億7千万円で全国3位。1人あたりの購入金額は全国平均が7574円に対し愛知県は8668円で4位となっています(H12年度みずほ銀行調べ)。無駄なことにはお金を使わない名古屋っ子も、宝くじで一攫千金は夢見ているわけです。つまり、とにかくお金を増やしたい残したい。その一心でお値打ちなものを探し歩き、無料と聞けば何度も足を運ぶわけです。

そんなに貯蓄をしてどうするのか

 そこまでしてどうしてお金を貯めたいか。それは前回お話した結婚に繋がっていきます。名古屋では嫁入り道具が財産分与の意味も兼ねているとお話しました。つまり死ぬ時までに財産を残そうと考えるのが一般的なのに対し、名古屋の場合は娘を嫁に出すまでに財産を残そうと考えるのです。

 相続の時期が他の地方よりも早いのです。娘がいない場合でも、名古屋では息子にポンと一軒屋を買ってあげるというパターンがよくあります。嫁の両親は家財道具を、婿の両親は家を買い与えるというのが名古屋流なのです。そのためにはやはり早いうちにお金を貯めなくてはなりません。退職金などがまだ手に入らないうちに財産を分与することになるので必死なのです。

 だからこそ、夜は飲まずに早く家に帰り、外車に乗りたくてもトヨタの車に乗り、宝くじを買って一攫千金を夢見るのです。

細かく細かくケチります

 商売人になるともっと細かくなります。銀行でお金を振り込む際、振り込み手数料は先方持ちにし請求金額から差し引いて振り込みます。それが認められない場合はなんと銀行に手数料の値切りを要求します。しかも取引内容によってはこれに応じている金融機関もあるので驚きです。さらに小切手で支払う場合は必ず午後3時以降にします。

 銀行は午後3時で窓口が閉まるので、受け取った人は次の日にしか入金できなくなります。こうすることで自分の口座から小切手のお金がひかれるのが1日遅れるわけで、その分の利息がつくのです。昨今は低金利なのでそこまでする人は少なくなったようですが。

現金じゃないと値引き交渉が有利にできない?

 さて、名古屋っ子はクレジットカードをあまり利用しないという話がありますが、これにも理由があります。名古屋っ子はこのようにケチですから、もちろん何かを買うときは必ず値切ります。そして値切った結果が例えば5350円だったとすると、支払いの段になってこう言うのです。

「今、5千円札はあるけど細かいのが無いから5000円でいいでしょう?」

 これは現金でしかできない値切りのアプローチです。クレジットカードではそうは行きません。もちろんこれは値切りの手段であって、本当は小銭がいっぱいあってもこう言います。私の知り合いでもっと面白いことをやった人がいます。その人は車を買おうと思い、あちこちのディーラーで見積もりを取り相場を調べました。

カーディーラー
▲自動車王国名古屋は販売店も多く競争過熱。(写真は本文と無関係)

 彼は自分の買いたい金額を心の中で決めると、それまで顔を出したことの無いディーラーに行きました。その時手に持って行ったのは、その心の中で決めた金額の現金です。もちろん営業マンとも初対面。営業マンはまだ買ってくれる段では無いと思っています。つまり自分のなかでまだ成績になると思っていないのです。そして彼は車の仕様を聞き、これでいいなと自分の中で確認すると、商談のテーブルにつくや否やいきなりこう切り出したのです。

「今200万しか持っていないんだけど、それで売ってくれるなら買う。売ってくれないならそれでいい。どうする?」

 と言いながら2つの札束をテーブルにドンと置いたのです。営業マンはビックリです。まだ見込み客にもカウントしていなかった人が、いきなり販売成績にカウントできるのですから。しかもその価格は他のディーラーの見積もりから導き出した、無理とは言えないだろうけれども、かなりギリギリの金額。営業マンは悩みます。彼は駄目押しします。

「いいよいいよ。無理なら別に。無理なら買わない。もう来ない。それだけ。」

 この作戦は見事成功。これが名古屋の現金値引きパワーです。

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▲こういうお店では、クレジットカードを渡すのに勇気がいりますしね。

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