伊勢自動車道伊勢西インターから南へ車を走らせると、伊勢神宮内宮の北側を五十鈴川トンネルで潜り抜け、伊勢道路へと繋がります。伊勢道路は志摩路トンネルを抜け、志摩市磯部町へと続いています。その伊勢道路を地図上で眺めていると、山のなかにポツンと「天ノ岩戸口」というバス停があるではありませんか。
天の岩戸といえば「古事記」「日本書紀」に出てくる神話の世界のお話。幼い頃にジャポニカ学習帳のコラムで読んだ覚えがあります。天照大神(あまてらすおおみかみ)は須佐之男尊(すさのおのみこと)の悪事に怒り、それを戒めるために岩戸の中に隠れてしまい世の中は闇に包まれてしまいます。
神々は天照大神に出てきてもらおうと、岩戸の前で様々な儀式をするのですが、そのなかで、天宇受売命(あめのうずめのみこと)が滑稽な踊り踊ったことで神々が大笑いをし、それに誘われて天照大神が岩戸を開け、世の中に光が戻ったというお話です。
天の岩戸こちら
まさかその現場がこんな身近にあるのか!?と思い、神話好きの相方にそのことを話すと、「それは行くしかないでしょう」ということで、行ってみることにしました。
五十鈴川トンネルを過ぎると、道路はクネクネとした山道になります。道幅は狭くないので対向車に気をつける必要はそれほどありませんが、さすがにカーブがきつい。あまりスピードを出すと車酔いしそうな道です。すると右手に大きな看板があるではありませんか。「天の岩戸」と書かれています。ここに間違いありません。
入口には鳥居がありますが車で進入可能です。車で鳥居をくぐります。しばらく走ると道は神路ダム湖岸を走る形になります。本当にあるのかな…と不安になった頃「天の岩戸こちら」という看板が登場し、間違っていないことにホッとします。すると駐車場が登場。そこからは歩いていくことになります。
水の流れる音を聞きながら歩くと…
川のせせらぎが聞こえる木立のなかを歩いていきます。しばらくすると「天の岩戸へ200m」という看板がありました。まだもう少し歩かなくてはなりません。森のなかとはいえ、6月でも蒸し暑く汗が流れ出します。道沿いには「天の岩戸参道」という石碑やたくさんの石灯籠があり、木製の鳥居が見えてきました。もうそろそろ到着のようです。
すると大きな看板が登場しました。「環境庁指定名水百選 恵利原の水穴(天の岩戸)磯部町」とあります。「環境庁」も「磯部町」も今は昔です。すると小さな滝があります。これが名水百選に選ばれた水でしょうか。喉が渇いたと言って相方はさっそく口をつけますが…。
天の岩戸神社本殿へ
滝の横にある階段を登っていくと、天の岩戸神社の本殿が見えてきました。鳥居にも「天の岩戸」とあります。この「天の岩戸」は、神路山逢坂峠のふもとにある洞窟で、このあたりは神話に因んでか「高天原」とも呼ばれているそうです。杉の木立がうっそうとしていて、ひんやりとした霊気に包まれていることから天の岩戸神話になぞられているのだそうです。
まあ神話ですから、ここが現場ですと言い切ることはできないのは当たり前です。それにしても蒸し暑い。ムシムシのベタベタです。ひんやりとした霊気とやらは一体どこにあるのかと、この時点では思っていたのですが…。
本殿でお参りをすると、すぐ横に洞窟がありました。洞窟からは綺麗な水が脈々と湧き出ていて、ひしゃくも置いてあり飲めるようになっています。これが「天の岩戸」です。するとさっき相方が飲んだ水は…?と、流れる水を追うと先ほどの滝へと注がれています。相方は「先走ってしまった…」と少し後悔していました。
湧き出ている水をひしゃくで受けようとするとビックリ。洞窟からは驚くほど冷たい冷気が出ているではありませんか。汗が一気に引くほどの冷たさです。クーラーの風どころではありません。中に入りたいくらいでしたが、さすがにそれは罰当たりです。なるほど、「ひんやりとした霊気」に納得です。
風穴へと山道を歩く…そこで遭遇したのは
すると「風穴」と書かれた矢印状の看板を発見しました。300メートルと小さく書かれています。せっかくだから見ていこうと、鳥居のある階段を歩いていきます。すると程なく階段は山道となり、人が一人やっと通れる程の道になります。これは滑落したらヤバいな…と携帯電話を見ると「圏外」。これは本当にヤバい。そーっと歩いていきます。
300メートルといっても山道だと長く感じます。先ほど霊気で引いた汗が、蒸し暑さに一気に復活です。
しばらく歩くと、ありました風穴です。その名のとおり、こちらの穴からもこれまた冷た~い風が出ています。小さな賽銭箱があったので、お参りをしていると何かの気配を感じました。それはものすごいスピードでやってきます。見るとそれは蛇。山の上から勢い良く降りてきます。するとその蛇は私たちの手前でピタっと止まりました。
蛇は神話にも登場しますよね…。やはりここは本当に天の岩戸なんだ…と私たちは勝手に確信して山道を慌てず急がず戻りました。
帰り際、風穴から帰ってくる私たちを見て、夫婦の方が「面白かったですか」と声をかけてきました。「洞窟の穴があって、そこで蛇に追いかけられました。」と言うと、風穴に行こうかどうか迷っていた夫婦はあっさりと駐車場に引き返していきました。私たちは、もう一度天の岩戸の冷気で汗を落ち着かせ、湧き出る水で渇いた喉を潤しました。
さて、駐車場に戻るか…とふと足元を見ると、先ほどは気づかなかった看板があるではありませんか。
「天の岩戸(恵利原の水穴)は環境庁より名水百選として指定を受けており、県内外より大勢の観光客が訪れます。」
なるほどね。やっぱり良い水なんですね。
「左記の事項をお守り下さい。」
何でしょう?
「一、洞窟内は危険ですので入らないで下さい」
そうですね。物理的な危険と罰当たりという危険のふたつがありそうですね
「一、国立公園を美しくしましょう」
もちろんです。
「一、この水を生水で飲むことは控えてください。」
えー!そんなぁ…。名水百選って書いてあって、ひしゃくが置いてあったら普通飲んじゃうでしょ…。
あの、もっと目立つように書いておいていただけませんでしょうか…。
コメント
>「一、この水を生水で飲むことは控えてください。」
いや….。
これって、一応鉄則ではないでしょうか?、こういう場合。
ひしゃくは、口をゆすぐ、手を清めるなどの用途で使うものだと、勝手に理解してますよ。
まっ、なにか寄生物があった場合、行政が責任を負えないだけかもしれませんがね。
源泉だから大丈夫だと思いますよね。
で、トッピーくんの相方が先走って飲んだ水….。
それって、かなりヤヴァくないかい?
立て看板よりも手間なら、なおさらヤヴァいよ。。。
大丈夫ですかね?
寄生してませんかね?
orz
(2006/07/22 11:45 PM)
>あかださん
こんばんは。
そうですね、飲んでいいですよとは書くはずも無く飲んだら自己責任と言いたいのでしょうね…。とりあえず二人ともお腹は壊しませんでしたので、大丈夫だとは思うのですが…どうでしょう…。ちょっと心配かも。
(2006/07/26 11:24 PM)
今後近くに通った時に寄ります
(2006/09/25 10:45 PM)
>高橋さま こんにちは
飲用される際はぜひとも煮沸されることをオススメします。
(2006/10/01 2:18 PM)
はじめまして。woodymindといいます。昨年夏、横浜から愛知県に転居する際、情報収集の一環としてこのサイトを発見し、以来ひそかに愛読させていただいています。ちなみに、来月から、名古屋市内の某不動産会社に就職することになりました。このサイトは、名古屋圏の地理文化の勉強には最適ですね(^^)
昨日、三重県の伊勢神宮と、こちらの天の岩戸(風穴含む)に出かけてきました。僕も、特に風穴見たときは「これが本当の天の岩戸じゃないか?」って思いました。実際に人が1人は入れるし、目の前に踊れそうな場所もあるし(笑)実際、風穴のあるところは神宮司庁の土地だそうです。改めてトッピーさんのお出かけ記録を読むと、ありありと現地の様子が分かり、さらに読むのが楽しくなりますね。
今後も、このサイトで紹介された名所旧跡を色々歩いてみようと思います。またコメントさせてください。今後ともどうぞ宜しくお願いします。
(2008/04/24 10:34 PM)
>woodymindさま はじめまして こんにちは
ようこそ!愛知県へです~。サイトをお読みいただきありがとうございます。お仕事のお役に立てるかどうかは微妙ですが、これからも地理や文化にまつわる記事を書いていきます。
伊勢市周辺には神宮司庁の敷地が広大に広がっていますよね。やはり神聖な感じがするのと同時に、不思議な力がありそうな気もします。
風穴の前は確かに踊れますね。でも、ヘビがきますよ、ヘビが!
ぜひともこれからも、当サイトをよろしくお願いいたします。コメントもお気軽にどうぞです~。
(2008/04/26 1:33 PM)
天の岩戸は全国に、こゝが本当の神話の里と名乗る地域が存在します。それで良いのだと思っています。各地に天の岩戸があって、古墳を学術的に探すような歴史学には、夢も情緒もありません。国の神話に、尊敬と愛着を感ずることこそ、尊いと考えています。