トッピーの放送見聞録 放送事情レポート

テレビ愛知のエコキャンペーンキャラクター・メリ夫に託された使命-いつの日か仲間と

記事公開日:2006年10月11日 更新日:

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 月曜から木曜の朝8時、テレビ愛知で放送されている「メリおっと!たいそう」。幼稚園児たちと一緒に体操をするのは、エコちゃんとたいそうマン、そしてスナメリのメリ夫。メリ夫というそのネーミングセンスと単純なデザインには脱帽。「海をきれいにしたいメリ~☆」と何でも語尾に「メリ~☆」をつける彼を見ると誰もが脱力してしまうことでしょう。

 別の記事で触れましたが、彼はテレビ愛知のマスコットキャラクターではありません。それはなぜか。実は彼には大きな使命が課せられているのです。まずはメリ夫の驚愕のプロフィールをご紹介しましょう。

メリ夫のプロフィールには実は…

 メリ夫公式サイトにあるメリ夫のプロフィールを見ますと、彼はイルカの仲間であるスナメリであり、1歳になったばかりだということがわかります。泣けるのがその生い立ちです。「お父さんはビニール袋を食べて死んだ。」「お母さんと暮らしていたが海がにごったためにはぐれた」「現在迷子」なのです。そのビニル袋が散乱し、にごった海はどこなのかといえば「三河湾」です。現在はエコキャンペーンのキャラクターとして三河湾をきれいにする活動を進め、いつかお母さんとの再会を夢見ているのだそうです。泣かせます。

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 かわいい声、振る舞いとは裏腹に、メリ夫には悲しい過去があるのです。しかし、親とはぐれた1歳になったばかりのそんなメリ夫がなぜ明るくいられるのかと言えば「尊敬するキャラはガチャピン」だからなのでしょう。彼は頑張って明るく努めているのです。なぜなら、子どもたちにきれいな海の大切さを伝えたいからです。昨年地元の愛知県で開催された愛・地球博でもメリ夫は大活躍しました。自然の叡智という愛・地球博の理念はメリ夫とリンクしたのです。

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キャラクターが誕生したきっかけは

 設定の生い立ちとは別に、メリ夫というキャラクターはどのようにして誕生したのでしょうか。過去を紐解いてみます。テレビ愛知がエコキャンペーンを始めたのは2003(H15)年のこと。ローカルニュース「ニュースアイ」(当時)でシリーズ特集された「海の風景」がきっかけでした。そのシリーズを特集した番組「よみがえれ三河湾!~スナメリのいる海~」がその年の9月23日に放送されたのですが、その映像は衝撃的でした。

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 番組の冒頭に映し出されたのは、三河湾岸に打ち揚げられたスナメリの死体。体はヘドロまみれ。食べる物を失って餓死したスナメリのお腹のなかは、ビニル袋でいっぱいになっていました。海の現状を知ってもらうために活動している林正道さんの視点を通して番組は展開していきました。

1.三河湾の現状

 竜宮城のモデルとなった田原市の姫島は、いろいろなものが集まりやすい場所で、スナメリも集まってくる場所。かつては透き通る海でした。しかし今は濃い緑色。そこに雪のようなものが降っています。それはヘドロの雪。海底には1メートル以上ヘドロが堆積していました。でも海底は少しだけヘドロの雪が薄くなっていました。海底の生き物たちがヘドロを体いっぱいに吸い込んで綺麗にしていたのです。でも降ってくるヘドロの量は莫大で、全てを吸い込んで浄化することはできません。

2.下水処理の現状

 ヘドロの元は家庭排水の栄養分。西尾市の下水処理場では微生物によって生物処理をしているのですが、それには限界があります。各家庭が味噌汁を一斉に流しただけでも対応できないとのこと。対応できないとどうなるか。その栄養分はそのまま海へと流されてしまうのです。

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3.漁師たちの想い

 かつて三河湾を浄化していたのはアサリでした。昔はたくさん採れたアサリが今では年々減っています。三谷漁協青年部は、川下で悩んでいても仕方ないと、三河湾に流れ込む豊川の源流段戸山へ行き植樹活動をしていました。青年部の人達が子どもの頃は海が青かったそうで、昔はスナメリがモコモコとあちこちにいたそうです。源流を見ると、水は澄んでいました。その水が山を下って街を抜け海へと流れます。汚れを無くすには生活の仕方や産業にかかっていることを実感。

4.子どもたちへ

 冒頭登場した林さんが子どもたちと海を観察。海岸はゴミだらけ。でもそこにはエビやカニが。観察した後はゴミ拾い。1時間拾っただけで膨大な量のゴミ。灯油缶やタイヤまでもがゴロゴロ。一体原因は何なのか。言わなくても子どもたちはわかっていました。

5.水産試験場の取り組み

 かつて三河湾を綺麗にしてくれたアサリはどこにいたのか。調べるとそれは豊橋港でした。そこには昔、1200haもの干潟がありました。しかし30年前に全て埋め立てられてしまったのです。そこで水産試験場は1200haの干潟を作ることを目標に掲げました。でも砂が足りません。ところが、鉄を作るときに鉄鉱石を溶かした残りかす「スラグ」でもアサリが育つとわかり、今後はスラグを海岸に埋めて干潟復元を目指します。

6.神島へ

 伊勢湾と三河湾の入口にある三重県の神島には、昔の愛知県の海が残っているといわれています。林さんが潜ると、アワビ、サザエ、ウニがたくさん。しかし台風の翌日には三河湾からヘドロが流れてきます。林さんは島の子どもたちに、今のきれいな海が当たり前ではなくなってしまうかもしれないことを伝えます。

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 スナメリは今もヘドロまみれの三河湾に生息しています。海が汚くなっても、エサが無くなっても、三河湾で暮らしていくしかないのです。現状を知りなんとかしたいと思うことが大切。いつかはきれいな青い海がよみがえることを、ヘドロの雪が降る緑色の海に住むスナメリは待っています。それが番組のメッセージでした。

 これ以降、テレビ愛知はエコキャンペーンを展開することとなり、そのキャラクターとしてメリ夫が生まれました。メリ夫の存在は軽いものではないのです。我々が住む愛知県の生活廃水が流れ込む三河湾をきれいにするには、愛知県民が動くしかないのです。その愛知県民ひとりひとりに海の現状を知って欲しい、一人でも多くの人に動いて欲しい。それがメリ夫の願いであり、テレビ愛知の願いでもあるのです。

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思いが詰まっているからこそ

 メリ夫をテレビ愛知自身のキャラクターにしないのは、メリ夫はそんな軽い気持ちで作られたキャラクターではないという想いの現れでしょう。会社の利益やイメージ戦略といったこととは別次元のところで、三河湾をきれいにしたい、海をきれいにしたいという、マスメディアとしてのテレビ愛知の純粋な気持ちがメリ夫にはこめられているのです。だからイベントでもグッズ販売といったことをする気が無いのでしょう。

 不器用だけどまっすぐなメリ夫。「海をきれいにしたいメリ☆」という気持ちがひとりでも多くの子どもたちに伝わることを願っています。

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