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日本一の庭園で童画と出会う-足立美術館

記事公開日:2008年9月22日 更新日:

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 松江の島根県立美術館のところで、懐かしい展示に出会うことができたというレポートを書きましたが、安来の足立美術館でも、幼い頃に見た懐かしい絵に出会うことができました。こちらも既に期間は終了してしまっていますが、この美術館所蔵の作品ですので、また見ることができる機会はあると思います。

 今回は、そんな庭園と懐かしい絵と出会った足立美術館のお話をします。

日本が認めた日本一じゃない

 足立美術館へは相方の希望で行くことにしました。そのために、足立美術館のすぐ横にあるさぎの湯温泉に宿泊して、朝イチで美術館へと入場です。入場料は2,200円と高めですが、思わずうなってしまう風景が目の前に広がります。

 受付から入りますと、迎賓の庭、苔庭と続きます。この時点で庭園の美しさに言葉を失ってしまうのですが、なんとそれは全然序の口。日本庭園の面積は50,000坪。しかも日本全国にある755もの日本庭園のなかから、アメリカの日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデン」が5年連続で日本一と認めたものなのです。

 すごいなぁ。何がすごいって、アメリカに日本庭園専門雑誌があるとは!

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なんと個人創設

 この美術館は、地元出身の実業家である故・足立全康さんが創設したもので、横山大観のコレクションで特に知られています。この日本庭園は、横山大観作の絵画をモチーフにして製作されたもので、「庭園もまた一幅の絵画である」という足立さんの残された言葉に全てが集約されています。

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 長崎平和公園の平和祈念像でも知られる、北村西望さんの「足立翁像」「将軍の孫」といったブロンズ像も眺める庭園は、建物内からまるで窓枠を額縁としてひとつの絵として、同じように窓枠で切り取った掛け軸「生の掛軸」として楽しめるようになっていて、まさしく立体絵画。絵を描くかのように滝なども造ってしまったそうです。

 手入れ、維持管理が評価されての日本一とのことで、その切り取られた絵のなかに、手入れをする庭師さんの姿が入ってしまうのはご愛嬌。

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童画というジャンルも

 館内の展示には、「北大路魯山人室」「横山大観特別展示室」「河合寛次郎室」と、これぞ日本の伝統芸術、まるでなんでも鑑定団の説明VTRのようなものばかりで、ちょっと格式が高いな、という気がしたのですが、そのなかで私たちが感激したのが「童画展示室」です。

 童画とは、子どもたちのために描かれた世界。足立美術館は数多くの童画を所蔵しており、普段から童画展示室があるのですが、この夏は「童画の世界」展が開催されており、特に人気があるという作品がずらりと展示されていました。

 日本で初めての月間保育絵本として、1927(S2)年に登場したフレーベル館の「キンダーブック」。誰もが幼稚園や保育園などで触れた記憶があるのではないでしょうか。そこに描かれていた優しいタッチでかつ冒険に誘ってくれるような深みを持つ絵が数多く展示されていました。

思わず飾りたくなってしまう...

 今回の展示会では、足立美術館が所蔵する林義雄さん、鈴木寿雄さん、武井武雄さん、川上四郎さん、黒崎義介さん、井口文秀さんの作品を展示。

 キンダーブックが戦前からあったとは知りませんでした。大人になってからは全くといっていいほど触れなくなってしまった絵たちですが、それら展示された見ると、その絵本のなかに自分の身を置いて空想していたあの頃を思い出します。

 相方は額に入った色紙で林義雄さん作「四季の森」を購入。7,000円でした。

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 昔は持っていたはずなのにどこかに忘れてきてしまった、リアルな世界を生き抜くための夢ではなく、全く別次元の夢や冒険といった心を呼び起こさせてくれるような、本来は子どものために描かれたものなのに、大人が見ることで、それらの絵が作り出す世界に素直に入り込むことができた幼い頃に戻れるような、童画には不思議な力がありますね。

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 こういった絵を部屋に飾っておくことは、とても大切なことかもしれません。現実を直視することから逃げてはいけませんが、たまには空想の世界に旅立つことでストレスが解消できるのならば、そのきっかけに童画というのは最適なのかもしれません。

 相方の家にある2つの作品はともに林義雄さんの作品なのですが、林さんはかなり昔から作品を発表していらっしゃって、おいくつの方かと思ったらなんと1905(M38)年生まれの103歳。今も現役で作品を発表されていらっしゃるとのこと。

 それを知ってさらに、いろんな勇気をもらうことができたとともに、やはり空想世界に身を置いてストレスを解消することはとても重要なんだな...と感じました。島根県立美術館に続いて、足立美術館でもまた思いがけない絵たちと出会うことができ、これもまた縁だなと実感しました。

 次回は、がらっと変わって妖怪の世界へ。鳥取県境港市からレポートします。

関連情報

足立美術館

足立美術館(島根・安来市)MAP

足立美術館


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