天むす-名物とは言い切れない…だけど広めたのは名古屋! | 名古屋めし

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天むす

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名古屋ではお祭りの屋台などでも天むすを見かけることが多いです。

これまでご紹介してきた、味噌煮込みうどんやきしめんは、名古屋名物であるとともに、実際に名古屋っ子がよく食べるものである。自信を持って、胸を張って、名古屋名物だと言うことができる。対して、名古屋名物として広く知れ渡っているにもかかわらず、名古屋っ子としては、名古屋名物と言えるのだろうかと首を傾げてしまうものがある。その代表格は「天むす」であろう。

天むすは本当に名古屋名物なの?

天むすとは、海老の天ぷらがおにぎりに刺さっているものである。若干海老天の塩味が強いものの、元々おにぎりというのは塩味が効いているわけで、それほど代わり映えのするメニューではない。かつては違う海老が使われたこともあったらしいが、現在使われている海老はアカシャエビである。海老せんべいの原材料ともなるその小さな海老の天ぷらが入っているおにぎり、それが天むすである。

小さいのは海老だけではなく、おにぎり自体も小さい。普通のおにぎりの半分くらいのサイズである。女性でもまるごと1個を口に頬張れる程度の大きさである。その手軽さと、絶妙な塩加減が受けているのであろう。付け合せには必ずきゃらぶきが添えられているのも特徴だ。

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めいふつ天むす千寿<本店>大須赤門交差点から南へ50m< <栄>松坂屋本店地下2階 <セントレア>4階ちょうちん横丁

天むす発祥の地は三重県津市

天むすの歴史を紐解くと、天むすは名古屋が発祥ではないということがわかる。天むすは、三重県津市にある「千寿」という料理店の賄い料理として考えだされたもので、これが意外に美味しかったことから、そのお店でメニューとして出されるようになったものである。ではそれがなぜ名古屋名物となったのだろうか。

中区大須に「めいふつ天むす千寿」という店がある。その名のとおり、津の千寿から天むすの製法を受け継いだお店である。千寿という名前がついているのだから、暖簾分けと言っても良いだろう。このお店が天むす専門店として、名古屋に初めて天むすを伝えたお店ということになる。開業は1980(S55)年と意外に新しい。

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千寿<津>大門・だいたて商店街

天むすは名古屋にやってきてわずか25年でここまでの地位を築いたというわけである。先ほど、天むすは代わり映えしないメニューと書いたが、簡単なものほど難しい。家で味を真似をしようと思ってもできるものではない。油、米、海苔、そして調理法に相当なこだわりを持っていると思われる。

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こちらが元祖、津「千寿」の天むす。塩加減の良さがたまらないです。

全国に進出したために知名度が高い

天むすを名古屋で買おう、食べようとしても、意外と扱っている店が少ないことに驚くだろう。名古屋っ子も、そう頻繁に天むすを食べるわけではない。ではなぜ名古屋名物になったのか…。さて、そのめいふつ天むす千寿とは別に、名古屋以外に天むすを広めたお店がある。その名は「天むす・すえひろ」である。

天むすすえひろが誕生したのは1986(S61)年。めいふつ天むす千寿よりも後であるが、決して偽者というわけではないそうだ。津の千寿で天むすを考案した人から同じように味を伝承をしていると言っている。このすえひろが、関東や関西に店舗を続々と出店したことから、天むすというものが全国で知られるようになったのである。だが、特に名古屋名物として売られていたわけではない。

名古屋と海老の関係に繋がる

今でも三重県の人に言わせると、この天むすを名古屋名物とすることは納得がいかないと言う。発祥の地が津である上に、暖簾分けをしたお店が名古屋にあるとはいえ、名古屋だけにあるわけではないからだ。実際、三重県のなかで名古屋文化が全く感じられない名張などでも、この天むすだけは普通にメニューとして扱われていることがある。三重の名物と言ってもおかしく無いのではないか。

とはいえ、天むすは名古屋名物として定着しつつある。なぜ天むすが名古屋名物になったのか、この謎を解くには、名古屋と海老の関係を紐解かなければならない。というわけで、次回の「エビフライ編」に続く。

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