- 地デジ完全移行へ大詰め
- 「愛知で映らない」と言われたテレビ愛知は今
- 結局効率はどうなの?
2011(H23)年が幕を開けました。今年は、7月24日に地上デジタル放送への完全移行を控える「アナログ放送終了の年」です。見る側の視聴者としては、それまでにデジタルテレビの購入やデジタルチューナーの購入、デジタル送信所へのUHFアンテナの設置などといった準備をしなければなりませんが、電波を送る側のテレビ局としても、地上デジタル放送の電波を行き届かせる準備をしなければなりません。
当サイト「トッピーネット」ではこれまで、テレビ愛知のデジタル放送の電波が、愛知県をカバーしきれていないという問題を追いかけてきました。
昨年、テレビ愛知にとっては大きな動きのあった1年となりました。1年前のちょうど今頃、シリーズ「テレビ愛知2010年・地デジ10チャンネルのリベンジ!」として当サイトでは現場レポートをお届けしました。
今回はその続報です。特に大きな新情報はありませんが、さらに「山海」「大高」「幡豆」「赤羽根」「本宿」と中継局が設置され、いよいよテレビ愛知の地デジエリアも完成形に向かう様子を全て現地レポートでお届けします。
知多内海局に続いて山海中継局も開局
まず向かったのは「山海中継局」です。山海中継局は南知多町山海地区の約230世帯をカバーするために設置されたもので、これまでNHKのアナログ中継局が置かれていた知多内海局とは違い、全くのデジタル新局です。ここからは、NHK名古屋(総合42ch・教育39ch)とテレビ愛知(38ch)が出力0.05wで電波を発射しています。
他の広域民放4局については伊勢局の電波が強力に入感することから、常滑や知多内海と同じく、愛知県域放送のみの電波発射となっています。このような状態から、知多半島では、NHK名古屋とテレビ愛知は地元中継局を、広域民放については伊勢中継局を、というスタンスが徹底されています。
伊勢局は、アナログ放送に比べて実質出力が10倍になっていますが、それには知多半島を伊勢局でカバーするという思惑があるのかもしれませんね。いや…実際のところは、広く三重県で関西の放送が見られてしまうのを潰す目的で、関西の放送と同じチャンネルで出力を10倍にした結果、副産物でそうなったと考える方が納得が行くような…。
なお、これまで知多半島にアナログ放送の中継局として存在した、知多南粕谷局、美浜河和局にはデジタル局は設置されませんでした。こういった状況から、アナログ放送は名古屋市内から電波が発射されていたのに対し、デジタル放送は電波の発射場所を瀬戸市へと移したことで、最も影響を受けたのは知多半島であるということがわかります。
名古屋市内にさらに中継局が開局
続いて向かったのは、その知多半島の付け根に位置する緑区大高です。この大高には、テレビ愛知大高局の設置が予定されています。国際センター局と同じく、NHKすら存在しない全くのテレビ愛知単独中継局で、当初は全く予定されていなかったものが突如計画されたものです。しかし、その計画では昨年のうちに開局するとされていたものが、かなりズレ込んでおり、まだその全貌は出力も含め明らかになっていません。
名駅局、国際センター局、犬山南局、そしてこの大高局は、瀬戸デジタルタワーにおいて、愛知県域局であるテレビ愛知の出力が、他の東海3県カバーの広域局に比べて3分の1しか出せないために設置されたようなものです。
当初、テレビ愛知は出力だけでなく、電波の送信パターンについても厳密に設定されていたのですが、あまりの厳密さに県内でも受信できない場所が発生するという状態に陥ってしまい、昨年2月15日と21日にその緩和工事が行われ、出力は相変わらずな一方で、エリアカバーについてはかなり改善され、アナログ時代とほぼ同等にまでなりました。
そのため、名駅、国際センター、そしてこの大高については存在意義が失われたような感があるために、大高局の設置計画が進んでいないのかもしれません。特にこの大高局はテレビ愛知単独のため、費用もテレビ愛知が単独で捻出しなければなりません。簡単に中継局といっても、設置費用も運用費用も馬鹿になりませんものね…。
設置されると思われる、大高城址の周辺を見て回ってみましたが、残念ながらまだその工事に着手している様子を発見することはできませんでした。開局時期や出力、周波数もまだ発表されていません。
今度は三河へと向かいます。尾張・知多地域については、民放ではテレビ愛知のみの中継局ばかりでしたが、三河はちょっと事情が違うようです。
新設・幡豆中継局
やってきましたのは、4月1日に西尾市との合併でその名を消す予定の幡豆郡吉良町。吉良、幡豆、一色の幡豆郡3町全てが合併するため、町名も郡名も消えることになります。その名残を惜しむかのように設置されたのが幡豆局です。
幡豆局からはテレビ愛知だけでなく、全てのテレビ局の電波が発射され、吉良吉田から蒲郡市の西浦半島まで、広く約2,900世帯をカバーします。当初の計画では、この地域は瀬戸デジタルタワーの電波を受信することになっていましたが、思ったよりも瀬戸の電波が安定していなかったということでしょう。しかも、0.3wの中規模局が設置されたということは、ピンポイントなものではなく、結構な予測外れということができます。
もうひとつ、このあたりでは豊橋局、田原局の電波も受信でき、SFNというデジタル放送の技術で、混信してもどちらかが映るはずだったのですが、その両局とさらに伊勢局が混信して、実際は受信に支障を来たしてしまったことも、設置の大きな理由になったと思われます。
電波は赤羽根に回りこまなかった
さらに、その幡豆の対岸にある、渥美半島へと行ってみます。渥美半島には、アナログ時代から、その田原市と対岸の蒲郡市に向けて電波を発射している田原局(NHKは蒲郡田原局)があり、田原局と名古屋本局の電波で渥美半島はカバーされていました。
田原局は、デジタル局としてそのまま設置され続けているのですが、その田原局が山で遮られてしまう、旧赤羽根町の中心部をカバーするために設置されたのが、赤羽根局です。ここも幡豆局と同じく0.3wで全局が電波を発射しています。当初はその設置計画がなかったことから、瀬戸や田原の電波でカバーできると考えられていたのでしょう。
指向性はその赤羽根中心部だけでなく、わずかではありますが、北東部もエリアとしています。この赤羽根局がある山からは、田原局を目視することができ、この山自体が田原局の電波を遮っていることがよくわかります。
デジタルも、当初は瀬戸の電波が回りこむと考えていたのでしょうかね。
ちなみに、その赤羽根から目視できた田原局にも訪れてみたところ、工事が行われていました。送信アンテナが4本もあるバラバラな状態を、デジタル完全移行のタイミングで統一するのかもしれません。ひょっとしたら、それと同時にリパック(周波数再編)のようなことがことが行われるような気がします。蒲郡周辺での地デジ混信問題は、この局が周波数を変えれば解決となるでしょうしね。
狭間になっちゃった
最後に訪れたのは、岡崎市の本宿局です。この局も、他の三河地域の中継局と同様、全局が電波を発射していますが、出力はわずか0.05wで、県営本宿住宅と本宿駅周辺をカバーしているだけです。アンテナ設置場所まで訪れたのですが、そのときにはすっかり日が暮れてしまい、写真に収めることができませんでしたので、写真は参考資料です。
本宿エリアは当初、瀬戸本局と豊橋局の両方の電波が到達するはずだったようですが、実際にはその狭間に陥ってしまい、かなりの世帯数がある団地なことから、共聴ではなく新局設置となったと思われます。その証拠に、わずか出力0.05w局でありながら、約2,600世帯をカバーしています。今回最初に訪れた、同じ0.05wの山海局のカバーが230世帯でしたから、その10倍以上です。
テレビ愛知はアナログとほぼ同数
地上デジタル放送は、アナログと違って電波障害が発生せず、同じ周波数での同期放送が可能なため、中継局が大幅に削減でき効率的なテレビ局運営ができる、というのも地デジ化のメリットだったはずですが、蓋を開けてみますと…。
というわけで、テレビ愛知のデジタル中継局を図にまとめてみました。
こうして見ますと、尾張地区は完全に、民放ではテレビ愛知のみが中継局を設置している状態で、他の民放局は尾張・知多地域には中継局を設置していないことがわかります。その一方で、三河地区は全局の電波が行き届きにくい場所が発生してしまったということがわかるかと思います。
結局のところ、設置場所は大きく変わりましたが、テレビ愛知はアナログ放送では最大16ヶ所(現在は15ヶ所)から電波を発射していたのに対し、デジタル放送でも17ヶ所から電波を発射することとなり、特に効率化は果たせなかったと言えます。
あとは大高局が開局すると、テレビ愛知の地デジは完成となります。その割には、一宮や江南などで映りにくいという声をまだ耳にします。さすがに、一宮あたりは岐阜放送とのエリア干渉が問題になりそうな地域なだけに、どのような対策が今後行われるのか、そして、地デジへの完全移行後に、周波数再編などが行われるのか、引き続き注目していきたいと思います。
さて次回は、そんなピリピリした空気が流れる愛知と岐阜の県境問題で大きな動きが!とうとう、あのぎふチャンこと岐阜放送が愛知県に進出し、愛知県から電波を発射し始めたという話題です。お楽しみに。
コメント
本来エリアの愛知県内で1本で済むアンテナが、場所によってはテレビ愛知の為だけに2本目が必要となる。
当然視聴者には別途費用がかかる。
中継局建設する経費がもったいないですね。
やれ指向性とか抑制とか細かいことが出来るのなら、
瀬戸本局を1.25とか1.5kwとか2kw…僅かずつでの増力でダメなんですかね。
>&YOUさま こんにちは
三重県や岐阜県では、広域局+県域局と、
2本のアンテナを立てる必要のある地域も多いですし、
そもそも、これまでVHFとUHFの2本を立ててたのだから、
それくらいは我慢しろと、
お上は言いそうな感じがしますが…。
実効輻射電力の加減や、指向性の変更など、
テレビ愛知もやれる範囲でいろいろやっていますけど、
出力だけは完全に定められたものなので、
どうしようも無いのでしょうねぇ。
ただ、広域局と比べると、1kwとはいえ、
アナログ時代と同じ出力割合なので、
やはり、送信所が瀬戸市になったことが大きな要因と
言えるかと思います。
たとえば名張市内をカバーするべく、在名広域4局と三重テレビが隣の奈良県に中継局を設けるのに似た今回のぎふチャン(GBS)の行動は、総務省の免許もさることながら、特にテレビ愛知の承諾なくしてはできないと思っていますが(先に挙げた名張の例では、少なくとも関西の広域4局の承諾がそろわないとダメでしょう)その辺は大丈夫でしょうか。まあ個人的には、もし自分が今回取り上げた鵜沼向け中継局の辺りで暮らしていたなら、まずその局の方向にアンテナを1本、さらにテレビ愛知が受かる方向にもう1本といった具合に準備するでしょうけれど。
ところで、いささか関係ない方向にいくと思われるかもしれませんが、名張といえばアドバンスコープ社は晴れて、関西広域4局のCATV再送信を許されることになったのでしょうか。興味あるところではあります。
>アイ・フロッグさま こんにちは
そのあたりのやりとりは、水面下では行われているのでしょうが、
基本的には、総務省から免許が降りさえすれば…ですよね。
アドバンスコープの関西広域4局再送信問題については、
当サイトで詳報しておりますので、よろしければご覧下さい。
↓
http://toppy.net/broadcast/090104.html
こんにちは!
ついに大高中継局のエリア公開がありました。
http://lbs.mapion.co.jp/dpa_b/dpa_block.html?grp=dpa_b&scl=1000000&size=720,500&nl=35/10/37.787&el=136/54/34.218
送信所は大府市北崎町付近と思われます。
北は平針免許試験場、西は鳴海駅・大高駅付近、南は大府市桃山町近辺、東は藤田保健衛生大学付近までです。
チャンネルや周波数は未発表のようですね。
大高局と同時期に開局予定の、静岡県湖西市の湖西中継局の「放送エリアのめやす」サイトに掲載されていました。
JR新所原駅から望め、ここから二川中継局と湖西中継局の両方が見られるポジションになりそうです。
しかし、湖西中継局のチャンネルが気になりますね。
>犬山市民さま こんばんは
情報ありがとうございます!
予備免許も出ましたね。2wとは驚きです。
近々、現場を見に行ってこようと思います。