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25年ぶりのごんぎつね

記事公開日:2005年3月14日 更新日:

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 久しぶりのブログです。なぜ間が開いたかと言いますと...。

 少し前の話になりますが先月の13日、愛知県半田市岩滑にある「童話の森・新美南吉記念館」へ行ってきました。新美南吉という名前を聞いて、「ごんぎつね」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。「ごんぎつね」は複数の国語の教科書に掲載されていることから、小学生時代に作品に触れた方が多いと思います。

 私が初めて「ごんぎつね」という作品に触れたのは、まだ小学校に入学する前のことでした。私の母親はよく絵本や童話の読み聞かせを私にしてくれました。それだけでなくアニメやマンガについても、作品は選別していたようですが、たくさん触れる機会を与えてくれました。また、ただ私に見させたり読ませたりするだけではなく、見終わった後に必ず私に感想を話させたりしました。

今考えると私の母親は感受性教育に力を入れていたのかもしれません。

「ごんぎつね」という作品を簡単に説明します。

ごんぎつねストーリー

 ある日兵十(ひょうじゅう)という男が小川でうなぎを取っています。そこへいたずら好きの「ごん」というキツネがやってきて、そのうなぎを全部逃がしてしまいます。しばらくしてごんが村へでかけると、そこで兵十の母親の葬儀にでくわします。そこでごんは気づきます。兵十はうなぎが好きだった病床の母親にうなぎを食べさせてあげようと川にうなぎを取りに来ていたのだと。

そして兵十の母はうなぎを食べることができずに死んでしまったと。ごんは後悔します。

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 兵十は母を亡くし、寂しく一人で暮らしています。そこへごんは魚や栗、マツタケなどを持っていきます。魚はごんが盗んで持っていったものだったので兵十は濡れ衣を着せられてしまいました。それ以降ごんは山の幸を兵十の家へ持っていきました。罪滅ぼしでした。ある日、いつものようにごんが栗を兵十の家へ持っていきます。

 しかしそこで兵十に姿を見られてしまいます。兵十は、まさがごんが栗を持ってきてくれているとは思ってもみませんでしたから、いたずらギツネ退治のつもりで、銃でごんを撃ってしまいます。栗を持ったまま撃たれたごん。兵十はそこでごんが栗を持っていることに気づき、「ごん、おまえだったのか。いつも、くりをくれたのは。」とごんに声をかけると、ごんは頷き、息を引き取ります。

 と、こんな話です。この作品もそうですが、新美南吉は4歳の時に母を亡くしているせいか、母と子の関わりが作品に登場することが多いのです。このごんぎつねは最後とても悲しい終わり方をしますが、一方で。

ジオラマやビデオで体感

 キツネの母子が主役の「手ぶくろを買いに」という作品は、母ギツネと子ギツネの言葉のやりとりが絶妙で、そこに子を思う親のやさしさ、そして人間の家庭の温かさ、さらに人間の動物を思いやる温かさが重なって、読むだけで幸せな気分になることができます。

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 この「童話の森・新美南吉記念館」では、南吉の様々な作品についてジオラマやビデオで触れることができますし、南吉の生涯についても詳しく知ることができます。図書閲覧室には南吉作品のほか、童話や児童文学がたくさん収蔵されています。同じ南吉の作品でも絵の書き手によって全く違う世界観に仕上がっているのを見比べるのも面白いです。

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私事ですが

 南吉以外の作品もあれこれ読みましたが、そのなかで武田美穂さんの絵本が面白かったですね。現代の感覚を取り入れつつも、私たちの子ども時代にも通ずるところがあり、懐かしい忘れかけていた気持ちを呼び起こすことができました。また、記念館の外には小川が流れています。実はこの小川、ごんぎつねで兵十がうなぎを取っていた川のモデルになっています。

 もちろんごんぎつねは実話ではありません。南吉はこの小川を見ながら話を考えたのでしょう。

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 南吉は29歳で短い生涯を終えています。私は今ちょうど29歳です。

 この新美南吉記念館に訪れた数日後、前から持病を患っていた私の母親の容態が悪くなり入院し、先日息を引き取りました。最後、母親は言葉も話せない状態となってしまいましたが、母が私に教えてくれたものがあります。それは「母を失う気持ち」です。母を失う悲しみは母を失ったものにしかわかりません。

 そして母を失う瞬間は一生に一度しかありません。そんな「母を失う」という心境を、最後母は教えてくれました。ただ悲しむだけでなく、その気持ちを今後生かして、私もいろいろな童話作品を書いていこうと心に誓いました。幼い頃からたくさんのエモーショナルな体験を私に与えてくれ、最後まで私の感受性を磨いてくれた母親に感謝します。

 今やっと「ごんぎつね」のお話にある二重のせつなさを心から理解することができました。

新美南吉記念館(愛知・半田市)

新美南吉記念館 半田市

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