- 願いごとがかなうことで「有名」
- 神出鬼没で変幻自在・さあどうあやかる
- なんか変わった装飾かと思ったら…全部天狗!
「美濃加茂に日本一の天狗がいる。」
ふと、そんな話を耳にしたので、お隣の可児市で育った相方に聞いてみると、「え…知らないの?」と怪訝な顔をされてしまいました。そ…そんなに有名なのか…。これは行かなくては!ということで、日本一の天狗に会いに行ってきました。そこにあったのは、日本一の大きさの天狗だけでなく、天狗はまさに神出鬼没、そして天狗パワーの証明がこれでもか!と目に見えてわかるスポットでした。
いわゆる新宗教ですね
日本一の天狗がいるのは「こびの天狗山」。その響きを聞くと、天狗に媚びると願いが叶うかのように思えてしまうかもしれませんが、そうではなく、こびとは地名で、JR高山本線の古井駅(こびえき)から歩いて15分程度のところにあります。
歩いて15分と言っても、まさか天狗が市街地や平地にいるわけがありません。天狗は、山にいると決まっています。急勾配な道を登っていきますと、赤い鳥居が見えてきます。神社…かと思ったら…。
この天狗山は荒薙大神を主祭神として、御嶽大神、白姫明神、最上稲荷、子育地蔵尊、観音様が祭られているとのこと。はて…最上稲荷以降はわかるのですが、主祭神をはじめ、あまり聞いたことのない神様たちだな…と思って説明を見てみます。
自ら自信をもって「お願いごとのかなうことで有名な」と言い切る説明によりますと、ここは今から600年ほど前に加治田城主斎新五郎が出城「毛利山城」をを築いた場所だそうです。でもそれは天狗山への説明には繋がっていなくて…。
明治時代、戸田よき之命という人物が、愛娘を亡くしたことをきっかけに各地の霊山を巡り難行苦行の末、数々の霊験を体得し、この地愛宕山に開いたのが天狗山なのです。宗教としては、1900(M33)年に「荒薙教」として開教し、神様の使いとして「天狗」をお祀りしています。
いわゆる、新宗教なのですね。ただ、鳥居があることから神道系であることはわかります。
これが日本一の大天狗!
ではさっそく、日本一の天狗を見てみましょう。日本一の大天狗像は、神殿や社務所とは反対側の駐車場に隣接したところにあります。車を降りて振り返ると…デ、デカい!
日本一の大天狗像、その高さは12メートル強。大きさはもちろんのこと、さすが天狗、その表情にも迫力があります。ここでは願いをかなえてくれる神の使いという存在ですが、やはり天狗といいますと神隠しのイメージがあるので、ちょっと怖いところもありますね。
でもちょっとだけ、こんな天狗に一晩だけさらわれて、小脇に抱えられて大空を舞い、自分たちの住む世界を上空から見ることができたなら…なんて妄想が頭のなかに広がりますね。戻ってこられる約束ができるのなら、そんな一晩の神隠しには遭ってみたいものです。
天狗がいっぱい!
この天狗像だけ見てそのまま帰ってしまったら、それこそ罰が当たって永遠の神隠しに遭いかねません。お参りしていきましょう。
天狗に見守られながら鳥居をくぐりますと、右手に売店、そして左手に天狗茶屋という飲食店が。天狗茶屋の第一の名物は「天狗そば」。さすが天狗山、そばも天狗ですね。ただ…それに続く名物は「五平餅」「おでん定食」だそうです。天狗がらみはそばだけでしたか…。
そして売店には昭和風情が漂う懐かしい感じで、オモチャにお菓子、そして「天狗せんべい」。おお、さすがですね。でも、ふと…天狗、食べちゃっていいの?
境内には、さきほどの日本一の大天狗像とはいきませんけれども、リアル?な人間サイズの天狗像がたくさんあります。これらは奉納されたもので、信仰の厚さが伺えます。そしてやっぱり、天狗はどれもちょっと怖い表情をしていますよね。まあ、それが威厳ですよね。にこやかな天狗の方がむしろよっぽど怖いかもしれません。
そしてひっそりと、かつてここがお城だった痕跡である、毛利山城の石垣に使われていたと思われる石も置かれています。歴史感アップ大作戦。
最上稲荷と子育地蔵
社務所の横にあるのは、最上稲荷と子育地蔵です。お稲荷さんということで、やはり開運・商売繁盛にご利益があるとされ、また、古い人形供養も行われており、毎年3月10日に行われる「最上稲荷祭」では、古い人形を祈祷し、焼納してくれます。
急な石段を登って、いざ神殿へと向かいます。
神殿で見た天狗とは!
神殿に到着してまず目に止まったのが、天狗が使ったとされる一枚歯の下駄です。ここではその下駄を履くことができますが、「ただし、万一下駄に不備があっても怪我などの責任は一切負いません」なので、もしケガをした場合は、天狗に与えられた試練だと思うことが肝要です。
では、神の使いである天狗に願いごとを…と、神殿を見てびっくり。なんか、複雑な装飾が壁にしてあるのかな…と思ったら、そこにはなんと無数の天狗のお面が。これは、先ほどの日本一の大天狗像とはまた違う、すさまじい迫力があります。これこそまさに神出鬼没。これだけたくさんの天狗がいれば、多くの人の願いごとが叶うかな…なんて思ったら…。
そして、祈祷袋という名のお賽銭箱に願いをこめて、神殿内の天狗に向かってお願いごとです。
お祈りをして、顔を上げた瞬間!
なんと、神殿の側面にも無数の天狗のお面が!
これは一体…と思ったら、なんとそれは「奉納面と返納面」。
奉納面のほうは、祈願成就の御礼として奉納された大きなお面のことでして、無数のお面は返納面でした。
返納されたお面。それはかつて、自宅や店舗・事業所などに願いを込めて祀られた天狗のお面で、その願いが叶ったあかつきに、お礼参りと同時に返納されたものなのです。つまり、ここにあるお面の数だけ、願いが叶った人がいるということなのです。
これは天狗パワー、すごいですね。しかも新宗教です。100年という短い期間でこれだけの願いが叶っているわけですから、「お願いごとのかなうことで有名な」と自称してもおかしくありません。
ただ…天狗のおかげで願いが叶って豊かになって、社会的地位を築けたとしても、自分自身が天狗になってしまってはいけません…ね。そこだけは気を付けないといけません。今から心の準備をしておきます。だから…成功させてね、天狗さん。
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