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名古屋弁は門外不出?

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おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 第47回

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 前回、名古屋っ子は名古屋を出ると名古屋弁を使わないと書きましたが、よく考えればそれはどの地方にも言えることで、上京しても故郷の方言をそのまま使うのは関西方面の出身者だけです。

 これはやはり、全国区のテレビ番組でも関西出身の芸能人が関西弁を使用していることで、関西弁に対する免疫が全国の人々にあるということと、関西の出身者が関西弁は全国で使っても恥ずかしくないという意識を持っていることによるものだと思われます。

勝手に劣等感

 特に名古屋っ子は、東京の人間は名古屋のことを常に見下している、大いなる田舎だと思っている、馬鹿にしていると思い込んでいるので、名古屋弁を東京で使うなどということはもってのほか、名古屋出身であることもできれば隠したいという思いがあるようです。本当のところ、東京は名古屋を馬鹿にしているわけではなく相手にさえしていないのですが。

 全ての人がそうだとは言いませんが、やはり標準語や他の地方の言葉の環境下にあればそれに傾倒していくのは当然です。私の学生時代の友人を見ても、東京に就職した人が、社会人になってから知り合いになった東京の友人と話している時は標準語に近くなっていますし、大阪に就職した人は巧みに関西弁を使いこなせます。

 しかし、自分がかつて使っていた言葉を忘れるわけではありません。名古屋を離れ東京や大阪へと就職した人でも、名古屋に帰ってきて私たちと話すときには、名古屋弁が次から次へと自然に出てきます。やはり方言というのは、相手も同じ方言を使う人でないと自然にはでてこないようです。となると、名古屋弁を使えない人は永遠に名古屋弁に接することはできないのでしょうか。

名古屋弁に触れるには

 少し前にあった日本語を見直すブームの際、名古屋弁に関する本がいくつか出版されました。また、インターネット上では名古屋弁辞典と称するサイトも見受けられます。しかし、最大の問題は文字どまりということです。「やっとかめだなも~」「さかしまだでどもならん」「えりゃあ」「ちんちこちんだでかんわ」などという文字を見たところで、名古屋っ子で無い人がその発音とイントネーションを推察するのは絶対に無理です。

 私は名古屋出身そして私の相方は名古屋生まれの岐阜県民なので、二人で話をする際私はコテコテの名古屋弁になるのですが、先日、千葉県出身である相方の友達を交え三人で食事をしました。私とその千葉県の人とは初対面でした。するとその千葉県の人は「名古屋弁って面白い言葉だねー。」と感激していました。

 やはり相方も、千葉県の人の前では名古屋弁を出すことがなく、その友人はそれまで名古屋弁を全く聞いたことが無かったのだそうです。名古屋弁に触れるには、名古屋っ子同士が会話をしているのを聞くのが最良の方法です。とはいえ、名古屋っ子同士の会話に遭遇するチャンスが全ての人にあるわけではありません。そこで朗報です。名古屋弁を堪能できる方法をご紹介します。

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▲ちょっと関西の人がうらやましい名古屋っ子。でも、うらやましいなんて言葉は絶対に口にしません。

ラジオで聞ける名古屋弁

 その方法とは、AMラジオを持ってできれば平日に名古屋へ来て下さい。しかし、名古屋の放送局と言っても全てが名古屋弁を使っているわけではありません。むしろ逆で、かつてはほんの一部の番組を除いて、名古屋弁はほとんど使われることはありませんでした。1997(H9)年4月に、ある放送局が英断を下しました。1,332KHzの東海ラジオ放送です。

 東海ラジオは、常にライバルであるCBCラジオに追いつけ追い越せという立ち位置でイメージを一新するため、平日は名古屋弁という新機軸を打ち出しました。その時にスタートしたのが、午後1時からの「かにタク言ったもん勝ち」と午後3時半からの「宮地佑紀生の聞いてみや~ち」です。現在は「かにタク」が午前9時から正午、「聞いてみや~ち」が午後1時から4時となり、平日は朝から夕方まで名古屋弁一色になっています。

「宮地佑紀生の聞いてみや~ち」のパーソナリティは、それまで昼はアクセサリーショップの社長、深夜と週末はラジオのDJという二足のワラジを履いていた宮地佑紀生さんと、岡崎市出身で人生経験豊富なタレント神野三枝さん。番組の内容はと言えば、毎日テーマを設定し、それについての自分たちのネタや、リスナーから送られてくるお便りを名古屋弁で紹介するだけの3時間です。

 しかし、二人の名古屋弁による軽妙なトークが人気を呼び、名古屋では半年に一度しか行われない聴取率調査でも、名古屋地区全局全番組中トップを何度も経験し、瞬間最高聴取率5.3%というラジオとしては驚異の数字を記録しています。さらには平成14年日本民間放送連盟賞ラジオ生ワイド部門優秀賞を受賞、名古屋っ子が最も聞いているラジオ番組と言っても過言では決してありません。

 午前の「かにタク言ったもん勝ち」は、名古屋の生き字引と言われる蟹江篤子アナウンサーと芸人のタクマさんが、これまたやはりお便りを中心に名古屋弁で喋る3時間の番組です。名古屋弁は汚い言葉とよく言われますが、蟹江アナの名古屋弁はとても優しく、そう、昔お祖母ちゃんたちが使っていたほんわかした名古屋弁で語ってくれます。フォローを入れておきますと、蟹江アナがおばあちゃんだと言っているわけでは決してありません。

 特筆すべきはこの蟹江さんのパートナーを務めるタクマさんです。タクマさんは関西の出身で、名古屋っ子ではありません。にもかかわらず巧みに名古屋弁を使いこなし、ネイティブスピーカーも真っ青です。影でかなり努力されたのではないかと推測できます。

 このふたつの番組のお陰で東海ラジオの聴取率は底上げされ、自主調査ではライバルCBCラジオを追い抜いたことがありましたが、未だに全体でCBCラジオを常時追い抜くという所にまでは行っていません。しかしこの名古屋弁を全面に押し出したことで、「親しみやすさを感じる放送局」という調査ではダントツトップとなっています。

やっぱり名古屋に来てちょ

 それでもやはり名古屋を訪れなければ、これらのラジオ番組も聴くことができない(※)わけでありまして、手っ取り早く名古屋弁に接したいという場合は、以前にも書きましたが東海テレビ制作でフジテレビ系列にて全国ネット放送された「名古屋嫁入り物語」のビデオをご覧に…と書こうと思ったのですが、ビデオ化はされていないようで、神奈川県横浜市の放送ライブラリーなどの施設でしか見られません。

 このドラマをもしご覧になる機会がありましたら、山田昌さんの名古屋弁に注目していただきたいです。蟹江アナ同様とても心地よい綺麗な名古屋弁を聞くことができます。また、主役の植木等さんの名古屋弁も三重県出身ということもあってか不自然ではありません。

※東海ラジオの番組の一部は現在、インターネット上でポッドキャスティング配信されています。

 結局のところ、やはり名古屋弁を聞くには名古屋にお越しいただくしかないということです。ラジオでなくとも、地下鉄などで会話している人の声を聞けば名古屋弁に触れられます。名古屋では今時の女子高生も驚くほど名古屋弁を使います。東京の女子高生は「超○○」という言葉を使いますが、これが名古屋の場合は意味が違ってきます。

 名古屋で「ちょー○○」と言った場合は「ちょっとー」の略になります。東京は超にアクセントがつくのに対し、名古屋では○○にアクセントがつきます。これ、オチになるかなと思ったのですがやはり文字ではうまく伝わらない…。

 そうだ。同じような例で、名古屋っ子の男性が少年時代必ず勘違いする雑誌があります。名古屋弁には「でら」という言葉があります。これはそれこそ標準語で「超」という意味で、「どえらい」が短縮されて「でら」になっています。「でら暑い」「でら腹減った」という具合に使用されます。

 男性ならご存知だと思いますが、英知出版の「デラべっぴん」というエッチな雑誌があります。これ本来は「デラックス・べっぴん」のデラックスがデラと略されているのですが、名古屋っ子の少年達は「どえらい・べっぴん」の略だと思い込んでいます。「デラ」が「でら」で無いと気付くことが、思春期の名古屋っ子が必ず通るカルチャーショックの第一歩です。

 やはり名古屋という世界には壁があるようです。次回はそんな、名古屋っ子が感じてしまう言葉の壁について取り上げてみたいと思います。

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