トッピーの放送見聞録 放送事情レポート

CBCラジオが1ヶ月間深夜放送休止...何のための休止なのか現場を見てきました

記事公開日:2009年2月14日 更新日:

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「オールナイトニッポン」。ラジオの深夜放送と言えば、真っ先にこの番組を思い浮かべると言っても過言では無い番組です。名古屋でも多くの人が聞いていらっしゃると思います。しかし今月、名古屋ではこの「オールナイトニッポン」が一切放送されていません。

 名古屋でオールナイトニッポンを放送しているのは、TBS系列(JRN)のCBCラジオ(中部日本放送)。

 いつものように、午前1時にラジオのダイヤルをCBCに合わせても、ノイズ...いや、明らかに日本語ではない言語しか聞こえてきません。しかし朝になれば、いつものとおり生島ヒロシさんが登場するのです。一体CBCラジオに何が起きているのでしょうか。

 実は、1ヶ月という長きに渡り、CBCラジオは深夜放送自体をお休みしているのです。一体なぜ...もうそれは、現場を見に行くしかないでしょう

こんな大規模な放送休止は異例

 AMのラジオ放送は、極端に貧乏な放送局を除いて基本的に24時間放送が実施されています。ただし、ほとんどの放送局は日曜の深夜だけ放送をお休みし、その間に電波を送り出す設備である送信所の点検したり、工事をしたりします。たまに大掛かりな工事となりますと、その日曜深夜の放送休止時間が長くなることがあります。

 しかし、今回のCBCラジオの放送休止期間は異例の1ヶ月間。2月1日から28日までの間、午前0時から4時までの放送を全てお休みしているのです。

 プレスリリースによると、「三重県桑名市のラジオ送信所の改修工事に伴うもの」とのこと。CBCラジオは、スタジオは名古屋市にありますが、メインの電波は桑名市にある送信所から発射されています。

 これは尋常な工事ではないはず。!。ここでひとつの不安がよぎりました。それは、AMステレオ放送の処遇です。

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この工事...まさか...

 AMステレオ放送とは、1992(H4)年にスタートしたものです。しかし、多くの人は「え?AMラジオにステレオがあるの?」と思われるかもしれません。それもそのはず。わが国では16の民放ラジオ局が導入するものの、NHKが導入しなかったことが仇となりました。

 人々のAMラジオ離れが加速するなかで、AMステレオの認知度は低いままの状態が続き、さらには、受信機の製造も次々と打ち切られ、現在ではAMステレオが搭載されたコンポは皆無。コンパクトラジオもソニーが作っているのみとなってしまいました。

 となると、AMステレオの設備の維持にコストがかかる放送局側もバカバカしくなってきたのか、2007(H19)年に福岡のKBCラジオ(九州朝日放送)がステレオ放送を取り止め。続いて2008(H20)年には、同じく九州にあるRKKラジオ(熊本放送)もステレオ放送を終了してしまうのです。

 AMステレオを取り止めるのには、2つ理由があるとのこと。ひとつはコストの問題。そしてもうひとつは、エリアの問題です。ステレオ放送を実施すると、ステレオで受信できる地域しか「サービスエリア」として認められません。なので、モノラルに比べるとエリア表示がせまくなってしまい、スポンサーへの印象が悪くなってしまうという問題があるのです。

 現在、AMステレオ放送を実施しているのは14の民放局のみ。47局中14局。少数派です。

 ひょっとして...まさか...この工事でCBCラジオもAMステレオ放送を取り止めるのでは...なんて不安を抱きながら、その放送休止時間に桑名市の中部日本放送ラジオ送信所へと行ってみることにしました。

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夜中に煌々と

 午前0時をまわると、CBCラジオの電波は停止。ラジオからは雑音と外国語の声しか聞こえてきません。CBCラジオが使用している1,053KHz。公式には、日本の周辺諸国にこの周波数を使用している放送局はないことになっているのですが、実際には北朝鮮が韓国に向けて放送電波を発射しており、さらに韓国がそれに対して妨害電波を発射しているようです。

 なので、空中に電離層という電波を反射する層が発生する夜になると、朝鮮半島からの強力な電波が降り注ぐため、CBCラジオが停波するとそれらの音声が聞こえるのです。

 桑名市長島町の中部日本放送ラジオ送信所に到着しました。かつて深夜に通りがかったことがありますが、普段は赤い航空障害灯がチカチカ点滅しているだけなのに対し、この日は明らかに様子が違います。送信所のふもとはもちろんのこと、垂直に空に伸びる円管柱も煌々と光り輝いています。

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いざと言う時には

 少し離れたところに車を停め、徒歩で近づきます。すると、同行した事情通の方があることに気づきました。それは、いつもは折り畳まれているクランクアップタワーが伸びでいるのです。

 もし、何か地震や大事件などが発生した際には、そのクランクアップタワーから電波を発射して放送をするということでしょう。

 それはつまり、いつもの送信アンテナは急に電波を出せないような状況にあるということです。

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見上げていると人影が

 一体どんな工事が行われているのか、円管柱を見上げていますと、上から下へと動く光が、放送中継波(STL)用パラボラアンテナ付近に見えます。それは、ハシゴを降りてくる作業員の姿でした。

 円管柱に人が登っているということは、ステレオ放送がどうといった送信設備自体よりも、アンテナの方を工事しているのではないかという推測をしていると...。

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波打つ地面

 さらに送信所に近づくと、事情通の方が「あ!」と何かに気づきました。広大な敷地が確保されている送信所。暗闇に照らされたその地面をよく見ると、土が波を打っています。

「これは、アースを張り替えたな...」

 電波を放出するアンテナと電位を等しくするために、AMの送信所の地面には、アースが張ってあります。地面を全て掘り起こした跡があるということは、どうやらそれを全て張り替えたようなのです。アースがうまく機能していないと、電波の飛びが悪くなります。水分を含む土壌の方がよりうまく機能するため、山間部にある送信所よりも、海岸近くにある送信所のほうが電波状態が良好なのはそこに理由があります。

 CBCはかつて名古屋市緑区に送信所を構えていました。この埋立地である長島に送信所を移転した理由のひとつに、そのアースの良さもあると思います。もちろん他にも理由はたくさんあるでしょうけどね。

 これは確かに、かなり大規模な工事のようです。

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線が多いということは

 送信所のまわりをぐるっと一周してみます。遠目に見ていても気づいたのですが、近づくと、円管柱から地面へと張ってある支線の多さがよりはっきりとわかります。これも、いつもとは明らかに様子が違います。

 地面には、これから張られるであろうものか、取り外したものかはわかりませんが、円管柱を支える支線がたくさん。

 これは、支線も全て張り替える気ですね。

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 送信所の正面にまわると、それはビンゴでした。工事案内には「支線更新工事」の文字が。工期は1月24日から3月3日までです。

 CBCがこの長島に送信所を移したのが1978(S53)年11月23日。ちょうど30年前です。この工事は、その節目に行われているということですね。

 支線更新工事として工期を3月3日まで設けているのであれば、送信機の更新はそこに含まれておらず、それをきっかけとしたステレオ放送の取り止めは無いだろう...と、胸をなでおろします。

 そう言えば...。CBCラジオは、ラジオ送信機を2006(H18)年に更新したとIRで公表していたことをすっかり忘れていました。そんな、3年で更新するわけないですものね。

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実は我が家では聞けないのです

 実は私、取材をしてこんな記事を書いていますが、CBCラジオの深夜放送は全く聴きません。いや...全く聞けないのです。

 我が家は名古屋市の東隣にあるのですが、夜間はこの長島からの電波よりも、朝鮮半島からの電波のほうが強く、CBCラジオはかき消されて全く聞くことができないのです。

 実際のところはわかりませんが、同じ周波数で北朝鮮が発射している電波の強さが1,000kw、そこに韓国が妨害電波を重ねていると言われています。一方、CBCラジオの電波は50kw。

 かつて、100kwに増力するという計画はあったものの、理論上全く意味が無いとのことで却下。さらには、FMで同時放送を行うという計画も、周波数が確保できないということで却下。特に混信の酷い岐阜地区に639KHz(0.5kw)の送信所を作ることで決着しています。

 しかし、その639KHzも届かない私の家ではどうしようもありません。名古屋市のとなりで実用にならないって...ねぇ。

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期待はしてないけどさ

 アースや支線の改善で、その混信に打ち勝つほどの電波になるとは思いませんが、多少でも電波状態が良くなることを期待しています。

 かつて、今回のCBCと同じように、長期間深夜放送を休んで工事をした経験のある大阪の朝日放送(ABC)は、混信対策装置を送信所に搭載しているという話を聞いたことがあります。この工事に、そういった装置の導入が組み込まれていると、嬉しいですが。

 まあ、欲を言えば、639KHzの方も50kwにしてくれないかなぁ。と言いたいところなのですが、50Kw以上のラジオ局の設置には国際的な取り決めがあって、新設は難しいんですよね...。

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工事は今月いっぱいです

 この工事による放送休止は、2月28日まで続く予定です。従って、3月1日(日)の深夜から通常通りに戻る予定となっていますが、もともと日曜は深夜1時15分で放送が終了してしまうので、オールナイト24時間放送は3月2日再開ということになりますね。

 この工事のため、名古屋ではオールナイトニッポンやJUNK ZEROがお休みになっていますが、夜間には名古屋でもニッポン放送やTBSラジオも聞けますから、まあ、そんなに影響は無いかもしれませんね。

 しかし...工事の効率を考えると、朝4時までじゃなくて、生島ヒロシさんが登場する5時半まで休んでもいいんじゃ...。

 いやいや。

 いいわけがありません。午前4時にはあの、凋落しつつあるラジオ業界の救世主とも言える、超安定スポンサーがついた番組がありますから。営業的な損失を出すわけにはいかないのです!

関連情報

CBCラジオ(中部日本放送)
長島送信所工事に伴う放送休止について(中部日本放送)

取材協力

KAZ Communications

中部日本放送ラジオ送信所(三重・桑名市)MAP

35.044075, 136.723763

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