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日本初「コンビニ発祥の地」はどうなる?...ココストアをファミマが買収で

記事公開日:2015年9月9日 更新日:

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★愛知県春日井市にある「日本のコンビニ発祥の地」
★ココストアは2001年まで最強のコンビニだった
★44年間の歴史に幕をおろすのか

 以前から報道はありましたが、正式に「ココストア」が「ファミリーマート」に買収されるとの発表がありました。コンビニ業界は規模の競争の時代に入り、大手が中堅を吸収するという傾向が続いています。

 「ココストア」は、名古屋を中心に中部を地盤とする中堅コンビニという顔のある一方で、「日本初のコンビニエンスストア」という顔も持っているということは、あまり知られていません。と言いますのも、コンビニエンスストアという業態の定義自体がかつては曖昧で、はっきりとそうであると言い切れない面もあるからです。

 とはいえ、現在もココストア1号店には「日本のコンビニエンスストア発祥の地」という記念碑が置かれ、直営店として44年間に渡って営業を続けています。さらに、かつてココストアには「最強コンビニ」として業界で謳歌した時代がありました。

 消えゆくの名を惜しみつつ、日本のコンビニ発祥の地で、ココストアの隆盛を振り返ってみましょう。

吸収合併なので店名は消える

 ファミリーマートの発表によると、10月1日付でココストアを買収し完全子会社化。店名はファミリーマートに変更することとし、12月から約1年をかけて掛け替えを行うとのこと。ファミリーマートはこれまでにもam/pm(エーエムピーム)を買収するなど拡大戦略をとってきました。

 店舗数1位のセブンイレブン(18,092)、2位のローソン(12,142)2強時代と言われるなか、3位のファミリーマート(11,444)はココストア(657)を吸収、さらに4位のサークルKサンクス(6,334)とも統合協議を行っており、統合が実現すればセブンイレブンを超える店舗数を誇ることとなります。

 ココストアは先月まで、5位のミニストップ(2,172)との提携を続けてきましたが、当然解除。2位のローソンもポプラ(526)やスリーエフ(560)と提携するなど、業界再編の動きは加速しています。

※カッコ内店舗数は9月9日付中日新聞より

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「日本初のコンビニエンスストア」ココストア

 愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウン。東京の多摩、大阪の千里とならぶ、昭和40年代に誕生した三大ニュータウンのひとつ。ここに、日本初のコンビニエンスストアが生まれたのです。

 現在も「日本のコンビニエンスストア発祥の地」という看板が掲げられたココストア藤山台店。日本のコンビニエンスストアの歴史はココから始まっているといわれているのです。

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 ココストア藤山台店の前には、「日本のコンビニエンスストア発祥の地」という記念碑が設置されています。

 見ますと、開店したのは1971(S46)年7月11日。「Convenience(便利)」と「Comfort(快適)」を由来として「Coco!ココストア」と名づけられたと書かれています。

 7月11日?まるでセブンイレブンじゃないかと思ってしまうのと同時に、じゃあ、セブンイレブンは日本にいつ上陸したのかといいますと、1974(S49)年5月15日なので、ココストアの方が3年近く早く誕生したということになります。

 7月11日は「セブンイレブンの日」に制定されていますが、その日本1号店が5月15日オープンで、日本初のコンビニを自称しているココストアの開店日が、7月11日なのは興味深い一方、無関係ではなさそうなのです。

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アメリカを視察して導入

 ココストアはどういった経緯で誕生したのでしょうか。実は、ココストアは「コンビニエンスストアを始めよう」というきっかけでスタートしたのではなく、昭和40年代に入ると各地にスーパーマーケットがオープン。それに押されて経営が難しくなった「個人商店の酒屋さんを何とかしなければ...」という思いがきっかけなのです。

 関係者にお話を伺いましたところ、清酒「ねのひ」で知られる酒造メーカー「盛田」の関連会社で、お酒の卸をしていた盛田和昭氏が、スーパーがどんどん開店していく様を見て、酒屋をなんとかしなければならないと、アメリカを視察。そこで見たコンビニエンスストアを日本に持ち込んで始めたのが、このココストア。きっとその視察では、セブンイレブンも見たのでしょう。だからこその7月11日、日本のセブンイレブンになろうという心意気だったのではないでしょうか。

 まずは直営でこの藤山台店をオープン。その後、個人商店の酒屋さんをコンビニエンスストア・ココストアへと導くことで、酒屋さんの「復活」を実現させたのです。ちなみに、盛田和昭氏は、ソニー創業者の故・盛田昭夫氏の弟です。

お酒が売っているコンビニ・ココストア

 昭和50年代。ココストアの地盤である東海3県には、セブンイレブンは21世紀になるまで進出を控えていたため、サークルKとココストアが2大勢力として隆盛を極めるのですが、ココストアには他のどのコンビニにも無い「強み」がありました。

 それは、酒屋さんがやっているコンビニであるということ。2001(H13)年まで、わが国はお酒の販売には距離基準による免許制度があり、既存の酒屋さんから一定の距離が離れていないと、お酒の販売免許は取得することができませんでした。

 そのため、新しくオープンしたコンビニはお酒を扱うことができない一方で、酒屋さんが経営していたココストアは、どの店舗にも必ずお酒があるというメリットが大きく、「ココストアに行けばビール・お酒がある」を武器に、店舗数を拡大。ライバルに差をつけていました。

 ただ一方で、当時はお酒の販売時間に制限があったために、24時間営業はできないというデメリットもココストアはありました。ところがそれは、夜中は店をあけなくてもいいという、フランチャイズ経営者にとっては好都合という側面でもあったそうです。

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店内調理も元祖

 1994(H6)年になると、ココストアは他のどのコンビニよりも先駆けて「店内調理」を導入。「Coco de Cook(ココ・デ・クック)」は、特に営業中のビジネスマンには人気を集め、昼時になるとココストアの駐車場が営業車で溢れかえっているという様子をよく見かけたものでした。

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 ココストアの店内調理品のなかでも「ばくだんおにぎり」は特に人気で、「ココストアといえばばくだんおにぎり」と言う人も多いほど。時間の無い営業マンがあっという間に食べられて、ボリュームも満点。さらに、お店で作られたばかりという「温かさ」が感じられると評判を集めました。

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 さらに、同様に店内調理を導入していたミニストップと業務提携。商品開発を共同で行うなどスケールメリットを出そうと試みたのでした。

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21世紀になると風向きが変わる

 ココストアの隆盛は続きませんでした。2001(H13)年になるとお酒の距離基準による販売免許が撤廃に。2002(H14)年になると、セブンイレブンが東海3県への出店を決定。

 それまで、ココストアの本社のある愛知県では、1位のサークルKについで、2位のシェアを誇っていたココストアは、閉店や他コンビニへの転換が相次ぎ、現在では6位にまで落ち込んでしまっています。

 もともとが昭和50年代に酒屋さんから転業したオーナーが多く、お酒販売時間の規制緩和に伴う24時間営業化への抵抗、引退・廃業のタイミングが重なり、個人商店の転換をきっかけに始まったココストアは、その世代が引退すると同時に、とりまく環境が厳しくなり、他のチェーンに比べて極端に店舗数を減らしていったのです。

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ファミリーマートが日本初のコンビニになるの?

 ココストアは今期赤字転落。10月1日付でファミリーマートの完全子会社となり、12月から店名が「ファミリーマート」に。各店舗は採算性を見て、統廃合される形となります。

 「地方のコンビニ」は残ることができない時代なのでしょうか。ところが、そうは言い切れないのです。北海道にはこのココストアと同様に、1971(S46)年に開業し、酒屋さんからの転換を大元とするローカルコンビニ「セイコーマート」があり、こちらは現在も北海道民の「好きなコンビニ1位」「北海道内の店舗シェア1位」に輝いています。

 名古屋を発祥とするコンビニ「ココストア」と「サークルK」。その両方がファミリーマートに飲み込まれようとしています。まずはココストアが飲み込まれることになりました。

 なぜ、ココストアは名古屋のセイコーマートになれなかったのでしょう。なぜ、サークルKは名古屋のセイコーマートになれなかったのでしょう。ローカルビジネスを展開している企業にとっては、その原因を探ることは大きな意味があるでしょう。

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 「日本のコンビニエンスストア発祥の地」を有するココストアを買収したということは、今後はファミリーマートが「日本初のコンビニ」ということになるのでしょうかね?でも、それはちょっと違う気がします。

 日本のコンビニエンスストアチェーンのなかで、最も長い歴史を誇ってきたココストア。その歴史は「44年」で幕を下ろします。

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イメージキャラクターになってましたよね。

ココストア藤山台店(愛知・春日井市)MAP

春日井市岩成台9丁目2−14

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