岐阜県の観光地のなかで知名度も高く、日本三名泉のひとつと謳われる、下呂温泉へふらっと行ってきました。名立たる観光地として貫禄のある余裕の雰囲気を味わえるかと思いきや、なんだか必死で、その必死さがものすごい勢いで空回りをしているような、そんな空気を感じてしまいました。下呂温泉で今、何が起きているのかをレポートします。そして考察だけではなく、勝手にご提案も。
国道降りたら...国道降りなきゃ...
名古屋から国道41号線を北上すること約100キロ。その国道41号線を降り、旧41号で下呂市街を走るとすぐに現れる温泉街「下呂温泉」。ずっと41号線を走れば到着というわけで、道に迷うこともなくアクセスは良好です。
でも、国道は街なかや温泉街を通っているわけではなく、国道41号を走り続けるだけでは下呂の風情を感じることはできません。下呂を目的地としてやってくる人はいいでしょうけど、41号を走っていてふと温泉街風情を感じて立ち寄ろう...という気にはなりません。道路は街を外れて太くなって便利になったけど、その分素通りも多くなっているのでは?という気もします。
下呂は飛騨ということで!
下呂市は岐阜県の中央部に位置していて、岐阜県の真ん中は、東側が下呂市、西側が郡上市となっています。
その岐阜県を行政は5つの区域に分けています。岐阜・西濃・中濃・東濃・飛騨。
下呂と郡上は横に並んでいるのですが、郡上は「中濃」で、下呂は「飛騨」となっています。ですので、郡上ではあまり見かけないものが、下呂では前面に押し出されています。
あるものとは...。
今や飛騨が誇るキャラクターグッズに成長しつつある「さるぼぼ」です。
さるぼぼはその昔、飛騨のおばあちゃんたちが子どもたちに作ってあげた赤ちゃんに似た猿のぬいぐるみで、郷土人形だったものが今やお守りとして、魔除けとして、そしてキャラクターグッズとして人気を集めています。
「さるぼぼ」は現在、飛騨の地域団体商標に登録されているので、いくら近くとも中濃である郡上ではこれを観光の目玉として押し出すわけにはいかず、その一方で、飛騨である下呂では堂々と扱うことができるというわけです。
そんな下呂で、店先に巨大なさるぼぼが置かれ、店名からしてもうこれに賭けてます!という勢いを感じる店を発見しました。「さるぼぼはうす」です。
下呂ロイヤルホテル雅亭の別館にあるこの「さるぼぼはうす」には、様々な大きさのさるぼぼのほか、食べ物やストラップなど、本当にありとあらゆるさるぼぼグッズが置かれ、力が入っています。しかし、力が入っていたのはおみやげ販売だけではありませんでした。
さるぼぼはうすの横にはなんと、さるぼぼの神社が。しかも、巨大なさるぼぼが七色いて、それぞれを七福神に見立てているではありませんか。その名も「さるぼぼ七福神社」。
説明書きに「等身大のさるぼぼ」とあるとおり、それはもはやカワイイというレベルではなく、神としての威厳すらを感じさせます。猿の赤ちゃんがいつしか神になってしまいました...。
彼のおかげで三名泉に
今はさるぼぼに賭けている様子のある下呂ですが、下呂温泉は「日本三名泉」として古くから抜群の知名度を誇っています。その三名泉の根拠となっているのが、江戸時代の儒学者である林羅山による詩文集「天下三名泉」内での言葉です。林羅山は有馬と草津と下呂を三名泉としたのでした。
ちなみに、下呂温泉がそう呼ばれるようになったのはなんと昭和に入ってからのことで、その当時は「湯之島」と呼ばれていたので、詩文集には「湯嶋」と記されています。
下呂温泉は、1989(H元)年に年間入湯客が150万人を超え、それを記念して林羅山と猿たちが戯れる像を建立しています。
下呂の方には余計なお話になりますが、林羅山が三名泉を記した江戸時代よりもずっと前の平安時代には、枕草子が有馬と榊原(三重)と玉造(島根)を三名泉と言っています。ということは、有馬は時代を超え、我が国の名泉中の名泉ということになりますね。
ちなみに、室町時代には禅僧で歌人の万里集九も三名泉として有馬と草津と下呂を挙げてるとのこと。ははん...林羅山...パクった?
下呂市街にはそんな林羅山の像のほかにも、「日本三名泉発祥之地」という碑も立っています。
そこまではわかるんです。三名泉と言われたら嬉しいですし、実際にそれで多くの人が訪れているのですからね。そしてさるぼぼもわかります。でも、この後、わからないものが登場するのです。なぜ下呂にそれなのか...。
下呂にチャップリンのワケ
先ほどの林羅山の像の向かいには、もうひとつ像があります。なんだか、チャップリンっぽいんだけど...と思って見ると、やはりそれは、世界の喜劇王と呼ばれるあのチャップリンの像。チャップリンも下呂に来て温泉に入ったの?と思ったら、どうも違うんです。
確かにチャップリンは岐阜には縁があり、2度鵜飼を見ているのですが、それとも関係は無いのです。
実はこのチャップリン像、下呂温泉観光協会が「観光客が映画について語りながら温泉街を歩けるような、映画通りを作ろう」という「ミラクルマイル事業」の第一弾として2001(H13)年に作られたもので、除幕式を兼ねて「下呂温泉シネマテーク2001チャップリン映画祭」なんてイベントも開かれたとのこと。
ということは、
他にも映画を思い起こさせるようなブロンズ像がいるの?第二弾は誰?
今年の映画祭はいつ開催されるの?
...。
どうやら、そういった質問は下呂ではタブーのようです。チャップリンは一人寂しく座り、下呂の映画通りではチャップリンの映画についてしか語ることは許されません。
足湯はビーナスですか!
さて、せっかく下呂に来たのですから温泉に...ということで、立ち寄り湯のなかでも、公共浴場としてなんと300円で入ることが出来てしまうという、白鷺乃湯へとやってきました。なぜ白鷺なのか。下呂温泉は、薬師如来の化身であった一羽の白鷺によって導かれて湧き出たという伝説によります。
この白鷺乃湯、なんだか大正モダンを感じる建物だなあと思ったら、なんと1926(大正15)年オープンというリアルな大正時代のもの。
それでは、温泉に...といきたいところだったのですが、この日は相方が女の子の日...ということで、その白鷺乃湯の前にあるビーナスの足湯で済ませることにしました。でも、足湯でも充分温まりましたよ~。
ビーナスの足湯にはその名の通りビーナス像が...。まあ、洋館風の大正モダンの建物の前ですし、チャップリンよりはかなり整合性を感じます。
それよりもゲロゲロ♪
さるぼぼ、チャップリン、ビーナス。下呂は一体どこに向かいたいのか...。
でも、私のなかで下呂のイメージと言うと、このCMソングのせいもありますが...。
「♪ゲロ、ゲロ、ゲロと鳴くカエル、名古屋~を出れば飛騨路に~下呂の小川屋~」
ダジャレなんでしょうけど、下呂といえば「カエル」なんですよね。実際、下呂の街を歩いていますと、カエルのオブジェや、かわいらしいカエルが描かれた仕切弁なんかに遭遇します。
ゆるキャラが流行っている昨今、下呂にもそんなカエルを使ったキャラクターを作ってみてはどうでしょう?というわけで、勝手に考えてみました。
どうも下呂は、さるぼぼで行きたいようですので、そんな「さるぼぼ」と「ゲロゲロカエル」を組み合わせて、
「げろぼぼ」
なんてどうですか?
こんな感じで。
ひこにゃんがあれだけ人気になるご時世ですから、どうです?
どうせもう「映画の下呂」で推し進める気もなさそうだし、ここは一つこの「げろぼぼ」で行きましょうよ。国道41号沿いに「げろぼぼの足湯」併設の道の駅なんか作っちゃったりして、足湯で引き止めて、そこから宿泊客を呼び込んで、合言葉は「高山には行かせない!」てな感じで(笑。
ちなみに、現時点で、「げろぼぼ」「ゲロボボ」という名前は、ネット上で一切存在しないことを確認していますので、もしこのアイデアを本気でご使用の際には、必ず私にご一報をお願いいたします。(ネーヨ)
関連情報
・下呂温泉