石像だって居眠りするし他ごともする!?羅漢寺・五百羅漢

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TOPPY
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表情が豊かで一見楽しそうに見える石像たち、しかしその姿は何を表現したものなのかを考えると…。

AIKATA
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重く分厚い木の扉を開けた先にある、石窟のなかの別世界。ちゃんと元の世界に戻れるよね?

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羅漢寺・五百羅漢(島根・大田市)

島根県大田市大森町イ804
TEL:(0854)89-0005
休み:不定休
9:00~17:00
拝観料:500円

石見銀山のふもとから歩き始めて800メートル、町並み地区はここまでです。食事の時間45分を入れて1時間半ですからまだまだ大したことはありません。いよいよ銀山地区に入ります。石見銀山はここからが本番です。と、その前に。銀山地区と町並み地区の境にある羅漢寺へと立ち寄ることにします。バス停「銀山公園前」のすぐ近くにあります。

羅漢寺は、1764(明和元)年に創建されたお寺です。その時期からもわかりますとおり、石見銀山の隆盛とともに創建されています。銀山とどんな関わりがあるのか。それは由緒を聞けば納得です。羅漢寺は「五百羅漢坐像」を祀るため、代官所役人など多くの人の援助によって建てられたもので、その五百羅漢坐像は、銀山で亡くなった人々を供養するために発願されたもの。つまり、銀山あってこその羅漢寺なのです。

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羅漢寺は銀山川のほとりにあり、川には石造りの反り橋が架けられています。その先は崖です。しかしただの崖ではありません。崖に階段が設けられていたり、塔があったりします。そしてその階段の先には、崖なのに扉がついています。そう、この扉の向こうに五百羅漢坐像は祀られているのです。

石窟のなかに祀られた、銀山で亡くなった人を供養するための五百にも及ぶ坐像。そのイメージで石窟のなかを想像すると思わず身震いが。五百羅漢坐像を見るためには拝観料が必要です。橋を渡ったところで拝観料を支払うことになります。なかは撮影禁止とのこと。果たしてどんな坐像たちが石窟のなかに安置されているというのでしょう。

重厚かつ、歴史を感じる木製の扉を開けて、いざ石窟のなかへと入ります。すると目の前には数え切れないほどの座った姿の石像がずらり。その姿を見てびっくり。鉱山のなかで亡くなった方を供養するために彫られたということで、険しい表情の石像たちかと思ったら、全く逆。ひとつとして同じ表情、いや、同じポーズをしているものさえなく、それぞれの坐像が、動き出すのではないかと思えるほど生き生きとしています。

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石像たちは、ちゃんと座禅を組んでいる者がいる一方で、居眠りをしていたり、隣の人とヒソヒソ話をしていたり、それどころか、片足を立てて後ろの者と雑談をしていたりと、坐像それぞれがリアルというよりも、この坐像たちの集まりそのものが、まるで実際に人間が集まっているのではないかと思えるようなリアルさなのです。これはひょっとして、銀山で亡くなった方たちが、極楽に行った後の様子を表現しているのでしょうか…。

実際のところはそうではなくて、五百羅漢というのはお釈迦さまに従っている500人の弟子のことでして、感情や欲望は超越しているのですが、菩薩の境地には未だ到達していない状態。つまり、人間と仏の間の存在とのことです。

表情豊かな坐像たちに思わず和んでしまう一方で、身内を鉱山で亡くした人たち、たとえば工夫の母親なんかがここで、亡くなった息子を供養するとともに、坐像の表情を見て、息子がこの坐像のように、極楽で幸せに暮らしていて欲しいな…と願いながら母親自身の心を慰めていたのではないかと思うと、外気と遮断されているだけに、時空を超えてこの石窟にそんな思いと空気がまだ残っているのではないかと感じ、心が締め付けられました。

当時、この五百羅漢坐像のなかに、死別した親族に似た顔の石像が必ずあるという噂が広まり、亡くなった親族に再び会いたくて訪れる人がたくさんいたそうです。

石窟はふたつあり、それぞれに坐像たちが祀られています。また、崖の中腹には「大宝筐印塔」があります。これは八代将軍徳川吉宗の次男である田安中納言宗武卿を供養するために建てられたもので、田安中納言宗武卿は五百羅漢坐像建立に寄進をしています。

これだけの坐像が完成するまでには25年の歳月がかかったとのこと。それから250年もの月日が流れているにもかかわらず、坐像には色彩もまだ残っています。それは、石窟のなかにあるという環境だからでしょうね。

外と遮断された、石像たちがずらりと座っている空間に入ってお参りをさせていただくわけで、それはまるで、250年前の人たちが寄り合っているなかに混ぜていただくような、そんな錯覚を覚えました。今にも話し声が聞こえてきそうでした。

関連情報

羅漢寺|島根県大田市高野山真言宗の寺院、羅漢寺 |

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