石見銀山をしっかり散策するには、徒歩にしてもレンタサイクルにしても腹ごしらえが重要です。
その割には飲食店が少ない!そして、儲けようという気も感じられない…。
天領茶屋ひろた屋(島根・大田市)
TEL:(0854)89-0338
休み:第2・第4木曜日
10:30~16:00
バスの本数が限られている石見銀山では、あらかじめ世界遺産センターで「石見銀山みてあるき」というパンフレットをもらった上で、行動計画を練る必要があります。でないと、食べ物にありつけないだけではなく、駐車場に戻る手段を失ってしまう可能性があります。レンタサイクルもあるのですが、複数の人数での観光には向きません。私たちも徒歩で散策することを決めた以上、迂闊な行動をすることはできません。
そこで、大森の町並みを散策しながらパンフレットを見て、その後の行動を考えます。下手をすると3.1キロの道を往復歩くことになります。しかも真夏の炎天下です。これは腹ごしらえをして体力をつけておく必要があります。
パンフレットのマップを見ながら相方がひとこと。
「食事するところが全然無いよ…。」
え!?ここは世界遺産にもなってる観光地だよね?まさかそんな…と思いながらマップを見ると、確かにこの先、カフェや喫茶店、茶屋が数件ある程度で本格的な食事ができそうな店がありません。石見銀山で食べればいいやと思っていたので、朝から食べずにやってきて、もう午後1時です。これはヤバい…と思った瞬間、つぶらな瞳でこちらを見ている視線を感じました。
その視線を放っていたのはタヌキです。陶器製のタヌキの置物が、私たちを誘うかのように見つめています。しかもそのタヌキの横の看板には「お献立表・釜めし」の文字。これは入るしかありません。童話ですと大抵、こういう展開はタヌキに化かされることになるのですが、もうこの釜めししか私たちには選択肢はありません。
お店の名は「ひろた屋」。外から店のなかの様子を窺い知ることはできず、普段だったら引き戸を開けるのを躊躇しそうな感じなのですが、思い切って中に入ると、年季の入った趣のある建物であることがわかります。
感じのよさそうな店員さんが登場。店先には営業中という看板、しかも「一生懸命営業中」と書いてあったにもかかわらず、なぜか私は思わず確認。
「釜めし、やってますか?」
するとこれまた、儲ける気の無さそうな、観光地らしからぬ返答が。
「注文を受けてから作りますので、20分ちょっとかかりますけど、よろしいですか?」
もちろん、全然よろしいです。ということで、そうめんと山菜釜めしを注文です。これで一安心。しかも幸運なことに、席が空いていました。その後何組か、満席であることと20分という待ち時間に耐えられない方々があきらめて店を後にしていました。この先、食事どころは無いだろうに…。
先に運ばれてきた冷やし素麺をいただきます。島根県は、名古屋とは醤油の味が全く違って甘めという話は聞いていたのですが、思っていた以上にそうめんつゆの味が違います。軽くカルチャーショック。そして素麺を食べ終わった頃に山菜釜めしが登場!
これぞ、待った甲斐があったというもの。炊きたてのご飯と山菜の風味が絶妙です。そんな釜めしを頬張りながら店内を見渡すと、芸能人のサインが張ってあったり、昔の写真が飾ってあったりします。実はこのお店、本業は旅館なのです。しかし、石見銀山に飲食店が少なすぎることを憂いて、釜めし店をオープンしたとのこと。それにしても、そこで回転率の悪い釜めしをチョイスするところが、これまた素朴でいいですね。ということにしておきます。
この山菜釜めしのなかで、ひとつとても気になったのが小鉢。黄色い麺状のものに鰹節がかかっていて、食感が独特。これまで食べたことの無い食感です。お店の方に聞くと、これは「そうめんうり」という野菜。細長く切ったのではなく、茹でると勝手に麺状になるのだそうです。出雲地方ではこの季節よく食べられているとのこと。こういった食材に会えるのも、遠方への旅行の醍醐味ですね。
素麺とかぶってましたけど。
コメント