河口湖木ノ花美術館(山梨・富士河口湖町)
今回、山梨県まではるばるやってきた真の目的は「河口湖木ノ花美術館」を訪れることでした。河口湖の北岸にあるこの美術館は、猫のダヤンが活躍する、池田あきこさんによる創作の世界「わちふぃーるど」をテーマにした美術館です。
実はここを訪れるのは初めてではなく、私と相方は8年前にも二人でここに訪れているのですが、当時はオープンしたばかりで、元々あった建物に展示作品を並べていただけという感じの状態だったのが、現在では美術館自体がそのわちふぃーるどの世界を再現した外観になり、さらに展示スペースも大幅に増えたとのことで今回再び訪れることにしました。
猫のダヤンについては元々は相方が好きなキャラクターだったのですが、私も中学生の頃、同じく池田さんの作品である「ヨーヨーの猫つまみ」が好きだったということもあり、空想世界については価値観の違う私と相方の2人が、珍しく共通して好きなのが池田さんの世界です。
河口湖木ノ花美術館は、展示スペース、ショップ、そしてレストランからなっています。駐車場に車を停めて入口へと足を進めると、手前にはわちふぃーるどの物語に登場する「タシールエニット博物館」を再現した建物があります。丸みといい、質感といい、池田さんが描かれる絵をそのまま再現しています。
デザインだけでなく雰囲気もまるでそのままです。塗装もものすごく手が込んでいます。その建物の横には、物語を読んでいる人ならわかるダヤンの友達の姿もあります。
入館料が必要なのは、美術館2階にある展示室のみです。大人500円、中高生400円、小学生300円となっていて、河口湖周辺のホテルなどに割引券もあります。展示室へと上る階段の手前には王様の衣装を身に着けた「王様ダヤン」の姿があります。
展示室には絵本の原画などが展示してあるのですが、それぞれ赤や青、黄色といった原色の壁に飾られていて、それぞれの作品のストーリーが持つイメージを壁の色と合わせて体感することができます。
絵だけがただ展示されているわけではなく、順番に話を読みながら原画を見ていくことができますので、壁に掲げられた絵を鑑賞するというよりも、池田さんの世界のなかを漂いながら歩くという表現が正しいかもしれません。ちなみに展示物は期間を区切って入れ替えられるそうです。
展示室は工夫されており、時には小さな窓からしゃがんで向こう側を覗いたりしなければならない演出も施されています。
原画だけでなく、わちふぃーるどの世界を再現したジオラマや、池田さんのアトリエを再現したコーナーなどもあります。画材や下書き、そして取材の写真、色彩設計や絵コンテ、皮人形などなど…それらに吸い込まれるようにまじましと見てしまいました。
このアトリエから全てが生み出されているのだな…と思うと感慨深いですし、下書きの絵でさえすごく惹かれるといいますか、下書きが下書きに見えません。
わちふぃーるどの世界を満喫して出口です。展示室から降りたところには読書室があり、絵本を読むことができます。そしてその先にある「Dayan Shop」では、本だけでなくダヤンたちの様々なグッズを買うことができます。
私たちは街のお店でダヤングッズが売られていると結構見るのですが、やはりここにはここでしか扱っていない商品も多く、初見のものがたくさんありました。2人してあれやこれやといろいろ買ってしまいました。店員さんが親切にいろいろと商品の説明をしてくださったのも嬉しかったです。
見ただけではわからないその絵に隠された秘密とか…面白いですね。店員さんの話を聞いた相方はある絵をとても気に入りその絵…自体ではなくパズルを購入しました。さすがに絵は高い…。
ではレストランカフェでゆっくりすることにします。美術館には「レストランカフェ・オルソンさんのいちご」が併設されています。テラス席もあり外で食べれば、まるでわちふぃーるどの一角で食事をしているような錯覚に陥ることでしょう。また店内にもあちこちにダヤンの絵が飾ってあります。
オルソンさんというのはわちふぃーるどの世界では農場を経営している名士です。池田さん曰く、木ノ花美術館のオーナーさんがオルソンさんにそっくりなことから名づけたそうです。
食事もデザートもここで食べたいと思ったのですが、私たちは小食なのでとても一度には両方食べられませんので、レストランには2度訪れました。有料なのは展示室だけですから、食事やデザートを食べにふらっと立ち寄ることも可能です。ではまずは食事から。
私はハンバーグステーキを、そして相方はトマトとたらこの温パスタを注文しました。ハンバーグは甲州牛を使っているだけあってやわらかくておいしい!10日間かけて作られているというデミグラスソースもたまりませんでした。
このオルソンさんのいちごは、その名のとおりいちごが名物です。実際にこの美術館の向かい側にはいちご畑があり、その自家栽培のいちごを使ったメニューがあります。その中で気になった「いちごのコーヒー」を頼んでみました。
見た目はいちごの濃厚なジュースといった感じなのですが、アイスコーヒーといちごジュースが一体となっていて、口当たりはいちごの風味がいっぱいなのに、喉ごしと後味はコーヒーという実に不思議な飲み物でした。ガムシロップがついてきますが、入れなくてもいちごの甘みで充分です。
そしてデザート。コーヒーか紅茶とケーキがセットになった「ダヤンのケーキセット」は、カップやソーサー、そしてケーキ皿全てにダヤンの絵がありとてもカワイイ。思わず欲しくなってしまいましたが、残念ながらこの絵のカップなどは売られていませんでした。欲しかったなぁ…。結局私は、違うデザインではあるものの、ダヤンのマグカップを購入しました。
このレストランカフェは味も然ることながら、何といっても店内や窓の外に広がる風景を見ていると、まるで異世界にいるようで、不思議な時間を楽しめるのが魅力です。ふと窓の外をダヤンが横切っていくのではないか、そんな気がします。
異世界をこれだけしっかりと具現化できるのも、その世界観が揺らぎの無い確固たるものだからでしょうね。そんな異世界に気軽に入り込めるこの美術館は、とても素敵なところです。いい時間を過ごせました。
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