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古代のロマンと今が地続き・神話と現実がひとつになる-古代出雲歴史博物館

記事公開日:2008年8月17日 更新日:

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TOPPY
神々について実は曖昧な知識のまま来てしまった出雲。ここでしっかりと理解することができました。
AIKATA
トッピーは神話知らなさすぎ。古事記か日本書紀か、せめてどっちかは読んでから来なさいよ。

古代出雲歴史博物館

島根県出雲市大社町杵築東99-4
TEL:(0853)53-8600
駐車場:244台
常設展600円(企画展別途)
9:00~18:00
(11月~2月は17:00まで)

 出雲大社のすぐ東隣、歩いて数分のところにあるのが「島根県立古代出雲歴史博物館」です。この博物館の面白いところは、科学的に出雲大社の古代の姿を検証して再現したり、遺跡発掘された数々の出土品を展示していたりする一方で、出雲の国に伝わる神話や伝承を紹介したりしていて、神話と現実の間に境界線を引くことなく、この出雲の国に伝わる歴史を振り返っているところです。

 さらには、神話から古代現代に至る島根の人々の生活と交流を展示していて、神話と現代は実は繋がっているんじゃないかとも思わせてくれます。では、古代の出雲と神話の世界へと旅立ちます。

背景と調和した開放的な庭園

 博物館の周囲は「風土記の庭」として庭園が整備されていて、背景の八雲山などと調和してとても開放的です。庭園だけでなく体験用水田もあり、古代米を栽培しています。そして博物館のなかに入っても開放感は続きます。廊下は3階まで吹き抜けになっている部分もあり、外壁はガラス張りになっていて、思わず庭に向かって走りたくなってしまいます。しかし本当に走ればもちろん、ガラスにバーンとマンガのワンシーンのようにぶつかります。

 正面入口から入りますと、左手がミュージアムショップ、右手が受付となります。展示室は全て1階にありまして、「テーマ別展示室」「総合展示室」「神話回廊」までが常設展示、そして別料金の「特別展示室」の企画展という構成になっています。

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カフェでは古代米の軽食

 2階にあるカフェ「阿礼」では、体験水田などで作られた古代米を使った軽食を楽しむことができるほか、1階には「ミュージアムショップ一畑」もあり、地域の特産品や伝統工芸品はもちろんのこと、歴史に関する図書や、博物館のオリジナルキャラクターである出雲ちゃん雲太くんグッズも購入することができます。

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巨大な柱は直径3メートル

 では、展示室へと入りましょう。まずロビーで目に飛び込んでくるのが巨大な柱です。これは出雲大社の境内から出土した、鎌倉時代の宇豆柱で、なんと直径は3メートルもあり、平均直径1.3メートルの柱が3本束ねられています。3メートルの柱を使わなくてはいけないほどに巨大な社殿だったということでしょうか。

 ちなみに現在の本殿に使われている柱は直径87センチです。それで本殿の高さが24メートルですから、鎌倉時代はいったいどんな大きさの社殿だったのいうのでしょう。

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 ということは、単純に考えても今の3倍の高さ?ということは、高さ72メートル?と素人考えをしてしまいますが、さすがにそこまでではなかったようです...が、しかし。

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古代の出雲大社は巨大だった

 出雲大社のところでもお話しましたが、古代の出雲大社は48メートル、いや、96メートルだった?と、とにかく巨大であったと伝えられています。

 これはかつて、国造りを行った大国主大神から、「天照大神の子孫こそが国を統治するべきだ」として、国を高天原(たかまがはら)の神々に譲らせるかわりに、大国主大神に対して、高天原にも届くような巨大な神殿を授けよう、ということで作られたのが出雲大社であるため、かなり背の高い建物になったと伝えられています。

「テーマ別展示室」に入りますと、平安時代の出雲大社を10分の1で再現したという、ものすごく長くて高い模型が展示されています。出土した先ほどの太い柱から、5人の建築家が古代の出雲大社の姿を想像した模型のうち、絵図や言い伝えなども考慮して、最も有力なものがこの模型です。

 これで10分の1ってどういうこと?と思ってしまうほどです。この模型は言い伝えなどから推測されたものなのですが、平安時代の本殿の高さはなんと48メートル。階段の長さは109メートルもあったというのです。これでは、本殿にたどりつくまでにヘトヘトになりそうです。

 平安時代に作られたと思われる本殿は、その高さなんと48メートルほど。まあ、古代の96メートルは神話の域を出ないかもしれませんが、平安時代の48メートルってものすごい高さですよね。16階建てのビルの屋上くらいですものね。

 ただ、もちろん当時はエレベーターやエスカレーターがあるわけもなく、本殿への参拝はさぞかし大変だったことでしょうね...。

 他にも、出雲国風土記の世界を再現した模型や、斐川の荒神谷遺跡から出土した358本の銅剣、加茂岩倉遺跡から出土した39個の銅鐸などがあり、まさに古代を体感できます。そして「総合展示室」で時代を下ります。古墳から銀山、製鉄と辿ることができます。

古代の出雲の暮らしとは

 続いて「出雲国風土記の世界」では、古代のこの地方の様子が描かれた「出雲風土記」をもとに、当時の暮らしが再現されています。結構活気のある生活をしていたんだな...と感じました。

 そして「青銅器と金色の太刀」のコーナーはすごい。斐川町の「荒神谷遺跡」から出土した、国宝となっている358本の銅剣に、16本の銅矛、6個の銅鐸が、一部複製品もありますがずらりと並んでいます。なぜ、同じ場所からこれだけのものが出土したのか...それは謎です。

 同じく国宝となっている、加茂岩倉遺跡から出土した39個の銅鐸も大迫力。そんなリアルな弥生時代や古墳時代と、神話の世界が交錯するのがこの博物館の面白いところ。

 神話の世界へと旅立つ前に、これら3つのコーナーのある「テーマ別展示室」を出ますと続いては「総合展示室」があります。ここでは、古代から現代へと繋がる島根の様子を紹介しています。まあ、県立博物館ですから、島根の産業の歴史などにもしっかり触れておかないといけませんよね。世界遺産となった石見銀山の御取納丁銀のレプリカは、意外と重かったです。

体感できる神話回廊・神話シアター

 出雲国風土記の世界から製鉄へと、古代と現代が繋がっていることを感じたところで、「神話回廊」へと足を運んでみます。あらかじめ整理券を受け取る必要がありますが、神話回廊のなかにある「神話シアター」では、古事記や日本書紀に残された出雲に関するエピソードを、360度動く映像で体感することができます。

 また神話体験コーナーでは、気になる神話を自分で選んで映像を見ることができ、自分の好きな神話の世界へと旅立つことが可能です。

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 神話シアターは、先月入場者数15万人を達成した人気施設です。30分ごとに入れ替え制で、CGや動くスクリーンを駆使して「スサノヲとヤマタノヲロチ」「オオクニヌシの国作り」「出雲国風土記」の3つの映像作品が上映されています。

 私たちは「スサノヲとヤマタノヲロチ」しかシアターでは見られなかったのですが、神話回廊の神話探検コーナーでは全ての映像作品を見ることができるため、他の作品も小さな画面でではありますが、見ることができました。

 スサノオノミコトや大国主大神について、ちょっとあやふやな部分があった私は、思わず「なるほど~」と思える部分があったのですが、日本書紀よりも古事記が好きで、古事記はちゃんと読んできたという相方は、全部知ってる話だったなぁ...とつぶやいていました...。

 神話シアターについては、整理券があらかじめ配られる形になっていますので、全ての作品を見るのは結構大変かと思いますが、神話探検コーナーも併用して押さえておきたいところです。

 映像作品ですと、スサノオノミコトとその親イザナギとイザナミ、そして妻のイナダヒメノミコト、さらに大国主大神とその正妻であるスサノオノミコトの娘スセリヒメノミコトなどそれぞれの相関関係や、性格が直感的に入ってきますので、島根で神社めぐりをする際に、その神社がどの神さまを祀っているのかによって、「ああ、この神さまにはこういうお願いの仕方をしよう」と、祈る相手を考えた祈願をすることができるようになります。

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 まあ、古事記なんかを読んでいる相方から見れば、私のこのような考え方に対して、そんなことは島根に来る前に理解してこいよ、といったところでしょうけど...。

 出雲に関する神話に登場する、大国主大神や素盞嗚尊といった神々について把握しておきますと、神社めぐりもより一層楽しくなるはずです。神話も古代もどちらももちろん遠い昔のこと。でもそれが、千年単位の時を越えて今も神社に祀られ伝承されている。

 神話を信じるかどうかといった野暮なことを言うのではなく、平安、鎌倉、室町、江戸、そして平成と、ずっと伝え続けられていることのスケールの大きさを体感することで、遠い昔と今が実は融合していることを気づかせてくれる。そんな博物館です。

関連情報

古代出雲歴史博物館

古代出雲歴史博物館(島根・出雲市)MAP

古代出雲歴史博物館


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