▲写真で見るよりも実際は高低差があります。
東尋坊(福井・坂井市)
東尋坊と聞いて、何を連想しますか…。
東尋坊を、ただ観光スポットとして紹介するならば、白山火山脈の一端が、日本海に露出した断崖絶壁であり、約2キロに渡り、さまざまな形の奇岩が続く、勇壮な景観地…。そんなところでしょうか。
写真をご覧いただければわかると思いますが、確かに景色は勇壮。岩の高さはなんと35メートルにもおよび、観光遊覧船に乗り、海上から見上げれば、それはそれはすごい景観。
しかし、そんな観光スポットとしてよりも、東尋坊と聞いて、「自殺」を連想されるかたが多いのではないでしょうか。私もそのようなイメージを抱いていたのですが、それはもう過去のことかと思っていました。しかし、現地の方に聞いた話によりますと、現在でも自殺は絶えないそうです。
素晴らしい景色を見ても、そういったことを思い出してしまい、素直に「綺麗な景色だなぁ」という感情にはなれませんでした。断崖絶壁から下を覗き込むと、ごつごつした剥き出しの岩と、深さはほとんどなく、透き通った海面からは、底の岩がはっきりと見えました。そして、足元は岩場と草で滑りやすく、思わず言葉を失ってしまいました。ここから落ちたら…。
▲確かにここから落ちたら、助かりようがないですね…。
訪れたのは8月でしたので、たくさんの観光客が訪れており、岩場を一歩離れれば、いかにも「観光地」という雰囲気で、海の幸を焼いているお店や、定食などを食べさせてくれそうなお店が並んでいました。
ただ、どの店もメニューは掲げているものの、値札が無いのです。ちょうどお昼時だったので、せっかくだから海の幸料理が食べたい。しかし値段がわからないのは怖い。まぁ、単品の丼ものなら、驚くほどの値段はしないだろう。と軽い気持ちで、定食屋さんに入りました。
おばちゃんから手渡されたメニューを、恐る恐る広げてビックリ。単品が無い。全てセットの定食ばかり。せっかく観光地へ来て、ケチケチしていてもしかたがない、ここは腹をくくって定食を食べることにしました。
と、私が注文すると、相方がおばちゃんに一言
「単品できますか?」
するとおばちゃんは
「いいですよ。」とあっさりOK。
先に聞けばよかった…。
▲これが定食。メニューには無いが、単品もOK。
でもいいんです。さすが海。いくら丼も、カニの味噌汁も最高。ちょっと財布に影響はあったけど、これは食べてよかった。せっかく北陸まで来たんですからね。お腹もいっぱいになり、さっきまでの暗い気持ちは薄らいでいたのですが、もうひとつの目的地を思い出して、また血の気が引きました。
東尋坊の横に「雄島」という島があります。少し前にテレビで放送されたのですが、この「雄島」では恐怖現象を体験した人がとても多く、そのひとつに、島を反時計回りにまわると、死の世界に導かれてしまうという言い伝えがあるというのです。
その雄島へ向かうことにしました。はたしてどんな島なのでしょうか。
▲東尋坊からすぐ…見える島が「雄島」。
いまだに飛び込み自殺の絶えない東尋坊から、北へ1.5kmほど行くと、そこには周囲2kmの「雄島」があります。この島は、約1,200万年前に噴出した安山岩の岩石島です。神の島と崇められ、東尋坊同様、観光スポットとして有名です。本当に左回りに歩くと死んでしまうのでしょうか…。間違っても左回りに回ってはいけない。という決意を胸に「雄島」へとやってきました。
島の入口へは、長さ220mの朱塗りの「雄島橋」を渡ります。渡り終えると、茂みの中に島の中へと進む道があります。この島には、大湊神社、無人灯台、密入国者用の監視小屋があります。ここへ来て、そのテレビ番組で「恐怖体験に遭ったのは興味本位の若者…」と言っていたのを思い出しました。
私たちも興味本位と言えばそのとおりです。否定はできません。そんなうしろめたさもあってか、相方は橋を渡り始めた時点から、びくびくしていました。
▲「雄島橋」朱塗りの橋です。夜はとても怖いでしょうね…。
橋を渡り終え、島の入口の階段を登りだすと、向こうから若者たちが歩いてきました。何か話していたので耳を傾けると「やっぱ左回りする勇気はねえな。」「だよなー。」と言っているではありませんか。どうやら同じ思考で、この島へとやってきたようです。
階段を登り終えると、そこは二手に分かれ道となっていました。
「霊にとりつかれないように、神社にお参りしようか。」
と私が言うと相方が、
「え!?ここから左に進んで、逆戻りしたら、左回りすることになるんじゃないの?もう、帰ろうよ。」
と、かなりおびえて言いました。確かにそのとおりです。左回りしていけないとなれば、神社にお参りしたあと、そのまま島の遊歩道1kmを一周しなければなりません。「でも、お参りしないと…逆に…。」と思ったのですが、相方のおびえ方が尋常でなかったので、そのまま引き返し、島の入口にある賽銭箱にお賽銭を入れ、手を合わせて引き返すことにしました。
▲橋を渡り終えると「記念碑」何の記念かは確認できませんでした。
▲島の入口からまっすぐ直進の階段です。木が覆い茂り暗いです。
なぜ、この島に霊が来るのか?それは、東尋坊で身投げをすると、潮の流れに乗りこの島へと流れつくのです。そしてここに成仏しきれない霊がたくさんいる、とされています。普段霊感とは無縁な私でも、そういう話を聞いてここへやってくると、夏でも少し寒く感じました。
▲さっきの階段を登り終え、左を向くと神社の入口。進めば逆戻り不可!?
▲島を後にしました。何事も起きませんように…。
その夜、私たちは金沢に宿泊しました。テレビを見ていると、タイミングがいいのか悪いのか、東尋坊の心霊特集をやっているではありませんか。その番組によると、東尋坊には、自殺を食い止めるために、電話ボックスが設置されているそうです。
そこには「命を大切に!」と書いてあり、お金を持たない人のために、10円玉が無数に置いてあるのです。そしてこの電話ボックスは、勝手に鳴ったり、夜撮影したカメラに霊が映ったり、血まみれの女性が電話しているのを目撃されたり…そんな話もあるそうです。
そして、今でも自殺者は後を絶たず、観光船の運転手さんの話では、スイカが割れるような音がして、そこへいくと首の無い死体が浮いていた…。という話など、今日そこへ行った私たちにとっては、もうビクビクの連続する番組でした。
その後、何とか落ち着き寝ることにしました。眠りに落ちたその瞬間。なぜか、いきなり部屋のテレビが勝手についたのです。いきなり大音量で歌番組が流れ、私はビクッ!と飛び起きました。心霊スポットに興味本位で行ってしまったという罪悪感と、心霊番組を見た直後という恐怖感から、怖くて怖くてたまりませんでした。
実は、寝返りでリモコンの電源ボタンを押してしまっただけなのでした。と話を締めくくりたいところなのですが…、リモコンはテレビの上に置いてあり、テレビが勝手についた理由はわからないのです…。
そのあと、怖くてなかなか眠れなかった…とデリケートな一面を見せたいのですが、旅行疲れもあって、コンセント引っこ抜いてすぐ寝ました。
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