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西三河を代表する東岡崎駅にあった岡ビル百貨店・63年の歴史に幕をおろす

記事公開日:2021年5月30日 更新日:

★岡崎の中心部に63年間ずっと存在し続けた駅ビルの百貨店
★3階は廃墟感あるものの全体的には生きているギリギリな「昭和」
★3世代の記憶がつながってよみがえった場所よ永遠に…

西三河を代表する都市と言えば?この問いに対して今は「豊田市」と「岡崎市」と回答が二分されるところでしょうが、戦後すぐの頃の豊田市は挙母町(ころもちょう)であり、市ですらありませんでした。その当時の答えは「岡崎市」一択でした。

そんな当時から、岡崎市の中心市街にある、市を代表する駅と言えば「東岡崎駅」です。つまりは西三河の中心駅。そこに1958年(昭和33年)にオープンしたのが「岡ビル百貨店」でした。現在の豊田市が、挙母町からようやく挙母市になった7年後のこと。まだ市の名前は挙母市の頃です。

それから63年。岡ビル百貨店は2021年(令和3年)5月31日に閉店することが発表されました。少し前に訪問した際の写真とともに振り返ります。

昭和の姿そのままに

名鉄東岡崎駅は「東」という名前が付いているために、その名前だけを耳にすると、中心駅ではないような印象を受けてしまいますが、市役所や岡崎信用金庫といった行政・経済の中心にほど近く、岡崎市の中心駅として古くから栄えてきました。

さらに、岡崎城のある岡崎公園も近く、春の桜のシーズンはもちろんのこと、季節を問わず城を訪れる観光客も利用する駅であり、戦後わずか13年という早い時期に、駅ビルが建設され百貨店がオープンしていることからも、昔からにぎわいのある場所だったことが伺えます。

2階に広がる特選品街

訪れたのは、岡ビル百貨店の閉館がまだ発表されていなかった、2020年(令和2年)の秋でした。60年以上前から同じ姿でそこにそびえる姿からはレトロさを感じたものの、百貨店という名がついていることを意外に思わせない、手入れの行き届いている様子でした。

1階にある「岡ビル百貨店」の入口から上る階段には「禁煙・禁腰掛・禁飲食」の文字。もちろん看板は手書きです。

2階・3階には「特選品街・飲食街」がありますよという表示も、なかから黄色い電気がともるようになっており、その色合いに昭和を感じます。

2階には「宝石・メガネ店」、「美容室」、「メンズカジュアル」「和食屋さん」「ランドセル専門店」「マッサージ店」「喫茶店」などがラインナップ。天井の低さに昭和を感じつつも、しっかりとお店が入居していて、古き良き昭和の百貨店…というよりは、庶民的な駅ビルでありながらも品のある様子といったところでしょうか。

ぎりぎりなキャラクターたちがいざなう3階

そして3階にも「お買物・ご飲食」フロアがあるようなのですが、いざなってくれるキャラクターのイラストが。まずはグレーと白の体毛のバニーなキャラクターに…。

青とピンクの帽子をかぶった、ダックなカップルのキャラクターが。ぎりぎり感ありますね。このあたりも昭和な感じがしますが、ちゃんとイラストは、ステンドグラスとともにきれいな色で保たれているところがさすが「百貨店」であります。

3階への階段にはわざわざ「3階入口」という看板があって、これまた昭和のテレビのクイズ番組かのように電球がキラキラと動いて光っています。もちろんLEDではありません。

その階段を上がっていくと…、3階はレストランが1軒営業しているのみで、他はガラーンとしていました。何もない空間が広がります。壁が取り払われ、もはや扉としての存在の意味がない、トイレの入口にさえステンドグラス模様が。

昭和の頃ってこういうセンスだったよなあと、この場所に限らないあの頃のリアルな懐かしさ、郷愁を刺激してくれます。

閉店の半年ほど前のこの時はまだ「テナントスペースあります」「いきなり百貨店で検索」という張り紙がしてあり、閉店する様子はありませんでした。

どういう立ち位置の百貨店だったのか

この岡ビル百貨店は、実際には百貨店というよりは駅ビルの商店街と言った方がしっくりくる存在だったかもしれません。「協同組合岡ビル百貨店」が運営する建物に、テナントが入っていたというものです。

70代の父はこの東岡崎からほど近い場所で育っています。話を聞くと、中学・高校時代はこのあたりに入り浸っていたとのこと。70代の人が中高生時代に遊んだ場所が、今もそのまま残っているというのは貴重であったと思います。

ただ「でも岡ビルよりも、あのへんにあったもう一つの百貨店のほうが近代的なイメージがあったなあ、エスカレーターもあったし」とのことで、親父世代からしても、岡ビル百貨店はちょっと古いという印象があったというのは意外でした。

そしてこの岡ビル百貨店は、客層が高齢化するにつれ、エスカレーターがないことがネックになっていたといいますから、その呪縛はずっと続いていたのかもしれません。

1階のコンビニもかつての姿で

岡ビル百貨店の入っている名鉄東岡崎駅の建物、1階には名鉄バスターミナルがあり、ここからあちこちへと路線が伸びています。するとそこには「ボートレース蒲郡ファンバス」の案内が。

そういえば。祖父はボートレースが大好きで、よく蒲郡に行っていたという話を聞いていましたし、幼少期に一度、連れていってもらったような。そうか、あのときここからバスで行ったんだ…。3世代の記憶が繋がる場所でもあったんですねここ。今になって思い出しました。

さらに1階には名鉄産業が運営するコンビニ「サンコス」があります。「Suncos」です。

かつて名鉄産業のコンビニはすべて、オリジナルブランド「サンコス」で、テレビCMまでしていたのですが、現在ほぼすべてが「ファミリーマート エスタシオ」とブランド名を変えています。

昭和のままの姿で営業しています…という岡ビル百貨店には、サンコスのままで営業していますというこのコンビニが似合います。東岡崎駅は観光客も多く訪れるということで、おみやげ売場の面積割合が大きいのも特徴ですね。

昭和の記憶をよみがえらせてくれてありがとう

中日新聞の報道によりますと、岡ビル百貨店の閉店後のこの場所がどうなるのかはまだ白紙で、今後、市と名鉄が協議していくとのことです。きっと、もうなくなる気配があったからこそ、サンコスもそのままだったのでしょうし、昭和の雰囲気が残されたままだったのかもしれません。

岡ビル百貨店は、2021年(令和3年)5月31日に閉店し、63年の歴史に幕をおろします。確かに、テナントの抜けてしまった3階に廃墟感はありました。しかし、全体的にはちゃんと最後まで「百貨店」としての手入れの行き届いた様子を見ることができました。

色あせていない昭和の姿を維持していました。

「行きも帰りも……楽しい買物と憩のデパート・岡ビル百貨店」

昭和に帰らせてくれてありがとう。父が青春時代を過ごした空気を感じさせてくれてありがとう。今は無きおじいちゃんとの記憶をよみがえらせてくれてありがとう。その姿と記憶、ずっと忘れないように心に記しておきます。

関連情報

岡ビル百貨店(愛知・岡崎市)MAP

岡ビル百貨店

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