NAGOYA REPORT 万博便乗!新名所特集

大曽根VS金山・名古屋副都心のネーミングセンス

記事公開日:2005年4月16日 更新日:

写真
▲ナゴヤドームのお客を取り込め!?メッツ大曽根。

 愛・地球博の開催に踊らされている名古屋には、次々に新しいスポットが誕生しています。そんなスポットを紹介しているこの名古屋新名所シリーズ。これまで、名古屋の中心部・栄と、万博のメイン会場になるはずだった瀬戸市をご紹介してきました。4回目の今回は再び名古屋市内に戻り、名古屋の副都心をご紹介します。「名古屋の副都心ってどこだっけ?」そこから話を進めていきましょう。

名古屋の副都心を探せ!

 名古屋一の繁華街は栄、名古屋の玄関は名駅(名古屋駅)です。栄と名駅の間は2キロ強離れているものの、間にあるビジネス街・伏見が接着剤となり、栄・伏見・名駅一帯を名古屋の都心部として扱うことが一般的です。名古屋市内外を問わず「明日、名古屋に買い物にいくんだわ?。」と言えば、たいていこの都心部に行くことを指します。

 名古屋では、電車よりも自動車での移動が多いことは以前から取り上げているとおりです。ですので駅前が発達しにくく、郊外に大きな駐車場を構えた大型ショッピングセンターやシネコンに人が集まることが多く、今までは名古屋市内なら港区品川・熱田、市外であれば三好や扶桑、さらに郊外の木曽川や柳津などに次々と、巨大駐車場を構えた大きな複合商業施設が作られてきました。

 もちろんそれらへ名古屋っ子は皆、自動車で行きます。

副都心を目指す「大曽根」と「金山」

 したがって駅前の発達しにくい名古屋では「副都心」というものが存在していませんでした。しかしそれを狙っている駅は以前からありました。それは北区の「大曽根」と中区の「金山」です。両駅とも名鉄、JR、地下鉄が乗り入れています。

 名鉄瀬戸線、JR中央線、地下鉄名城線、ゆとりーとラインの乗り入れている大曽根は、駅近くにあった三菱電機の工場が規模を縮小し膨大な土地が生まれました。そこにナゴヤドームが1997(H9)年に完成。さらに2002 (H14)年にはスーパー、家電量販店、レストランなどの複合ショッピングセンター「メッツ大曽根」がオープンしました。

 駅前商店街も大曽根をもじって「オズモール」と名前を変え、オズの魔法使いをイメージした街並みに生まれ変わりました。商店街の建物を全て三角屋根にするなど力が入っていて、魔法の街並みというセンスも良いです。そんな大曽根は名古屋の都心から離れていますが、ドラゴンズ戦開催日には活気を見せます。

 しかし、今ひとつ副都心とはなり得ていません。大曽根に乗り入れている鉄道路線を見ても、名鉄瀬戸線は名鉄といっても名古屋駅に乗り入れておらず、他の名鉄路線と繋がっていない単独路線ですし、ゆとりーとラインも守山区に行くためだけの高架式バスです。地下鉄も本数は少なく、駅周辺には特にランドマークとなるような大きなビルもありません。

 全国的に大曽根で知られているものと言えばナゴヤドームと、2003(H15)年にビル爆破立てこもり事件があったビルくらいではないでしょうか。

写真
▲オズモールこと大曽根商店街。コンセプトをしっかりと持った商店街。

行政は金山の味方?

 対して金山は、行政主導で副都心化が進められて来ました。金山は以前、JR・地下鉄と名鉄の駅が離れていました。1989(H元)年に開催された世界デザイン博は、地下鉄名城線(現在は一部が名港線に名称変更)沿いに3つの会場が作られました。

 会場へ向かう人の中に、名鉄から地下鉄名城線に金山で乗り換える人が多く見込まれ、利便性向上のためにこの年、JRと地下鉄の「金山駅」と、名鉄「金山橋駅」を一体化し総合駅化しました。そしてズバリそのまま「金山総合駅」という名前を付けました。「金山総合駅」というネーミングには当時名古屋っ子も首を傾げましたが、今ではすっかり馴染んでいます。

 金山にはJR の中央線と東海道線、地下鉄は名城線と名港線が乗り入れ、さらに名鉄は名古屋本線が乗り入れ、中部国際空港(セントレア)行きにも乗ることができ、名古屋の鉄道ネットワークにおける駅の存在感という土俵では、大曽根よりも金山に軍配が上がります。

 さらに金山には、大曽根には無い高層ビルが1999(H11)年に建てられました。ビルは高さ134.5メートル・31階建てで、全日空ホテルズ、ホテルグランコート名古屋が入り、目玉施設として名古屋ボストン美術館がオープンしました。「あれ、名古屋の姉妹都市はロサンゼルスなのにボストン?」と思ったあなたは相当名古屋通です。

 なぜ名古屋にボストンなのか。この名古屋ボストン美術館は、アメリカのボストン美術館の一部なのです。「また名古屋っ子がわけのわからないことを言ってるなあ」と思われるかもしれません。詳しくご説明しましょう。

 名古屋ボストン美術館は、アメリカ・ボストン美術館との提携によって生まれたもので、名古屋としては一切所蔵品を持たず、ボストン美術館から代わる代わるレンタルされる美術品を、一定期間展示するというものです。別館という扱いではなく、ボストン美術館の一展示場所という扱いになっています。

 ボストン美術館にある約50万点もの収蔵品が期間を区切って、交代でやってくるわけです。もちろんタダではありません。名古屋ボストン美術館はボストン美術館に対し、1999(H11)年から2019(H31)年まで寄付をし続けることになっています。しかし今、名古屋ボストン美術館は存亡の危機に直面し、地元の芸術家による作品を展示するなど新たな方向を探っています。

 ボストン美術館の収蔵品を展示するとはいえ、美術館の名は何のひねりも無い「名古屋ボストン美術館」。さらに、新たな副都心のランドマークと大きな目標を掲げたそのビルの名は「金山南ビル」。「金山総合駅」も含めて、金山地区のネーミングセンスは常に直球勝負です。

 今までは、よっぽどの愛好者しか観光でやってくることの無かった名古屋。しかし2005 (H17)年は、愛・地球博への多くの観光客が名古屋市内を通ることが見込まれ、駅周辺の再開発が急務となりました。特に金山はセントレアからの名鉄特急、JR中央線、東海道線の乗り換えなど、名古屋の大動脈が通るため利用者の増加が見込まれました。

 金山には地下街が無く、地上に活気があるという名古屋では珍しい駅前風景が以前からあったのですが、そんな金山駅の北側の地上に、さらに新たな施設が愛・地球博開幕を前にオープンしました。

写真
▲金山南ビルと金山総合駅。ビルに愛称は特にありません。

これが金山のセンス

アスナル金山

 金山総合駅の北側には市の所有地があり、そこには金山北パーク駐車場やバスターミナルが広がっていました。名古屋市は金山の副都心化の一環として、ここに大型商業施設を建設することとしました。そして生まれたのが「アスナル金山」です。

 アスナルは比較的若い家族をターゲットとしており、コンセプトは「日常生活を豊かにするクリエーション」。ですので、ブランドショップなどは入っていません。

 1階には世界各地の豊富な品揃えが首都圏で人気のスーパー・成城石井や、スギ薬局やスギヤマで慣れてしまった名古屋っ子にとっては、東京の香りのするドラッグストア・マツモトキヨシのほか、ベーカリーカフェ、DVD・ゲームショップ、パスタ、たこやき、フレッシュジュース、書店、さらに犬の美容室とホテルなどがあります。

写真
▲アスナル金山。開放的なのは良いですが、雨の日は大変そう。

 2階にはイタリアン、中華、焼肉といったレストラン、カフェのほか、珈琲挽き売り専門店や、名古屋では有名な中古レコード・CD店バナナレコード、そして管楽器のお店なんてのもあります。また若い女性が喜びそうな雑貨屋さんがとにかく豊富。エスニック雑貨に輸入雑貨、アクセサリーに手芸用品にインテリア雑貨のお店がずらり並びます。

 そして心と体をリラックスできる3階には、エステ、リサクゼーションサロンに、フィットネスクラブ、ネイルサロンにアロマテラピー、そして最近話題の皮膚を伸ばして健康になる整膚サロンに健康グッズショップまであります。他に和雑貨、きもののお店やメガネ店にアジアン雑貨のほか、もちろん3階にもレストランがあります。

 また、イベントホールがありアート展などが開かれるほか、広場ではライブや大道芸などが常に開かれ、賑わいを見せています。

 名古屋は都心がとにかく地下へ地下へ、ビルへビルへという繁華街の形になっているので、開放的な空間でイベントを見ながら買い物をするという、東京や大阪の駅前ショッピングモールでは当たり前のスタイルが、このアスナルによって名古屋で初めて実現したと言っても過言では無いでしょう。金山が副都心となるべく、明日へ一歩踏み出した印象を持ちました。

写真
▲ゴミ箱も、このセンス。

 ところでこの「アスナル」という名の由来ですが、横文字ではなく「明日に向かって元気になる」を略してアスナルです。自分「らしく」の「ラシック」とタメはれますね。まあそれはいいでしょう。横文字で「ASUNAL KANAYAMA」とあるロゴも結構いい感じです。しかしどうしても気になることがあります。

 それを見るとため息が出てしまいます。それは、案内看板やゴミ箱などに、あろうことかその横文字のロゴよりも大きく書かれた「明日なる!」というロゴです。由来が日本語なのは構いません。でも成城石井までもが入っているオシャレな駅前施設に...ねぇ...。金山が副都心になる日は本当に来るのかな。

イラスト
▲「都心」とは、大都会の中心部の意。まず、名古屋は大都会なのか?

 まあ金山総合駅、名古屋ボストン美術館、金山南ビルとの整合性で「明日なる!」になったというのなら逆にあっぱれです。そのセンスが金山らしさなのかもね。


スポンサーリンク


-NAGOYA REPORT, 万博便乗!新名所特集
-

Copyright© TOPPY.NET トッピーネット , 2024 AllRights Reserved.