▲瀬戸内しまなみ海道。雨で幻想的。街並みも確かにいい雰囲気。
中華料理一龍・おのみち映画資料館(広島・尾道市)
広島市から名古屋まで帰る途中には、岡山も神戸も大阪も京都もありますから、どこに行こうか迷うところだったのですが、せっかくなら最後まで広島を楽しもうと言うことで、文学、映画そしてラーメンの街として有名な尾道へ向かうことにしました。
尾道は800年前に開港された歴史ある街で、江戸時代には北前船の寄港地としても栄えました。山側には多くの寺院がそれを物語ります。大名や富豪によって庇護を受け、最盛期に比べれば少なくなってしまったものの、現在でも市街地に21もの寺があります。
また、そういった雰囲気からこの街を舞台にした映画が多く作られています。特に尾道出身の大林宣彦監督は「転校生」「さびしんぼう」「時をかける少女」といった作品を尾道で撮影しています。さらに古くは、志賀直哉、中村憲吉、林芙美子など多くの文学者がこの地に住み、尾道をモチーフとした作品を残しています。
これは歴史が溢れかつ、幻想的な街の風景があるに違いないと、期待して向かうことにしました。福山西インターで高速道路を降ります。
ちょっと小腹が空いてきました。尾道のもうひとつ目玉と言ったら「尾道ラーメン」です。数多くある店のなかから、「開店前に従業員全員でスープの味をチェックする」ということで有名な、東尾道駅近くの「中華料理・一龍」さんへと向かうことにしました。駐車場も33台とゆったり駐められるスペースもあり安心です。少し時間が早かったせいか、すぐに座ることができました。そして450円のラーメンを注文します。
▲中華料理一龍。自然素材。豚の背油が尾道ラーメンの特徴。
ラーメンが運ばれてきます。あれ、頼んだのはチャーシューメンじゃないぞ?と思うようなラーメンが運ばれてきました。大きな自家製チャーシューが2枚も入っています。このラーメン、化学調味料を一切使わず、トンコツ、鶏ガラ、削り節、ニンニク、ショウガ、天然もろみ醤油など天然の素材を贅沢に煮込んだスープなのです。
ひとくち口に入れますと、味が濃くて深い。豚のもも肉を使ったチャーシューも噛む必要が無いくらいの柔らかさでした。そんなこだわりなラーメンなのに、ジュースはドリンクバーというのも嬉しい所です。
▲注文した普通のラーメンでこのチャーシュー。濃くて深い味です。
お腹も満足したところで、やはり映画の尾道。「おのみち映画資料館」へと向かいます。場所は尾道市役所の向かいで、市役所の有料立体駐車場があるのですが満車。でも、一台すぐに出て行ったので、それほど待たずに駐車することができました。この日は天気があまり良くなかったので、観光客も少なかったような感じでした。
この駐車場からは、尾道から愛媛県今治を結ぶ「しまなみ海道」の大きな橋や、日立造船の工場など、海の街を感じさせる景色が広がっていました。少し小雨がふって霞がかっていまして幻想的でした。そりゃ映画撮りたくなりますよね。
さて、おのみち映画資料館はそこから歩いて数分。明治時代の白壁の蔵が見えてきたらその蔵が資料館です。尾道を舞台にした映画に関する資料だけではなく、実際に尾道ゆかりの映画を鑑賞できるミニシアター、小津安二郎監督などを紹介するコーナー、また古い映写機や撮影機材、さらにはポスターやパンフレットなどなど、邦画洋画問わず様々な資料が展示されています。
▲「おのみち映画資料館」です。昔の日本に出会えた気がします。
▲ポスターがずらっと。他にも撮影機材や映写機などの展示も興味深い。
この映画のポスターというのは面白いですね、その当時の時代背景と言いますか、雰囲気や香りが伝わってきますね。いくつか見てみましょう。1955 (S30)年の日活映画「月がとっても青いから」このキャッチコピーが「美しきが故に波乱の青春航路を辿る純情の乙女!月青き高原の牧場に、鈴懸の並木路に、今宵も流れる想出の歌声!!」もう文学ですね。
美しくて純情な乙女が美しいために波乱の青春航路を辿ってしまう、これだけでもうドキドキです。しかも「乙女!」と体言止め。いいですねぇ~。
続いて同じ年の東宝作品「芸者小夏 ひとり寝る夜の小夏」は「これが弱いおんなの宿命か、薄幸の芸妓小夏が辿る限りなき女の流転詩」ポスターの絵も確かに魅力なのですが、私はこういうコピーに弱いですね。映画を見ずともいろいろなストーリーが想像できますよね。
弱い薄幸な芸妓の流転詩なんてたまりませんね。勝手にあれこれ考えてしまいます。
しかしです。私の心を掴んだのは、こういった正統派なものではなく。当時は真剣だったのでしょうけど、今見ますとなんだコリャという代物たちです。こちらも同じ年の東宝作品「若夫婦なやまし日記」です。「笑いの横丁に恋の不連続線。なやまし嬉し、新婚天気図!!」もう何のことやらわかりません。恋が不連続線とはどういうことなんでしょう。
しかも柳家金語楼さんの表情のすごいこと。新婚生活を天気図に例えるとは…。この日の小雨のように、しっとりする日もあるのということでしょう。何のことやら。
▲「若夫婦悩まし日記」「青い果実」真剣に眺めてしまいました。
続いては「青い果実」これも同じ年の東宝作品なのですが、「”恋はお断り”オール女性の紅い気に男性軍の攻撃開始!!」こんなのアリでしょうか、「オール女性の紅い気」青い果実たちの紅い炎、つまり物凄いガードということですよね、それに対して男性軍ですよ、軍。集団同士のぶつかりあいです。そして攻撃を開始してしまうわけですから、もうそこにどんな結末が待ち構えているのか、思わずのぼせそうになってしまいます。
そして一番すごかったのはこれです。こちらはまた日活作品の「愛のお荷物」。女性が「新しく芽生えた可愛い生命」と言い、それに対し男性は「モチロン愛の結晶だと思います。」何なんでしょうこれ。男性は「思います」とよそよそしい態度でしかも、「やってもぉたぁ~」という表情。
しかも映画のタイトルが「お荷物」ですからねぇ。うわーすごい時代だ。と感じられずにはいられません。ちなみにこの映画、どんな話だったかと言いますと、人口軽減に取り組み大演説をする厚生大臣。しかしその息子の恋人と、48歳の妻に、同時に子どもができてしまうというお話なんですね。人口軽減…。今ではありえない題材ですね。
▲衝撃の「愛のお荷物」。
そんなわけで、昭和30年に想いを馳せてしまいました。もうひとつ尾道と言えば、猫の住む街。この映画資料館も、映画を撮影する猫たちがキャラクターとなっています。猫を撫でながら、歴史を感じる街で、異世界にトリップするという尾道。いかがでしょうか。私のトリップは、方向性が間違ってしまっていた気がしないでもありませんが…。
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