デニーズ・サイゼリヤ・グルメドール・不二家・カーサ・ココス
全国的に画一化されていると思われがちなファミリーレストランチェーン。しかしそこには意外と地域性があるものです。前回からお届けしている名古屋を取り巻くファミレス業界の変遷。前回はファミレス御三家のうち最も早く1号店を出店したすかいらーくの名古屋における動向を見ました。
結論としては、高級から廉価まで数多くの業態を持つすかいらーくも、名古屋では中間に絞った出店を行っているという実態でした。今回も続いて東京から名古屋にやってきたファミレスを見ていきましょう。
セブンは遅かったけどデニーズは早かった
デニーズジャパン
イトーヨーカドーグループ、ではもうないですね。セブンアンドアイホールディングスの一員であるデニーズは、前回も書きましたが福島県から兵庫県にかけてのわずか16府県しかも太平洋側にしか出店していません。
しかしそれにもかかわらずなぜファミレス御三家と呼ばれているかといえば、578店舗という店舗数の多さと、本家アメリカでの知名度です。本家の創業はなんと1953(S28)年で、アメリカでは1600店舗を展開しています。日本では1974 (S49)年に1号店を出店しています。
そのためデニーズにはどこか外国らしさ、アメリカらしさを感じ、他のファミレスチェーンとは一線を画しています。すかいらーくグループが廉価版のガストを出店し始めた頃、一時的に低価格路線に流されたことがあったものの、その後は元の路線に戻り、ドリンクバーや店員呼び出しボタンを一部の店舗を除いて設置せずに昔ながらの「いかにもファミレス」という形態を保持しています。
そういったところにファミレスといえばデニーズという固定されたイメージが残されているのでしょう。
名古屋地区への進出も早く、1979(S54)年に名古屋営業所を開設し店舗展開を始めました。24時間営業のレストランは夜の早い名古屋っ子にとって衝撃でした。最近では都心部への店舗展開も行われていますが、かつてはどちらかというと郊外の街道沿いに駐車場を構えた店ばかりで、車社会の名古屋にはピッタリと合うスタイルだったことも、名古屋で受け入れられた理由のひとつかもしれません。
一時期、低価格路線に流された頃は、名古屋に合わせたメニューを出すなど、名古屋っ子の機嫌を伺っていましたが、現在は東京と変わらぬメニュー構成となっています。撤退した店も少なく、現在も名古屋地区に出店をし続けています。現状は愛知県内に60店舗、岐阜県は南部のみで10店舗、三重県も北中部のみの9店舗です。
ファミレスといえばデニーズ、デニーズといえばファミレス。そんなファミレスの代名詞ともいえるデニーズ、どこか東京の香りがするレストランが近所にある。無意識のうちに東京への憧れを持つ名古屋っ子にとっては、それ自体嬉しかったのです。
これだけ名古屋で安定したイメージ、店舗数を保ち続けているのは、名古屋っ子が心の片隅に持ちつづけている東京への憧れを、デニーズは満たしてくれるからではないでしょうか。ですから、デニーズに名古屋メニューなんてものは必要無かったのです。
しかし不思議なのは、名古屋はセブンアンドアイとは昔からあまり縁の無い地域でした。イトーヨーカドーも愛知と岐阜で合わせてわずか10店舗、三重県には未だにありませんし、さらにセブンイレブンが東海3県に進出したのはわずか数年前です。なのにデニーズは昔からありました。
ファミレスが車社会名古屋にピッタリの業態でかつ、名古屋には夜遅くまでやっている飲食店が無かったから、デニーズだけは名古屋をターゲットにしたのかもしれません。
▲看板デザインを何度変えれば気が済むのか…デニーズ。
猛烈な勢いで出店したイタリアンファミレス
サイゼリヤ
イタリア料理にこだわったファミレス「サイゼリヤ」。こだわりがあるのに、ガストにも負けない低価格路線で、安くても良い接客、良い食材を心がけるチェーンです。サイゼリヤの創業は1973(S48)年と古く、千葉県市川市の1号店を中心に首都圏に店舗を展開していきました。名古屋には平成に入るとポツポツと登場し始め、現在では愛知県57店舗、岐阜県11店舗、三重県16店舗となり、デニーズを上回っています。
破格のドリンクバーと徹底的な低価格のメニューでありながら、それなりの品質を提供するいわゆる「お値打ち」感のあるファミレスとして名古屋に定着。有機野菜や開発輸入などをアピールしていて、他の安いファミレスとは違うという点に多くの人は惹かれているのでしょう。まあ、それは名古屋に限ったことではなく、全国でも人気を集めており現在では717店舗を北海道から広島県の29都道府県に配しています。
このサイゼリヤの猛烈な勢いの店舗展開によって、名古屋地場のファミレスの淘汰は決定的なものになりました。ガストとサイゼリヤによって多くの名古屋のファミレスは潰されたといっても過言ではないでしょう。
▲別のファミレスの跡地にも入るサイゼリヤ。
あのファミレスたちは今…
グルメドール
イオングループのファミレス「グルメドール」は、イオンのショッピングモールを中心に、愛知県9店舗、岐阜県5店舗、三重県には12店舗を展開しています。特に名古屋ではイオンだけでなく、ヨシヅヤやなぜかイトーヨーカドーにも店舗がありましたが、最近ではイトーヨーカドー内にあったグルメドールは少なくなってきました。
なぜデニーズを持つイトーヨーカドーにグルメドールが?という疑問を私は昔から持っていましたが、デニーズは基本的に24時間営業なのでテナントとして入るには不向きだったのでしょう。しかしグループのねじれ現象をやはり嫌がったのか、年々減っています。
不二家レストラン
誕生日ということを申告するとケーキが無料サービス、さらに店員さんが揃ってハッピバースデーと歌ってくれる不二家レストラン。かつてはよく街道沿いに店舗を見かけたのですが、現在は愛知県下に5店舗、岐阜県に1店舗で縮小傾向にあります。
名古屋では、ファミレスの全く無い地域を狙っての出店という感じで、その周辺にファミレスができると撤退を余儀なくされているという動きになっているように見えます。かつてはサラダバー、スープバー、さらにはステーキバーと新たなことに果敢にチャレンジしていました。ステーキが食べ放題と言われてもねぇ…。
カーサ
セゾングループの西洋フードシステムズが運営していたファミレス「CASA(カーサ)」。西洋フードシステムズは、かつて1980(S55)年に会社更生法の適用申請を行った「吉野家」がセゾングループによって再建された際、吉野家の筆頭株主となった会社でもあります。カーサは名古屋にはわずか数店舗しかありませんでした。
しかし今度はこの西洋フードシステムズが経営難に陥り、120店舗をココスジャパンに売却します。この際に名古屋の店舗も売却され、かつてのカーサは現在ココスとして名東区よもぎ台店と鳴海店が営業を続けています。
愛知と岐阜のココスは別物
ココス
名古屋市内のココスはカーサから営業譲渡されたココスなのですが、ココスは岐阜県に昔から進出していました。茨城県に本社のあるココスがなぜ岐阜県にあるのかと私はずっと疑問だったのですが、岐阜県のココスは本体のココスとは別会社ということがわかり納得しました。
ココスは、茨城県のカスミという食品スーパーのフード部門として生まれた会社です。茨城県を中心に首都圏で店舗展開をしていました。それとは別に、ファイブスターという会社がエリア限定で「ココス」というブランドをカスミから譲り受けて店舗を展開していました。それが岐阜県南部に10店舗あるココスです。
ファイブスターがココスを展開しているのは滋賀県を中心にした近畿と北陸の7府県です。滋賀県が中心。そうなんです。このファイブスターは滋賀県に本社を置くスーパー、平和堂のグループ企業なのです。
平和堂が紳士協定によって岐阜県に進出できず、長年指を加えていたという話を「おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信」で以前しましたが、ファミレスでは岐阜県進出を果たしていたのです。なので岐阜県にはココスが昔からあったのです。しかしココスには大きな動きがあり、このエリア展開が食い入るような形になってしまいます。
ココスを運営していたカスミは、本業に特化するためにココスを2000(H12)年にゼンショーに手渡します。ゼンショーは牛丼の「すき家」を経営している会社です。そしてそのゼンショーグループとなったココスに、かつては吉野家の親玉だったカーサが経営不振となり譲渡されたのですから、これは因縁と言えるでしょう。セゾングループの凋落ぶりがわかります。
岐阜県にあるココスは今でも平和堂グループで、名古屋市内にあるココスはカーサからすき家に経営が変わったココスです。全く別物です。メニューは一緒なのに。
ココスはエリアを区切ってココスの運営権をファイブスターに与えていたため、岐阜県にはカーサが元々無かったので良かったのですが、ファイブスターのエリアにあったカーサはココスとなることができず、滋賀県、福井県のカーサは今でもカーサのまま、西洋フードシステムズの運営となっています。名古屋で「ああ、カーサの味がもう一度食べたいなぁ」と思ったあなたは、福井市のだるまや西武か、大津市の大津西武で懐かしの味をご堪能ください。
次回は関西以西から名古屋に進出してきたファミレスを考察します。
コメント
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>佐藤哲也さま コメントありがとうございます
本当は機会を設けて、
いろいろ書きたいとは思っているのですが、
うーむむ、、、でも、頑張ります。