愛・地球博開幕前リポート第2回
いよいよ開催まであと2ヶ月となった愛・地球博。1990(H2)年に大阪で開催された花の万博から15年、日本で開催される5回目の万博です。
その前に「万博」とは何でしょうか。万博とは国際博覧会のことで、国際博覧会事務局 (BIE)に登録、認定されたものを指します。開催には条件がありまして簡単に言いますと、複数の国が参加していること。公衆の教育を目的とする催しであること。人類が今後利用できる達成された進歩、または将来の達成への展望を示すもの。以上3つの条件をクリアしたイベントでなければなりません。
その万博にも、テーマを絞ったものと、テーマの無い規模の大きな一般博と二種類あります。日本で最初に開催された大阪万博は一般博で、その後は「海」「科学」「花」をテーマにした万博は開かれたものの、一般博は日本で開催されていません。当初は「光の万博」で話に乗った愛知県が一般博を切望し今回、大阪万博以来35 年ぶりの一般博「愛・地球博」の開催となります。
と言いましても、開催前に一般博とテーマ博という括りが無くなってしまったのですが…。
とりあえず、何があるかを見てみましょう
愛・地球博のテーマは「自然の叡智」。20世紀は科学技術の発展、情報・通信技術の… といった能書きはさておき、愛・地球博で何が見られるのか、どんなものが展示されるのか、そのあたりをズバリ見ていきたいと思います。「そんな万博なんて興味無いよ~。」というあなたも、何があるか知ってから行く行かないを考えてもいいのではないでしょうか。ひょっとしたらあなたの興味をそそるものがあるかもしれませんよ。
私が注目する目玉はこちら。
ロシアの永久凍土から発掘されたマンモス。
時速500キロの超電導リニア再現体験、581キロ記録車両も。
ロボットが演奏する、実際に会場を掃除する、案内する、警備する。
会場へは磁気浮上式リニアで、会場内は無人運転カー、水素燃料バス。
日本の天然ガス100年分を賄えることができる「燃える氷」とは。
藤井フミヤ氏プロデュースによる世界最大の万華鏡。
木に登ったり、草に寝転がったり、本物の里山を体感。
アメリカ、アジア、ヨーロッパ、そしてアフリカ。約120の国が出展。
万博史上初、期間中毎日舞台公演。役者と映像・音響が一体に。
となりのトトロ、サツキとメイの家を森の中に再現。
どうですか。ずらりと箇条書きにしてみました。万博、万博と言われてもなかなかイメージができませんが、具体的な展示物を聞くと、意外と興味が沸いてきませんか。こういったパビリオンなどについての具体的な展示内容は、名古屋では夕方のローカルニュースや新聞などで頻繁に取り上げられていますが、愛・地球博の開催自体の知名度も低い東京などでは、テレビや新聞などで取り上げられる機会も少ないのではないでしょうか。
万博が開催されるということは伝えられても、時間や紙面を割いて具体的な内容の紹介というところまではまだされていないと思います。そこで今回は、愛・地球博の今わかっている情報をお伝えします。と言ってもただお伝えするのは面白くないので、私なりの天邪鬼な視点でご紹介していきます。
長久手会場がメイン会場
愛・地球博のメイン会場は、愛知郡長久手町の長久手会場。かつてここには愛知青少年公園があり、幼少の頃から私は何度も足を運びました。青少年公園はプールやアイススケート場、ゴーカート、サイクリングコース、キャンプ場などアクティブな施設の他に、ビデオ鑑賞室や童話館、そしてかなり前に撤去されてしまいましたが、1970(S45)年大阪万博のパビリオンのひとつロボット館が展示されていました。
そんな愛知青少年公園をわざわざ作り替えたのがこの長久手会場です。
長久手会場は大きく6つに分類できます。「センターゾーン」「企業パビリオンゾーン」「遊びと参加ゾーン」「日本ゾーン」「森林体感ゾーン」「グローバルコモン」です。それぞれを見ていきましょう。
▲工事が始まる前、愛知青少年公園当時の写真。
センターゾーン
グローバルハウス・マンモスラボ
センターゾーンは長久手会場の中心。ここには博覧会協会が運営する、愛・地球博のシンボルパビリオン「グローバルハウス」があります。世界初の超高精細映像、走査線4000 本のスーパーハイビジョンによる地球の自然映像や、10メートル×50メートル、なんと20 05インチのスクリーンでは地球と人間のかかわりを表現。
そして目玉はロシア・サハ共和国で発見された冷凍マンモスです。当初は世界初の全身展示という触れ込みでしたが、いざ発掘してみたら右前足が無い、そして胴体も無いということで、頭部と左前足のみの展示です。全身がそのまま埋まっていると思って、掘ってみたらあれ?というガッカリ感も汲み取ってください。
▲「世界初全身展示!」「世界初全身展示!」マスコミが騒いだあの頃が懐かしい。
愛・地球広場 バイオラング こいの池
▲プール。スケート場を壊さずに改造したのがグローバルハウス。
他にセンターゾーンには、コンサートやテレビ・ラジオの番組収録などが行われる予定の、500インチ2面のスクリーンとステージが完備された「愛・地球広場」や、二酸化炭素を吸収し酸素を供給する「緑化壁・バイオラング」。夜8時になると暗闇の池をウォータースクリーンとして巨大な日本猿が登場する「こいの池」などがあります。
暗闇の池に30分現れる巨大な猿。演出家は「美しく夢のようなシーン」と語っていますので、いろんな演出が施されていることを期待します。池の中から巨大な猿がにゅっと出てくるだけだったら怖い…。
▲グローバルハウス前から見たこいの池。対岸に見えるのは大地の塔。
企業パビリオンゾーンB
トヨタグループ館
企業によるパビリオンは、特にここ名古屋は物作りが盛んな地域ということで、産業と自然のかかわり、未来の展望などを感じ取れ、なおかつ最新技術が体感できるものが数多くあります。この地方を代表する企業といえばトヨタ。
「トヨタグループ館」では、ロボットだけによる演奏会が開かれます。トランペットにホルンにドラム、それぞれ7台のロボットが合奏をします。驚くべきはMCもロボットなのです。あ、この場合はMCよりも合奏するロボットの方が驚くべきことですね。他にも一人乗り未来コンセプトビークル「i-unit」の展示もあります。
自然とのかかわりについては、パビリオンの消費電力は全て風力発電で二酸化炭素の発生をゼロにし、パビリオンの外壁にも古紙再生紙の壁材を使用していて、地球循環型パビリオンを目指しているとのこと。
理想が高いのはいいですが、トヨタの在庫を持たないカンバン方式によって、急な納品で輸送トラックが余計に走ったり、待たされたりして二酸化炭素が増加している問題を考えるとチャラかな、という気がしないでもありません。
▲この北ゲートから入ってすぐ左が、企業パビリオンゾーンB。
日立グループ館 三井・東芝館
パビリオンの建物が割れて谷のようになっていて、そこに実際に水が流れる「日立グループ」館では、世界の希少動物がリアルに映像で再現されます。珍しい動物に触れることよりも、それら絶滅危惧種を見ることで、地球の自然環境破壊について考えるきっかけにすることが大切だと思います。
「三井・東芝館」では世界初の「フューチャーキャスト」システムを体感できます。このシステムは、観客が映画の出演者となって冒険に参加できるもので、遠い未来へと旅立ちます。宇宙に移住した私たちの子孫が、見たことの無い未来の地球への冒険に旅立つというストーリーです。もちろん壮大で大迫力ですが、それだけではなく地球の未来について考えさせられる結末となっているとのことです。
夢みる山
シャチハタ・日本ガイシ・ブラザー工業・中部日本放送・東海テレビ放送・中日新聞という名古屋の企業と、積水ハウスの7社が共同で出展するのが「夢みる山」です。4社共同出展のテーマシアター「めざせ方舟-Open Your Mind」は、カンヌ国際映画祭にノミネートされた「イノセンス」を手がけた押井守氏の総合演出による映像を体感できます。
体感といっても言葉だけではなく、360度の壁、天井、そして床までもがスクリーンとなり、正真正銘の体感です。ブラザーは癒し系会話ロボットを、日本ガイシは実際に水が噴き出す立体映像、シャチハタはスタンプでの記念品作りから「しるしの未来」という映像シアターの展示もあります。
しるしと言っても馬鹿にしてはいけません。しるしとはスタンプや判子という意味だけではなく、最新の認証ツールもシャチハタは手がけているのですから。
▲「夢みる山」はこの山が目印。夜は様々な色に輝きます。
ガスパビリオン炎のマジックシアター
そしてゾーンB最後は日本ガス協会の「ガスパビリオン・炎のマジックシアター」です。炎をテーマにしたマジックショーが展開されるほか、日本の近海に眠っている「メタンハイドレート」という未来のガスが展示されます。これは「燃える氷」として注目されている新エネルギーで、実用されればなんと日本近海だけで約100年日本のガス需要を賄えるというものです。
ガスで雪を作ったり、ガスで空気を冷やしたり、想像を絶するガスの未来を感じとることができます。ガスは今後規制緩和による自由化競争の波にもまれることになるので、結構今回は万博出展に燃えているようです。ガスだけに…。
冷えたところで、続きは次回です。
コメント