- JRは撤退するけど運行は続くのです
- 増便+カード利用でサービス水準アップ!
- え?「実験的」ってどういうこと?
JR東海バスの完全撤退で、地元は困っているのかと思いきや、実は便利になるという不思議。
この9月30日をもって、路線バス事業から全面撤退するJR東海バス。かつての国鉄バス発祥の地である、瀬戸市のJR東海バス路線を3回にわたってシリーズでレポートしています。今回は3回目。
前回は、国鉄岡多線の代替バスとして誕生した、我が国初の省営バス路線の面影が残る、「瀬戸北線」をぶらりと歩いてみました。今回は、JR東海バス廃止後の瀬戸を考えます。
JRは撤退するけど運行は続く
今回廃止となるのは、JR東海バスのどの路線ということではなく、JR東海バスが路線バス事業そのものから撤退するわけで、現在走っている瀬戸市内3路線、春日井市内2路線の全てが失われる…のかと思いきや。
大曽根と瀬戸みずの坂を結んでいる「ゆとりーとライン」については完全廃止となるのですが、それ以外の4路線は名鉄バスが事業を継承することになっているのです。あの、路線バスを移管したり廃止したりするニュースばかりが聞こえてくる名鉄バスが引き継ぐというのですから、驚きです。
サービス水準を向上
名鉄バスに運行が引き継がれても、今年度いっぱいは回数券も利用できるように配慮するそうです。さらに、「広報せとNO.1143」によりますと、引き継ぐだけではなく、瀬戸北線に関しては平日の2本増便、瀬戸循環線については愛知環状鉄道中水野駅への乗り入れで、サービス水準を向上させると同時に、名鉄バスの赤津線も3往復増便になるとのこと。
さらに、名鉄バスの運行になることで、SFパノラマカード、トランパスが利用することができますから、カード購入時のプレミアムの恩恵が受けられると同時に、名鉄電車との90分以内の乗り継ぎ時に割引も受けられます。普通バスカード、昼間割引バスカードもお得です。
ただ…気になるのが…
まあ、カードの割引は他では当たり前のことなので驚かないですけど、事業継承そして増便には驚きを隠せません。どうしちゃったの名鉄バス、という気もしますが、広報には気になる文言もたくさん。
「市が運行経費の一部を負担」
まあ、これは良しとしましょう。もし、この路線がコミュニティバスに継承なんてことになったら、それこそ本数は激減、通勤・通学には使えないなんてことになってしまいますからね。経費負担してでも残すことには理解できます。
それよりも、かなり気になるのはこれ。
「実験的にサービス水準を向上させ、市民のみなさんにより利用してもらえるような取り組みを進めていきます。」
実験的?
実験的ってことは、増便は恒久的に約束されるものではないということですよね。
もっと気になるのは、この継承により、尾張瀬戸と新瀬戸の間では、名鉄瀬戸線と名鉄バスが全く同じ場所を併走するということになるのです。となると、瀬戸北線については、尾張瀬戸発着でもいいんじゃないの?という動きになるのは当然のような気がするのです。
果たして、いつまで名鉄バスがJR東海バスクオリティのまま、運行を続けてくれるのかは、正直未知数ですよね。
JR東海バス跡を濁さず
JR東海バスが掲示している、「路線バス廃止及び新たなバス運行のご案内」にはこうあります。
「長らくのご利用ありがとうございました」
本当に、長らくですよね。我が国の国鉄バスの歴史と同じ年数だけ、瀬戸を走ってきたわけですから。
「引き続き(名鉄バスを)ご利用頂きますようお願い申し上げます」
立つツバメ、跡を濁さず。ですね。
ただ…そのツバメのバスの後に登場する、赤いバスがいつまで運行してくれるかは、瀬戸の人々の使い方にかかっているというわけですね。あくまでも、サービス水準を維持・向上するのは「実験的」なのですから。しかも、最後までこの路線を「発祥の地」として守ってきたJR東海バスと違って、名鉄は他社から譲り受けただけの路線。思い入れも何もないでしょうしね…。
コメント
JRバスの記事、興味深く拝見しました。それぞれにコメントするのが面倒なので、ここにまとめて書きこみます。
>2002(H14)年3月31日をもって、愛知環状鉄道と並行していた、瀬戸市から南の区間を全廃。
>さらに、多治見-品野の間も廃止
この2路線、同時ではありません。瀬戸市~南山学園間は、2~3年前まで運行されていました。ちなみに、私は多治見駅発瀬戸追分行き最終便に乗った10数名のうちの1人です。
>名鉄バスが引き継ぐというのですから、驚きです。
名鉄以外の事業者では、瀬戸で第2のJRバスを作るだけです。トランパス乗継割引が使えないという、瀬戸市内での地域内格差(水野団地・品野)を是正することが瀬戸市の公共交通における課題であり、名鉄移管がマイナスではないということを割引でアピールできるのです。これが一番効果あります。
>尾張瀬戸と新瀬戸の間では、名鉄瀬戸線と名鉄バスが全く同じ場所を併走する
>(中略)瀬戸北線については、尾張瀬戸発着でもいいんじゃないの?という動きになるのは当然
名古屋市交通局ならそうするでしょうが、瀬戸でこれをすると、現状の初乗り運賃二重払いが残るため最悪の選択です。今回の再編で最も注目するのはJRバス路線でなく、名鉄の瀬戸駅前~菱野団地間のバスです。昼間限定で新瀬戸駅まで延長し、瀬戸市内で完結する用事ならバスを使ってもらおうという戦略で、この並走容認というのがポイントだと思います。団地住民の急激な高齢化が問題になっていますが菱野団地も例外ではないはずで、これまで不可能だった陶生病院へ直通できるようになったのは地域の悲願じゃないですか?
新瀬戸~尾張瀬戸間で乗客の取りあいは無いでしょう。運賃・所要時間ともに瀬戸電優位です。仮に幾分バスに流れても、瀬戸電のマイナスはしれてます。
JRバス路線だけでなく、並走区間を存続させるために瀬戸市が一枚噛んだのかと思います。高齢者に尾張瀬戸駅で瀬戸電に乗り換え、新瀬戸駅から陶生病院まで歩けなんて、そんな鬼のようなこと言えません。市民の反発を招くだけです。新瀬戸駅なんて階段だらけじゃないですか。並走区間を残すのが逆に当然じゃないですかね?
>あくまでも、サービス水準を維持・向上するのは「実験的」なのですから。しかも、最後までこの路線を「発祥の地」として
>守ってきたJR東海バスと違って、名鉄は他社から譲り受けただけの路線。思い入れも何もないでしょうしね…。
増便の恒久的な約束は酷な要求だと思います。名鉄は採算性を意識せざるを得ないし、瀬戸市も補助金追加はできないはず。
名鉄や瀬戸市が実験するのは運行主体・補助金を出す行政として当然のことです。名鉄移管路線では、始発・終バスの時刻が変わり便利になってます(増発は、回送の営業化じゃないかと思うのもあります)。利用動向を見て最善の編成を行うのでしょう。
名鉄の瀬戸への思い入れについては、瀬戸電及び地域の歴史を見ればわかるかと思います。先日、文献を漁っていたら、昭和54年頃は品野への名鉄バス路線(しかも2系統)もあったそうです。まったく、思い入れが無いとは思えません。JRバスは撤退できる。名鉄は優良路線を譲渡され、瀬戸市全域で営業ができる。市民も利便が向上する。こんな三方良しの例は珍しいです。JRバスは岡多線が愛環として開業した段階で孤立していたのに、今まで良く持ったなというのが正直な感想です。
>広隆堂さま こんばんは
詳細な情報ありがとうございます。
確かに、瀬戸市はよく頑張ったと思いますし、名鉄バスも随分配慮してくれているとは思いますが、今のままでは結局どこまで頑張りが続くのか…というところでしょう。
菱野団地については、数年前まではJRバスで陶生病院まで行くことができました。それが名鉄バスによって復活されることが「悲願」かどうかは別にして、廃止されてしまった今は、ほとんどの人がタクシーを利用しているというのが現実です。
現状でも、瀬戸市のバス路線は他の都市に比べて恵まれていると思います。それが維持されるかどうかは、やはり、市民がどこまで利用する努力をするかだと思います。