10.中川区 名古屋を歩こう

東山線の果てに故事を見た

記事公開日:2004年12月26日 更新日:

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地下鉄はなぜか東へ東へ・その西端には-高畑駅

 地下鉄東山線、西の終点高畑駅。東山線は名古屋市の地下鉄の中で最も利用者数が多い路線ですが、この高畑駅まで乗ったことがある方は意外と少ないのではないでしょうか。名古屋で初めて地下鉄の運行が始まったのが1957(S32)年のことで、この東山線の名古屋・栄町間2.4キロでした。その後東山線は路線を東へ東へと延ばし、1967(S42)年には星ヶ丘まで延長するのですが、西は全く建設されず名古屋駅が始発駅のままという状態が続きました。そしてその2年後の1969(S44)年、東側は現在も終点である藤が丘(当時は藤ヶ丘)まで延伸されました。藤が丘駅は名古屋市の東端になるため、それ以上延伸できないところまで東は延長されたということになります。それと同時に西側が初めて延伸されました。名古屋・中村公園間の3.5キロです。ルートは名古屋駅から真っ直ぐには伸びず、中村区大門あたりを避けるように通っています。この状態から、西側の延伸が遅れたのは東側を重視しただけではなく、地権の問題もあったのではないかと推測できます。

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▲デザイン博の時に変更された駅名表示。黄色の部分が各路線の色に。
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▲愛・地球博に向けて変更された駅。路線を表す色が無くなりました。
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▲愛・地球博でも変えられることなく、昔のままの姿を残す駅の駅名表示。

 ところで高畑駅です。中村公園・高畑間が開通するのは、それから13年後の1982(S57)年のことです。名古屋市の地下鉄は、かつては列車の色が違うのみで駅の案内看板や標識は統一されたデザインでした。デザインというほどでもなく、駅名表示は白地に黒の文字。そして出口案内は黄色地に黒文字、矢印は赤字に白色というものでした。それが、1989(H元)年の世界デザイン博をきっかけに一新されました。駅名表示は灰色地に、東山線なら黄色という路線の色を駅名表示と駅全体に配し、出口案内などは黒字に白のスタイリッシュなものになりました。そして各駅への所要時間を示した図も凝ったデザインになりました。しかしです。
それらのCIが導入されたのは利用客数が多い駅のみ。今でも鶴舞線はほとんどが旧式表示のままですし、この利用者数が多い東山線についても名古屋駅の次の駅である亀島からは古い表記が残ったままの駅が多く、駅が開設された昭和50年代の空気を感じることが最近までできました。ところが最近は、この東山線がリニモで愛・地球博会場と接続されることになったため、少しずつ看板などが整備されつつあります。それでもタイルなどは昔のままなので、東山線の名古屋駅から東側の駅とは相変わらず雰囲気が違います。

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▲亀島駅には古くからの出口表示や乗車位置表示が残ります。
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▲青いタイルは開業当時のまま、導入されたばかりの電光表示が不釣合い。
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▲亀島駅にも新しい看板が。鶴舞線には全く古いままの駅もあります。

 東山線は、この高畑駅から南へ延伸される計画もありましたが、様々な理由で中止となり、その代替としてあおなみ線が2004(H16)年に開通しました。東山線高畑駅とあおなみ線荒子駅間の距離は750メートル。乗り換えも無理ではない距離です。あおなみ線の開通により、東山線は高畑から延伸されることはなくなりました。また東側は長久手方面へと向かうリニモと接続され、藤が丘から延伸されることもあり得ません。つまり地下鉄東山線はこれが最終形態ということになります。私は名古屋の東に住んでいます。幼い頃から地下鉄東山線には乗っていましたが、名古屋駅から向こうはずっと未知の世界でした。その未知の世界の果て・高畑を歩きます。

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▲高畑駅の5番出口通路。両側のタイルも古く照明も暗く怖い。
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▲古くからの黄色い出口案内も残ります。
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▲駅から外に出ても、懐かしい感じの出口。

駅前に廃車のバスが...-高畑神明社・浄福寺

 高畑駅の出口を出て振り向くと、駅の入口にも古さを感じます。駅名表示の看板は白地に青文字で文字の形が不格好、いかにも昭和50年代という雰囲気です。そして駅の通路のタイルにも時代を感じます。高畑駅から中村公園方面へ真北に歩きます。周辺は飲食店も多く駅前らしい街並みです。右手には中川区役所、中川消防署があり区の中枢でもあります。高畑交差点から2本目、廃車になったバスの手前を右折すると高畑神明社、その先には真新しい三重の塔のある浄福寺があります。かつて浄福寺は高畑神明社の横にあったのですが近年新築移転しています。山門には相田みつをの言葉が書かれていました。

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▲この廃バスの手前を右折します。昔はよくゴロゴロしていましたね。
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▲高畑神明社です。かつてはすぐ横に浄福寺がありました。
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▲浄福寺はすぐ東に新築移転。新しい塔の木の色があざやか。

三味線に舞踊教室-高畑市場・交通局軌道事務所

 周辺は次第に個人商店や住宅が多くなり、小唄三味線教室、新舞踊教室などが集まる不思議な水色の建物が登場します。そこから北へ歩き上高畑に差し掛かると住宅団地市営高畑荘があり、今度は田んぼや工場、物流センターが増えてきます。高畑荘の東側には枝肉市場の中央卸売市場高畑市場があり、周辺には畜産飼料の倉庫なども見受けられます。そして高畑市場の南側には名古屋市交通局の軌道事務所があり、東山線の車両が整備されています。市場の北へと名鉄運輸や西濃運輸の基地、昔ながらの焼きそば店を見ながら歩くと万町に入ります。すると、のどかな田園風景が広がり、工場があるせいか何か燃えているような匂いが漂います。

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▲市営高畑荘から一気に生活感溢れる街並みになります。
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▲名古屋市交通局の軌道事務所。東山線の車両が甲羅干ししています。
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▲焼きそば店が見えてくると、その先には田畑や工場、物流基地が並びます。

田んぼとツインタワー-万町公園

 白山神社の向かいにある万町公園では、親子がキャッチボールをしています。そこから田んぼのあぜ道のような道路を北西へ歩くと、万町神明社があります。この万町の東側は小本であおなみ線小本駅が、西側は八田でJR、近鉄、地下鉄東山線の八田駅があります。八田から名古屋駅までJRなら4分、小本から名古屋駅は5分です。名古屋駅からわずかその時間でこののどかな田園地帯、驚きです。ここから名古屋駅を望むと、田んぼの向こうにツインタワーという構図になります。

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▲この白山社から北側が万町。
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▲のどかな万町公園。名古屋駅からわずか5分とは。
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▲田んぼの脇を歩いていくと、万町神明社があります。

名古屋三弘法・第一番厄除け大師-盛福寺・宝珠院

 八田駅界隈は後ほど歩くとして、高畑駅へと戻り今度は西方向へと歩きます。高畑交差点の一本南側の道を西へと歩きます。盛福寺を越えてると突き当たるので、一本南の道を西へと歩きます。荒子川の出合橋を渡り、西部愛知県税事務所を越えると、名古屋三弘法一番の宝珠院があります。名古屋三弘法とは、四国八十八ヶ所霊場を巡拝した1人のお遍路さんが、1927(S2)年にたまたまこの地に訪れ、弘法大師の三大誓願「厄除け、開運、道びき」が近くの三つのお寺に相応したので「大師の化現利生の霊地ならん」と誓ったことによるものです。第一番の厄除け大師はここ宝珠院、第二番の開運大師は港区多賀良浦町の弁天寺、第三番の道びき大師は港区光陽の善光寺です。二つのお寺には港区編で訪れます。また宝珠院は名古屋二十一大師の第十一番、東海三十六不動尊の第十三番でもあり、なごや七福神の大黒天でもあります。ちなみにお寺は東西に長く、東にも西にも本堂がありますが、東が本堂で西が新しい本堂となっています。新本堂は柵の朱色が鮮やか、かわいいお坊さんのイラストが出迎えてくれます。

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▲荒子川出合橋の手前にある盛福寺。
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▲名古屋三弘法一番の宝珠院。東側にある本堂。
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▲こちらが西側の新本堂。

表彰された区画整理の秘密は地名に!?-雨宮神社

 再び八熊通に戻ると道路の両側に「かいすい」という同じ看板を掲げる店があります。ラーメン屋さんで、昼時ということもあって大変賑わっていました。中央分離帯があるから道の両側にお店があるのは利用しやすいですが、両方維持できるということは人気店だからこそでしょうか。

 そして西に歩き、野田1丁目の交差点を右に曲がると、中島新田方面へ通じる道です。法華あたりではちらほらと田畑を見る程度だったのが、このあたりまでくるとかなり田畑の割合が多くなります。野田1丁目交差点から南に200メートルほど歩いたところにあるのが雨宮神社です。この中郷(ちゅうごう)地区の氏神さまです。境内には区画整理の記念碑があり、1942(S17)年の中郷地区区画整理組合設立からの経緯が書かれています。区画整理事業が完成したのは1978(S53)年。完成と同時に全国土地区画整理組合連合会長から優良組合として表彰されたとのことです。

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▲道路の両側にまたがるラーメン店かいすい。
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▲区画整理が表彰された記念碑が建つ、雨宮神社。

 土地の区画整理といいますと、地権でもめたりすることが多いですけれども、優良組合として表彰されたのはスムーズに調整が進んだからかもしれませんね。それは中郷という地名が良かったのかもしれません。「郷に入らば、郷に従え」ですから。


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