★さまざまな電波・メディアの情報が行き交うなかで…なぜラジオ
★ラジオとの出逢いの原点は意外なところに?
自治体の首長がラジオやテレビに登場して行政について語る…という番組は各地で見受けられますが、収録場所が庁舎であったり、あくまでも首長はゲストのような形で登場することが多いものです。
ところが、岐阜県の中濃地域を放送エリアとする地域ラジオ局「FMらら」では、市長が公務の合間を縫って毎回スタジオに登場し、メインパーソナリティとして進行する番組が存在します。
なぜラジオなのか。
その背景には、地域ラジオと呼ばれるコミュニティFM局の存在意義と期待、中学生の頃からラジオに魅せられた、ラジオの特性を知る市長だからこその思いがありました。
駅前スタジオに市長が登場
JRと長良川鉄道が乗り入れるターミナル、美濃太田駅にある「FMらら・みのかもHOTスタジオ」に姿を現したのは、美濃加茂市の藤井浩人市長。2013(H25)年に全国最年少市長として就任。当時は28歳でした。
藤井市長が担当しているのは、FMららで毎月第1水曜お昼12時10分に放送されている「藤井市長の未来への挑戦」。この日は月に一度の収録、スタジオに入るとすぐに打ち合わせです。
この回は「市内のお花見スポット」と「美濃加茂市若者委員会が東京で発足」についての話題です。打ち合わせは淡々と…といった感じだったのですが、収録では意外な展開が。
なぜ市長がラジオパーソナリティなのか
「藤井市長の未来への挑戦」がスタートしたのは2015(H27)年10月。それまでにも、FMららでは美濃加茂市の行政番組が放送されていたのですが、市長の番組が始まったきっかけとは。収録に立ち会われている美濃加茂市経営企画部秘書広報課の渡邉さんにお伺いしました。
「FMららは、ラジオ放送だけでなく、スマートフォン向けアプリで地元情報を通知することができ、地域の情報を知る速報性に長けているというなかで、やはり、市のトップの声で直接伝えたい、伝えて欲しいという声に押されたというところがありますね。」
FMららは、FM電波によるラジオ放送だけでなく、2015(H27)年4月にアプリによる放送システムを導入しており、アプリでは全国・全世界で放送を聞くことができるというだけでなく、さらに、プッシュ通知で地域の災害・防犯情報をリアルタイムに届けられるという機能を有しています。
スマホへの通知というデジタルな要素の一方で、やはりラジオとして、市長の「声」で市民と繋がりたいという、アナログな要素の活用がきっかけだったわけです。さらに、市長には別の思いがありました。
フリートークあってこそのラジオ
自治体の首長がラジオやテレビでお話をするという場合、秘書課などが用意した原稿をもとに、そのまま進行する番組が多いのですが、いざ収録が始まってみると驚き。
番組の内容自体は、美濃加茂市の広報として、「市内のお花見スポット」「美濃加茂市若者委員会」について、聞いている方に役に立つ情報という本筋はしっかりと押さえられているのですが…。
聞き手のシキナユキコさんと、淡々に進んでいたかのように見えた打ち合わせ。しかし、藤井市長はところどころ、打ち合わせと全く違う合いの手を入れます。シキナさんもたじたじ。そのことについてシキナさんに伺うと…。
「いつもそうなんです。打ち合わせと全く違うことを仰られることがあるんですよ。予定調和はないですね。しかも、うまく返さないとその『返し』にダメ出しされることもあるんですよ(笑)。緊張感あります。」
藤井市長ははっきりと言います。
「だって、面白くないと聞いてもらえないでしょ?」
藤井市長とラジオ
収録後、藤井市長にラジオについてお話をお伺いしました。
Q.なぜラジオ番組なのでしょうか
テレビやインターネットもあるなかで、地域としての情報発信はこれから、いま以上に重要になって行くと思います。特にラジオは災害時にも活躍してもらわなければならない。地域の情報発信手段として大事にしたいという思いから始まりました。
Q.地域の情報発信としてのコミュニティFMの活用がきっかけということでしょうか
ラジオもテレビもそうですが、東京からの全国放送や、名古屋からの東海エリアの放送では、この地域の本当の情報、身近な情報が、なかなか手に入れられないという側面があると思います。
なぜ、自分たちにそんなに関係のない東京のニュースに長時間向き合わされて、僕たちの生活が惑わされなければいけないのか、と感じることもありますね。
そういった点で、コミュニティFMはエリアの中心として、これから重要な役割を担ってもらいたい、頑張ってもらいたいので、僕もこのラジオ局の場で発信させていただいて、もっとコミュニティFMを多くの人に知って欲しい、聞いて欲しいという思いがあります。
Q.普段からラジオは聞かれていますか?
よく聞いていますよ。車での移動中は絶対ラジオですし。あ、もちろんFMららを。ただ、電波が届かないところではZIP-FMを聞いたりしますね。
Q.昔からラジオは聞かれていたのですか?
学生の頃はもう「オールナイトニッポン」ですよ。ナインティナインのおふたりや、福山雅治さん、あとはやっぱり、アイドルの番組ですね。
Q.ラジオとの出逢いは何がきっかけだったのですか?
SPEEDです。中学生の頃ですね。大好きなSPEEDのCDを買ったら、ラジオ番組の案内が入っていたんですよ。それでダイヤルを合わせて聞いたら、テレビでは聞けないような深い話を長く聞ける、ラジオって面白いなって思ったのが最初でした。
それで、一度ラジオを聞くようになると、別の人の番組や別の局も聞くようになって、「SMAPってラジオだとそんな話もするんだ」だとか、バンドのラジオもテレビで見かけるのとは印象が全然違うんですね。それぞれが、ラジオだと自分の言葉でじっくりと話していて…。
だから、自分もラジオで、自分の言葉で話したいという思いがあります。
Q.番組は今後どうしていきたいですか
もっと相互関係を築ける、双方向のラジオにしたいですね。もう一歩踏み込んだものにしたい。一方的に発信するだけでなくて、市民の方をお呼びしてフリーでお話するとか、参加型にしていきたい、そして何より「面白い」ものにしたい。
Q.「面白い」にこだわるのはなぜでしょうか
「ラジオを聞いてみたい」と思ってもらうには、興味の部分も含めてですが「面白い」が無いとダメだと思うんです。「地域のことをやっていますよ」「地元から発信していますよ」だけでは、東京や名古屋のテレビやラジオを見聞きしている人を振り向かせることはできないのでは。
そういう意味でも、コミュニティFMにはもっと存在感を大きくしてもらわないといけない。東京のテレビや名古屋のラジオと比べても「地元のラジオも面白いじゃん」と思わせることで、普段から一人でも多くの人に「もっと地元のラジオを聞いてみよう」と、振り向いてもらわないと、いざ災害時にも情報が伝わらない。
地元のラジオがもっと魅力的なものになるように、行政も努力していかないといけないと思っています。
ラジオの面白さを知っている市長だからこそ
地域の情報を発信するのは当たり前、災害時に役に立つには普段から聞いてもらえていないといけない、聞いてもらうには「面白い」ことが重要。
まさに、中学生の頃からずっとラジオを聞き続けている藤井市長だからこその、地域ラジオへの思いが、わざわざスタジオにやってきて、自分の言葉でラジオ番組をメインパーソナリティとして伝える…という形になっているわけですね。
しかし、一般的に自治体からコミュニティFMに求められる「地元の情報を発信しているか」「災害時にどう役に立つか」は当然のものとして、加えて、ラジオを知っている市長だからこそ求める「面白さ」。しかも、東京や名古屋の放送に太刀打ちできる「面白さ」。
美濃加茂市長からFMららに求められているハードルは…高いですね。
番組のご案内
「藤井市長の未来への挑戦【提供:美濃加茂市】」
FMらら 毎月第1水曜 お昼12:10~
岐阜中濃地区ではFMラジオ 76.8MHz
スマートフォン・タブレット・パソコンではアプリを通して、全国・海外からも聞くことができます。
https://fmplapla.com/fm-rara768/
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